WindowsCE――普及への切り札
1999.03.09

 先日WindowsCE2.11 H/PC Pro3.0(この3.0っていったい何なんでしょうね?)が発表され、多くのPCメーカーが新マシンを発表しました。このOSの以前のヴァージョンと比べて、新しい/機能強化の点は、以下の通りです。
・VGA(640*480)及びSVGA(800*600)の画面表示が可能。(以前は640*240まで)
・65000色の表示が可能。(従来は256色。ただしブラウザは今回も256色とのこと)
・USBをサポート。(未確認ですが、マウス、キーボード等は繋いだだけですぐに使えるとか)
・動作するCPUに日立のSH-4、インテルのStrong ARM等を追加。
・ポインティングに、従来のタッチパネルに加えて、タッチパッド、スティック等のデバイスが使用可能。
・バンドルソフトの追加/強化(ポケットアクセス等/ポケットオフィスシリーズにてオフィス97で作った文書等を直接読み出し可能に>従来は変換が必要)
・インターネットブラウザの強化。(JAVAスプリクトに対応/VBスプリクトは自前のもののはずなのに何故か未対応)
 主に使われる筐体は、従来のハンドヘルドPCから、A5、B5サイズまでで、外見はミニノート/サブノートと変わらなくなります。単体ではその能力を出せませんが、母艦となる(データリンクが出来る)PCさえあれば、その性能を最大限に生かせるでしょう。

 さて、ここから本題に入ります。私が以上の点で注目したのは、
・VGA(640*480)及びSVGA(800*600)の画面表示が可能。
・USBをサポート。
・バンドルソフトの追加/強化。
 の三点です。
 ここまで揃うと、外見は普通のWindows98/95と変わりありません。操作感覚もマウス等が使えるようになったので全く同じです。そして、ソフト面の強化によりファイルの互換性も問題ないレベルになりました。特にオフィス97シリーズのドキュメントがやや制約があるものの、直接読み出しできるようになったことは特筆すべきです。さらにはUSBの採用によって、周辺機器、プリンタ、メディアドライブ(ZIP、MO、FD等々)、マウス、キーボ−ド等が使えるようになれば完璧です。
 何が書きたいかというと、ここまでできたOSを単体利用してはどうかということです。実を言えばWindowsCEは既に単体での使用に成功していますが、その実例がPC関連ではなく、ゲームマシンであるセガのドリームキャストだけなのです。後は米国にクラリオンのAUTO-PC(車載PC)がありますが日本ではまだ発売されていませんし、そのコンセプトは主に車で移動するという米国の国情から来ていますので日本での発売はまず無いでしょう。話を元に戻すと、このOSをPC用に使わないかということです。
 WindowsCEの長所は、
・OSの基本部分がROMであること(極めて堅牢)。
・HDではなくRAMを主記憶に使うので(HD搭載も可能です)起動・終了が非常にスムーズ(数秒)であること(95/98の再インストールに相当するフルリセットでも30分もかかりません)。
・動作が軽い(CPUによりますが、100Mhz程度で十分に動きます)
・移植が簡単(CPU等のハードウェアからアプリ等のソフトウェア関係まで)
・Windows95/98/NTで制作したデータを持ち歩ける(一部制限あり)
 と、これだけ挙げることが出来ます。これを聞くとCEは98よりすぐれているOSに感じてしまうかもしれません。実際にはCEは、
・Win98シリーズのような複雑な処理は出来ない。
・同じく扱えるデータに限りがある。
・大容量のデータ、アプリは載せられない(動作の軽い裏返し)
 という点もあり、完全に98のように使うことは出来ないでしょう。しかし、オフィスソフトしか使わなくて、なおかつ単純な作業(ワープロで簡単な文章を作る等)ならば、このOSで十分だと思うのです。そもそも、現行のオフィスアプリケーションの全機能を全て使って作るドキュメントなど聞いたことがありませんし、見たことがありません。またその機能を全て覚えている人はいても、それを全て常に使う人は皆無でしょう。ならば、その難しい作業をする場合はWin98シリーズを使って普段はCEを使うといった形にすればいいし、全く使わないのであれば、全て作業をCEで行えばいいわけです。
 また、HDにインストールして使うという方法もあります。単独のOSとしてパッケージ製品として売れば、かなりの売り上げが見込めるのではないでしょうか?前述の利点から見て、多少古いデスクトップ/ノートマシンでも十分に動作しますし、ソフトさえ揃えばかなり使えるOSとして評価されるでしょう。(現行のCEでも、既に高い評価を得ています)容量はそんなに喰いません。デスクトップ/ノート用にチューンしてゲーム用にダイレクトXを組み込んだとしても100MBを越えることはないでしょう。(ゲームに特化した前述のドリームキャストだと1MB切っています。このようにモジュールの付け足し、切り離しが出来るところはLinuxみたいですね)

 私の考える独立したCEは以下のような感じです。
■デスクトップモデル
 ■タイプA:プリインストール/専用タイプ
  ・CPU:RISC100〜200Mhz
  ・OS格納部分:ROM
  ・主記憶:RAMかリムーバブルメディア(いささか低速ながらMO等)。RAMならSDRAMの64〜128MB
  ・FDD、CD−ROMドライブ内蔵
  ・USB×2〜4
  ・モデム
  ・TYPEUPCカードX2(TYPEVX1)
  ・ディスプレイは外付けかiMacのように一体型。デザインに凝れば勝てるか?(笑)
  ・マウス、キーボードは言うまでもなくUSB接続
 ■タイプB:パッケージ型(PC等にインストールするソフト型)
  ・形態はCD−ROM
  ・AGP、サウンドカード、ビデオカード、PCIその他のドライバを加え、PC上での動作が出来るようにする
  ・何ならMacでも動かせるようにするか?(<無理)
 
■ノートモデル
 ・CPU、主記憶はデスクトップと一緒
 ・USBX2
 ・モデム
 ・TYPEUPCカードX1〜2(X2の場合はTYPEVX1にもなる)
 ・外付けFD、CD−ROM(場合によってはセレクタブルベイ/オールインワン)
 ・重量1.5〜2.0kg程度
 ・SVGA/XGATFTディスプレイパネル。サイズは10.4〜13.3インチ位か
 ・トラックポイント等のポインティングデバイス(タッチパネルだと液晶が見にくいから<私見)
 ・リチウムイオンバッテリー
 ・動作時間:8時間以上(ノーマルで!)

 こんな感じでしょうか?ポイントは小型化/低価格です。新型のサブノートサイズCE機が定価が約15万円、実売が13万円程度であり、非常に魅力的なのを考えると、今提示した機体も定価20万以下に押さえるのが当然でしょう。デザインに関してはかなりの自由度を確保できるはずです。元々統一されたアーキテクチャーがないので好きなようにデザインできるからです。デスクトップ型なら今あるスリムケースよりさらに小型化できるでしょう。複雑な機器の増設等は98/NTマシンのPCでやればよいのですから。

 ビジネス分野では、CEをnetPCのように使うためのWindows based terminal という構想があります。WindowsNTserverから管制され、ユーザーはサーバーからアプリを利用する形でクライアントのCEを使うというものです。これもある意味で独立したCEの形かもしれませんが、今回私が提示したのはあくまでコンシュマー向けへの形です。高機能/複雑なOSもいいかもしれませんが、簡易で使いやすいOSこそ普及するOSであると思います。マイクロソフト社が今後どのような形でCEを引っ張っていくのかわかりませんが、こんな形への進化もいいのではないでしょうか。

Ogurin

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