『あなたの髪に、似合う花を。』
〜第15話〜
文字通り、針鼠といった形相である。
普段のメイド服に、あちこちにポケットやら武器をくくりつけられるフックが付いたベルトを、肩を通して十文字に、ふたつ身につけている。
そしてそのベルトには、ありとあらゆる長さの刃物と、鈍器、果ては飛び道具らしき物がマウントされていた。
そして左手には、鞘に収まった例の刀――先程までesの練習につき合っていたときのレプリカでなく、冗談抜きに切れる本物――をいつでも抜ける体勢で持っている。
「ジェミナ=エイトよ……」
そんな権藤を座ったまま眺めて、キナーは一言だけ言った。
「話せばわかる」
「問答無用!」
ぐんと一気に踏み込み、次の瞬間には白刃が疾走した。
冗談抜きで、頸動脈を狙った抜き打ちである。
そして、その刃の軌道上に、キナーは居なかった。
立ち上がるモーションを利用して、そのまま直上に――権藤の頭上を飛び越えるほどの、非常識な高さで――跳躍したのである。
一度跳躍すると、着地するまでのそう大きな行動は取れない。それを見越して左右の袖からそれぞれ一本ずつフォールディング(投擲用)ナイフを放つ権藤。
しかしそれはキナーに突き刺さることなく彼の掌に収まった。ナイフの刃を、指で挟み込んだのである。
「腕を上げたではないか」
すとんと着地して――同時に、掌のナイフを権藤の胸元に投げ返しながら――キナーは賞賛の声を挙げた。
「貴方こそ――」
1メートルほどバックステップで後退し――同時に、刀で弾いて勢いを落としたところで、投げ返されたナイフを袖にしまい込みながら――、権藤が答える。
「引退したはずなのに、ちっとも衰えていませんね」
「単純な道理だよ」
いつの間にか、自らの長大なトランクの脇に立ち、キナーは笑いながら言う。
「それ以上、強くならなければ己より強い敵には叶うまい」
そして、トランクを軽く蹴った。
それだけで、トランクの蓋が開き、巨大な剣が迫り出てくる。
十字の柄、それぞれの先端にはめ込まれたサファイア。
キナーの愛剣、『サザンクロス』に相違ない。
南十字卿は、自らの二つ名の元となったその両刃の大剣を軽々と手に取ると、おもむろに鞘から抜いた。権藤の冷たい光を放つ刀身とは別の、力強さを湛えた巨大な両刃(もろは)が顕わになる。
「警告しよう」
大の大人だってふたりがかりでないと扱えそうにないその剣を、騎士特有の儀仗礼で構え、騎士の貌でキナーは宣告した。
「ここから先、歯止めは効かないぞ」
「望むところです」
刀を鞘に収め、再び抜刀術の姿勢を取りながら、権藤が答える。
「貴方に教わった剣技――『渚』で行きます」
「面白い!」
儀仗礼を解き、大きく頭上で『サザンクロス』を振り回して、キナーが叫んだ。
「なら私は奥義『万葉』で迎え撃とう!」
辺りが張りつめ、空気が凍る。
「ねえ」
その空気を壊したのは、相も変わらず頬杖を付いたままのesだった。
「なんで、いちいち技の名前言うのよ?」
いちいちもっともなesの疑問であったが、ふたりは黙殺した。
〜続く〜
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あとがき
今の状態だと、戦闘シーンはこれで精一杯……。。
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