Ogurin式カメラ基礎講座

・主にマニュアル一眼もしくはレンジファインダー系を主眼においています。
・コンパクトカメラでは応用が利かないかもしれません(一部の高級機なら大丈夫かと……)。
・ご意見ご質問は遠慮無くogurin@cds.ne.jpもしくはBBSへ。

第一回:カメラの撮り方
 まず手始めにカメラの撮り方です。これはどの種類のカメラでも変わりません。
『軽く脇を締め、両手で強く握らないように適度な強さでカメラを持ち、身体を揺らさない』
 いや、こう書くと簡単なように見えますが、最初の頃は結構難しいものです。でも、すぐに慣れますからリラックスしていきましょう。
 次回はカメラの規格の種類をご紹介します。
第二回:カメラの種類(その一)
 次にカメラの種類を紹介しましょう。画面(フィルム面。大きいほど画質はよい)がでかい順からです。

・大判カメラ
 主に集合写真や航空写真(空から地上を撮る。不動産屋なんかによくある)に使われます。まず普段お目にかかることはありませんし、個人で使う人は滅多にいないでしょう。フィルムは一枚一枚カートリッジで入れ替え入れ替え撮ります。カメラ屋さんで証明写真を撮るとき等に使われるカメラはこれの改良型です。大きくて重たいのですが、機構が割と簡単で、木製のものとかもあります。

・中判カメラ
 さらに細かく画面が大きい順に6X7(67),6X6(66),6X4.5(645)という規格に分かれます。最近の集合写真には大判よりこちらの方が使われているようです。最近多機能化により人気が出ていますが、(フィルムそのものが)後述の35ミリより扱いにくく、高価なことは確かです。

・35ミリ判カメラ
 私達がカメラと言われてすぐ思いつくのがこれでしょう。オスカー・バルナックという人が、映画に使う18ミリフィルムを倍の広さで使うことを考えつき、ライカというカメラに載せたことから始まりました(ライカについてはそのうちゆっくりご説明します)。小型軽量でカートリッジ(パトローネと言います)に最初から入っているので(中判、大判は撮影者が自分でパトローネに込めます)携帯に便利です。広く普及して、プロ/アマ問わず多くの人に利用されています。事実上、カメラの標準的な規格と言えるでしょう。

・APS判
 最近になって日本のメーカー数社が造り上げたフィルムの新規格です。35ミリ判に比べ80%程の大きさで、画面の大きさを(カメラによりますが)三種類に変えることが可能です。また、磁気面(プリベイトカード等に使われているアレ)を持ち、撮影データを保存し、現像時に有力な情報として働きます。現状としてはコンパクトカメラを中心に広がっていますが、35ミリの後継とか、そういうことにはならずに、住み分けていくことになるようです。

・デジタルカメラ
 カメラの分野でもっともホットなのが、このデジタルカメラです。フィルムを使わず、撮影した画像を直接デジタル情報として保存します。そのため、パソコンなどに転送してしまえば、画像を直接見ることが出来ますし、カラープリンタで印刷することもできます。現在、色々なところで普及していますが、フィルムを使う従来のカメラ(フィルムに使っていた素材から銀塩カメラと総称します)に取って代わるのにはまだまだ時間がかかるでしょう。その事についてはいずれお話しするつもりです。

・ミノックス判
 おそらくもっとも小さいフィルム面を持つカメラで画面のサイズは何と8X11ミリ!当然カメラ自体の大きさも小さく、スパイカメラとして使われることで有名です。最近愛用者が増えて、人気が出てきているようです(よね?)。

 このほかにも消えていった規格や、マイナーな規格などがあるのですが、今回は省略しました。次回は35ミリに絞って、カメラの機構の種類をご紹介したいと思います。
第三回:カメラの種類(その二)
 今回はカメラの形としての種類を35ミリ判からご紹介しようと思います。

・一眼レフカメラ
 一昔前は、カメラと聞いて多くの人が想像するのはこの形でした。実際に写る画像をミラーやプリズムを利用して、ファインダーから直接見ることの出来るようになっています。写真と撮影する瞬間にミラーが上がり、フィルムにあたって撮影するというわけです。そのため、ピントの具合や被写界深度(いずれご紹介します)が簡単に分かり、非常に便利です。初心者向けの入門機から、プロ用の高機能、多機能なものまで揃っており、システムとして一番機材が豊富と言えます。
 ちなみに一眼レフという名前の意味は、レンズが一つ(撮影用とピント合わせすなわち、測距用と分かれていないということ)の反射型(Re−Flex)から来ています。

・レンジファインダーカメラ
 二昔前は、カメラと聞いて多くの人が想像するのはこの形でした。距離計(測量士さんが使うのと原理は変わりません。)を使用して撮影距離、すなわちピントを図る方式です。一眼レフとは違い、見たままの画像と同じ訳ではなく、画像面とファインダー面は独立しています。大抵はファインダーをみて距離を合わせるので、レンジファインダーと呼ばれるようになりました。特徴はレンズの明るさとファインダーに関係が無いため、暗いレンズでも被写体を明瞭に見ることが出来ることです。
 今では、汎用性の高い一眼レフに標準規格の座を譲りましたが、最近復活の兆しが見えています。この話は後々ゆっくりと(笑)。

・ビューファインダーカメラ
 三昔前は……もういいですね(笑)。一眼レフはおろか距離計もなかった頃は、撮影者は目測でピントを測り撮影していたのでした。今でも小型のサブカメラなどではこの形式がありますが、お目にかかることは滅多にないでしょう。いうまでもなく使いこなしは難しいのですが、被写界深度の深い広角系のレンズならパンフォーカスを利用して撮れます。なお、まるで宇宙世紀の人のようにピントをぴたりと合わせるすごい人もいます。

・コンパクトカメラ
 現代は、カメラと聞いて多くの人が想像するのはこの形のようです。ピント合わせ、シャッタースピード、絞りなど撮影に必要な動作を全て機械のオートで行い、撮影者はシャッターボタンを押すだけで写真が撮れるようになっています。名前の通り、ボディの大きさがビューファインダーカメラ並に小さいことが特徴ですが、その分レンズが暗く、交換することもできません(レンズの話は後でご説明します)。手軽なことは確かですが、撮影者の意図をうまく反映できないカメラともいえます。もっとも、最近はマニュアル操作もできるコンパクトカメラが出てきているようです。

・レンズ付きフィルム
 ちょっと前まで使い捨てカメラの名称で知られていたインスタントカメラのことです。実際にはレンズからボディまでしっかりとリサイクルされています。機能を出来る限り簡素化することによって標準の画質ぐらいまでを確保しています。女子高生なる方々には、大人気だそうです(笑)。これについては面白い話があるので後々をお楽しみに。
 
 このほかにも色々な規格(上記のものを組み合わせたりしたものとか)があるのですが、今回は省略しました。次回はレンズについてご紹介します。

第四回:レンズの種類(その一)
 今回は、レンズの種類を35ミリ判に絞ってお話しします。

・レンズの大系
 まずレンズは大きく分けて標準、広角、望遠の三つに分かれます。そこからさらに細かくして魚眼、超広角、準標準、超望遠などが追加されていきます。これらの区分けは標準を焦点距離(虫眼鏡で光を一点に集めた距離だと思って下さい)50ミリとして、それ以下の数字を広角、それ以上を望遠としています。では、これより各レンズの説明に入ります。

・標準レンズ(50ミリ)
 画面に映りこむ範囲が(これを画角といいます)人の目とほぼ同じ範囲なので、標準とされたレンズです。標準という名は伊達ではなく、人物撮影から、風景撮影、スナップ撮影など使い方次第で何でも撮れます。しかしその反面、どっちつかずの印象もないわけではありません。要は使いこなせるかどうかということです。基本的に被写体に寄って望遠風、離れて広角風と覚えていればある程度コツがつかめると思います。また、大抵が大口径のため、撮影時間を選ばないところも大きなポイントです。ちなみに、私が愛用しているレンズです。

・準標準レンズ(40〜60ミリ)
 標準レンズは人の視界ではないという仮定の下(実際は個人差があるそうで、私の場合確かに50ミリだと狭く感じます)、50ミリよりやや広角、望遠にふった画角のレンズ達です。性質は50ミリと大差ありませんが、40ミリだとレンズそのものの大きさがコンパクトに、60ミリだとにレンズを明るくしやすいそうです。(明るさについては後述します)

・広角レンズ(28〜35ミリ)
 標準に比べ画角、すなわち写る範囲が広くなり、遠近感、すなわち遠くのものと近くのものの距離感が強くなるレンズです。人間の目より広く写し込めるので、風景撮影などに向いています。また、遠近感が強いので奥行きのある、立体感の強い写真が撮れます。また、レンズの性質上広角になればなるほどピントの合う範囲(これを被写界深度といいます)が深くなり、とっさに撮るスナップ撮影にも向いているといえます。

・超広角レンズ(28ミリ未満)
 広角レンズよりさらに画角が広く、被写界深度も深いので、広大な景色を撮るとその威力がよく分かります。しかしその反面、画像が周辺で歪み始めます。というのも、地球儀を平面に出来ないのと同じ原理で、写真としてみる場合、大きな画角で撮るとどうしても歪んでしますのです。しかし、その歪みを逆に利用する手もあります。

・魚眼レンズ(14〜16ミリ程度)
 完璧に画像が歪んでしまいます。ある意味完璧な広角なのですが、魚の目のように180度写るので魚眼レンズと呼ばれています。これはもはや風景云々ではなく、そのゆがみを利用した写真を撮った方がいいでしょう。この魚眼レンズには二種類あって、上下左右180度写すため写真がまん丸になっているものと、対角線が180度でちゃんとした四角い写真になるものがあります。

・望遠レンズ(75ミリ〜300ミリ)
 名前の通り見た目よりも遠くのものを写すことの出来るレンズです。広角とは反対に、画角は狭く、遠近感は弱くなります。
 このサイズだと人物撮影(ポートレートともいいます)に向いており、まわりに余計なものが写りこまないため、結構扱いやすいレンズといえます。また、遠近感が弱いため、逆に密集感を出すときには便利だといえます。

・超望遠レンズ(300ミリ以上)
 もうほとんど望遠鏡として使えるレンズで、画角が思い切り狭く、被写界界深度がないに等しいため、ピント合わせとブレ防止をやや慎重に行う必要があります。バードウォッチングや、遠くのものを写すときには欠かせないでしょう。ただし、このサイズになるとレンズそのものが大きいため、持ち運びには苦労します。

 このほかに特殊な用途のレンズがあるのですが、それはいずれ。次回はズームレンズについてご紹介します。

第五回:レンズの種類(その二)
 前回書き忘れたことなのですが、ひとつの焦点だけを持つ、つまり普通のレンズは、単焦点レンズと呼びます。これに対して画角を調整することにより、複数の画角を任意に使えるレンズを広角から望遠へと画角が変化するためズームレンズと呼びます。

・標準ズームレンズ(24〜50〜120ミリ位)
 50ミリを中間に置いたズームレンズです。いまや、カメラを買うと一番最初に付いてくるのはこのレンズと、相場が決まっているようです。確かに一番使いやすいレンズだと思いますが、初心者向けが多く、その分造りも甘い物があるので、買うときにはよく触って確かめて下さい。

・広角ズーム(15〜35ミリ、50ミリ)
 標準を最大望遠側にふったズームレンズを広角ズームレンズと呼びます。風景撮影には単焦点の広角レンズ群より使いやすいでしょう。主に旅行などに持っていくと重宝するはずです。

・望遠ズーム(50ミリ、70ミリ〜300ミリ、400ミリ)
 標準を最大広角側にふったズームレンズを望遠ズームレンズと呼びます。撮影会など、被写体との距離が制限されているときになどに有効です(いきなりこういう例えになるとは……)。また、遠くの物をズームしながら撮るというドキュメント風の撮影も可能です。とにかく、このクラスになるとレンズ自体が長大、重量になりますのでよく考えて運用しましょう。

・高倍率ズーム(24ミリ、28ミリ〜200ミリ、300ミリ)
 説明前にひとつ注意点を。よく何倍ズームとありますが、この倍数の基準は決まってません。要するに広角側の何倍という意味なのです。
 話を元に戻しましょう。高倍率ズームとは、広角、標準、望遠ズームを一本で済まそうという条件から生まれたズームレンズです。すなわち、広角側から望遠側まで標準ズームより幅を広げたレンズと言えます。文字通りあらゆる状況に対応できるレンズで、そのためか記者クラブなどから賞を貰ったレンズもあります。ただし、限界まで倍率にこだわったためやや暗く、特に望遠側では通常の望遠ズームより二段ばかり暗いので、ピント合わせに苦労することになります。それでも、レンズそのものはコンパクトなので、何か他のレンズと組み合わせれば、結構便利に使えると思います。

 大体これくらいでしょう。こうして書くと結構便利に見え、実際に便利なことは便利なのですが、単焦点に比べて、
・同じ画角の場合、暗くなる。
・同じ画角の場合、最短距離が遠くなる(単焦点より近づけない)。
・ボディが大きくなる。
 といった欠点もあります。しかし、どれも克服しようと思えば簡単に出来るので、よく考えて使ってみて下さい。

次回は何度も出てきたレンズの明るさについてご紹介します。

第六回:レンズの明るさについて
 よくカメラのカタログやチラシで「大口径レンズ」というものを目にしたことがある方もいらっしゃると思います。しかし実際に大口径とはどういう意味かというと、カメラを初めて間もない人は首を傾げてしまうかもしれません。よく躓いてしまう人がいるようですので(最初は私も躓きました)書いておきますが、この大口径というのは別に焦点距離ではありません。確かに500ミリとか1000ミリといわれると、「大口径」のような気がしますが、実際には50ミリの方が大口径だったりするのです。では何が大口径を表すのかというと……そうですね、そこら辺にあるカメラのチラシか、レンズのカタログでも見てみて下さい。○○ミリF○.○となっていると思います(ズームなら○○〜■■ミリF○.○〜■.■)。
 このF〜というのがレンズの口径を表しているのです。F値もしくは口径比と呼び、その数字の意味は簡単に言うと『焦点距離に対するレンズの口径比』で、50ミリF2ならばその口径は二分の一の25ミリという事になります。つまり、これが1に近ければ近いほど、レンズは大口径だというわけです。
 さて、ようやく本題に入れる訳ですが、レンズは光を集め、フィルム面で丁度見た目に写ったように光を集めます。その光を集める際、レンズは大きければ大きいほど、簡単に光を集めることが出来ます。理科の実験なんかに使うロートを想像して下さい。ロートが大きければ大きいほど、ロートそのものに液体をたくさん注げるでしょう?光とレンズの関係も丁度そのような関係なのです。つまり、大口径のレンズほど、光を集めやすい。これを『明るい』というのです。簡単に書けば、

大口径=明るい

 という形式が成り立つのです。これで、今までの講座で明るい、暗いといった意味が理解できるようになったと思います。次回はその明るい、暗いがどういう意味をもたらすかという、露出の話をご紹介します。

第七回:露出について
 お待たせいたしました。再開と行きましょう。話はちょっと長くなります。
 今回は写真を撮る際に最も必要な要素、露出の話です。この露出が上手くいかないと、綺麗な写真が撮れません。
 露出とは、簡単に言えば被写体が綺麗に写る光の量です。もう少し詳しく話せば、被写体の本当の色を写真に写すための光のさじ加減といったところでしょうか。
 その光の量を決めるのが、シャッター速度と絞りになります。シャッター速度はおわかりになると思います。何秒分の1秒で被写体を写し止めるかというスピードの調整です(一応補足すれば、高速シャッターなら早く移動している被写体をブレずに収められ、低速シャッターなら逆のその動きそのものを収めることが出来ます)。絞りは、上の方で書いた被写界深度に影響します。眼鏡をかけている方は、眼鏡を外した後、ピンか何かで小さい穴を空けた紙を通して辺りを見てください。裸眼よりよく見えると思います(少し暗いかもしれませんが)。
 これは、円を描くためのコンパスの両端を広げた状態と閉じた状態に相当します。広げた状態での両端が接地した面から中央への距離と、閉じた状態での同じ距離なら、閉じた方が長いですね。これが絞りと被写界深度の原理になります。
 この絞りは前回の口径と同じ単位で表され、F(数字)と表記します。最小値が、レンズの口径値というわけです。35ミリ(普通の)カメラなら最大値は大体F16〜F32辺りでしょう。数字が大きくなればなるほど、被写界深度が深くなります。つまり、被写界深度の浅い望遠系のレンズでも、絞り込めばピントの合う範囲が広がる訳です。
 さて、現在これらには特定の単位が設定されています。シャッター速度は

4000/1、2000/1、1000/1、500/1、250/1、125/1、60/1、30/1、15/1、8/1、4/1、2/1、1
(単位:秒)

絞りは、
F1.0、F1.4、F2.0、F2.8、F4.0、F5.6、F8.0、F11、F16、F22、F32、F45

 となります。(実際にはこれらがメインの数値であるといえます。プロ機材などではさらにその範囲が広がるからです。)この単位は現在どのカメラでも共通です。実は、これが制定されたおかげで、露出が大変しやすくなったと言えるのです。

 先程露出はシャッター速度と絞りで決まりますと書きました。どういう意味かというと、下の表を見てみてください。
ひとつひとつの列が、露出が合っている範囲です。

1000/1 500/1 250/1 125/1 60/1
F2.0 F2.8 F4.0 F5.6 F8.0

 もちろんこの範囲外でも、この段は適用できます。2000/1秒ならF1.4、30/1秒ならF11となる訳です。これがどう言うことを表すのかというと、撮影者は任意のシャッター速度と絞りを選べると言うことです。露出さえ合っていれば、絞り込もうが速いシャッター速度だろうが関係ありません。
 此処まで来れば、もうおわかりだと思います。露出が示す数字例えばシャッター速度500/1秒、絞りF2.0ではシャッター速度125/1秒、絞りF4.0が可能だということです。この露出の範囲も機械であてる方が正確ですが、経験を積めば勘で合わせることも出来ます(これを『光を読む』といいます)。写真撮影というものは人だけで出来ると言うことなんですね。

 実際には、これにフィルムの感度や露出補正などが加わりますが、今回は飛ばしました。
それらについて詳しくは、カメラ雑想――Ogurin式カメラ応用講座で。

 お疲れさまでした。これにて、基礎講座を終わります。

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