『あなたの髪に、似合う花を。』
〜第6話〜
esがシルフィーとまともに接するようになって、気付いたことがひとつある。
それは、esには全くなくて、権藤にはそれなりにあって、シルフィーにはかなりある代物である。
いままで、esはそれに対して特に気にすることなど全くなかったのであるが、こうも目に付くようになっては、気になって仕方がない。いまも、シルフィーが机を挟んだ向こう側からカップにコーヒー――この辺では珍しいことに、esはコーヒー派であった――を注いでいるものだから、椅子に座っているesの視界の大半を占めている。
「ねえ、シルフィー」
「はい? 何でしょう?」
コーヒーカップを注意深く見守りながら、シルフィーが答える。
「貴方、今年幾つだっけ?」
そんなesの問いが意外だったのか、シルフィーは面を上げて、
「17です。再来月に18になりますよ」
と言って微笑んだ。
「そう」
やはり年功序列のなせる技ではないようである。権藤は、万年二十歳なのに……だから。
「ねえ、貴方のそれ」
「? えっと、何でしょうか?」
「――なんでもないわ」
「はあ……」
ソーサーの上に乗ったコーヒーカップを差し出しながら、腑に落ちないような感じで相づちをうつシルフィー。うーんと、上を向いて何か思い当たることはないかと考え込む。
それが、偶然とはいえesが気にしているものを強調することになった。
「シルフィー」
esが急に、それそのものが気になった。いずれは自分も手にするはずなのだが、これほどのものを得られる可能性は低いような気がする。
「なんですか? キャロル様」
「ちょっとこっちまで来て」
esの手招きに応じて、素直に進み出るシルフィー。
そして、自分の射程距離に彼女が入った時点で、esはそれを思い切り掴んでいた。
直後、屋敷中に響き渡る悲鳴。
無論、その時esは、自分のしたことが引き金になっているとはこれっぽっちも思ってい
なかったのである。
〜続く〜
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あとがき
もお、ほとんど答え言っているようなもんですよね?
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