超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「わ、わたしは平気です……本当ですっ」












































  

  





『岡崎家の週末、そしてその過ごし方』



「おとーさんっ」
 冬の気配がだいぶ強くなった土曜日、俺が昼食後に茶を飲みながらテレビを観ていると、汐が背中に抱きついてきた。
 小さい頃からあまり甘えるということをしない我が娘だが、中学に入ったころからは少しずつこういったことをするようになって、俺としては幼い頃甘えさせてやれなかったことを考えると、非常に嬉しかったりする。
 もっとも、年頃の娘が甘えるのは大抵懐を痛めるおねだりとかで、世の中の父親は大いに困っているとかなんとか。俺自身も一回くらいは聞いてやろうかと思っていたりする訳だが、汐のおねだりと言えば、
「明日、何処か行かない?」
 と、こんな感じなので、困ったことなど一度も無いのだった。
 ……しかしでかくなったなあ。何処とは言わないが。
「おとーさん?」
「あ、ああ」
 不謹慎なこと考えていたのを察知されたか、怪訝そうな汐に、俺は咳をして誤魔化す。
「話、聞いていたよね?」
 背中から正面ちゃぶ台前に回り込み、すとんと腰を下ろして汐。
「ああ、汐はでかくなった。間違いない。――嘘です御免なさい」
 娘よ。その貌、往時の杏とかよりずっと恐いからな。
「パンチ一発かヘッドロック一回でもう一度話すけど……どうする?」
「いらん。明日何処に行くか、だろ? ……なぁ、なんでそこで少し残念そうなんだ?」
「気のせいよ、気のせい。それで、何処に行こうか?」
「そうだな……よし、河原でキャッチボールなんてどうだ?」
「あ、それいいね――って違うでしょ!」
 むう、親子でキャッチボールって、父親の夢なんだがな。
 ――ちなみに、汐の投擲能力はとっくのとうに俺を上回っていたりする。
「じゃああれだ。春原の社員寮に押しかけよう。俺が執事の格好するから、汐はメイドさんな」
「OK任せて! で、春原のおじさまが部屋に戻ってきたらふたりで一緒に『お帰りなさいませ、ご主人様――』って、ちーがーうー!」
 ちゃぶ台をひっくり返さん勢いで、汐は吠えた。
「明日っ、ふたりでっ、出掛けるの! どこらへんが良いか大体想像付くでしょ!?」
「さっき言ったのとどう違うんだ?」
 俺がそう訊くと、汐は長いため息をついた。そして一呼吸おいた後、急に上目使いになって、
「……パパのいじわる」
「ぶほっ!?」
 思わず茶を吹く俺。
「は、は、反則だぞそれ!」
「お互い様よ。わざとでしょ? さっきから」
 ……ばれてたか。
「で、何処にする? 冗談抜きで」
「実は会社でもらった映画館の割り引きチケットがここにあるんだが」
「最初に言いなさいっ!」



 とまあ、そんなわけで次の日。俺達はいつもより早めに起きて、朝食を手早く済ませると、映画館のある隣街へと足を運んだのだった。
「ん〜」
 バスから降りた汐が、いかにも上機嫌ですといった感じで伸びをする。家の中にいるとは大抵シンプルでラフな格好をしているのだが、今日は珍しく秋色にコーディネイトされた、年頃の女の子らしい服を着ていた。
「良い天気ね」
「ああ、昨日は寒かったが、今日はそうでも無いしな。にしてもお前、えらく気合入ってるな」
「気合?」
 小首を傾げて訊かれる。
「いや、格好が」
「だってデートだもん。当然でしょ?」
「で、でぇと!?」
「そう、デート」
 と、頷く汐。そして両手を軽く広げると、
「カップルに見えなくない? わたし達」
「そんな馬鹿な」
 コートのポケットに手を突っ込みながら、俺は肩を竦めて言ってやった。
「どうやったって、親子にしか見えないだろ」
「む、ちょっと自覚が足りないわよ。おとーさん」
「んなこたーないぞ、娘よ」
 映画館に向かって歩きながら、俺は言ってやる。すると汐は俺の前に回り込むと器用にも後ろ歩きで、
「んじゃ、チケット買う時に割引券出さないで買ってみましょ」
「……なんでだ?」
 昨今の映画館の割引率は、はっきり言って高い。へたすると半額になることだってある。そういう意味で、割引券が無いと少しばかり懐が痛む訳だが……。
「いいからいいから」
 にんまりと笑う汐。
「あ、あとチケットは大人二枚でね」
「学生証、忘れたのか?」
「まさか。そういうのに抜かりは無いわよ」
「じゃあ出せばいいだろう」
「いいからいいから」
 再びにんまりと笑い、汐はクルリと身体をターンさせて、俺の隣に並んだ。
 正直、我が娘が何を企んでいるのか良くわからない。わからないので、俺は素直にその提案を飲むことにする。
「『ONE 〜輝く季節へ』、大人二枚」
 映画館入り口のチケット売り場で、俺はそう言った。当然、そのまま支払いとなって券が二枚出てくると思っていたが、受付のお姉さん(と言っても俺より汐の方が年が近いだろう)は俺と隣の汐を見比べて、
「お客様ですと、カップル割り引きがご利用出来ますが……いかがなさいますか?」
 ――マジかよ。
 いやいや、この受付のお姉さんはからかっているに違いない。そろそろ口元に悪戯っぽい笑みを浮かべて冗談ですと……。
「はい、お願いします」
 うぉい、待てマイドーター!
「お客様?」
 俺が何か言いた気なのを察したのか、受付のお姉さんは怪訝そうに訊く。
「いえ、それでお願いします……」
 他に言いようがない。結局カップル割り引きで、俺はふたり分のチケットを購入した。
「ね、わかったでしょ?」
 エントランスを抜け、ホールへ至る通路を歩きながら汐が得意満面に言う。
「ああ。よくわかったよ」
 肩を竦めて、俺。ちなみに、カップル割り引きの御利益は絶大で、俺が持って来た割引券より安くついていた。
「若作りに見えるんだな、俺」
「嫌?」
「どうだかな」
 本当にわからない。春原とか杏とかは最近何かあると年が何だとうるさいが、俺はそういうことに気をかけなかったし、自分が年相応の格好なのか考えたこともなかった。
「わたしは、嬉しいけどな」
「なんでだ?」
「嬉しくない? 自分の父親が若く見えるって」
「なんだそりゃ」
 想像しようにも、上手く出来ない。
「難しいぞ……」
「ヒント。あっきーと早苗さん、それに公子さん」
「あ、なるほど」
 今度は一発だった。
「って、俺はあのレベルで若く見えるのか?」
「うん、十分」
「そうか……」
 ある意味、衝撃の事実だった。でも言われてみれば、俺の回りにいる連中はみんな若く見える。先に言った年が何だと嘆く二人だって、同世代からみれば十分に若い。
「俺もその範疇に含まれている訳だな。これからは気を付けないとな」
「気を付ける?」
 不思議そうに訊く汐。
「ああ、お前の彼氏に見えちゃ困るだろ?」
「そう?」
 あまり気にしていないと言った感じで、汐。
「ああ、今は良いさ。だけどお前、彼氏とか出来たらどうする? そこで変な噂でも立ったら嫌だろ?」
「あ、そうね……わたしはともかく、その人に迷惑がかかると」
「そういうことだ」
 俺は頷いた。
「でもね、おとーさん」
「ん?」
 汐が俺の袖をそっと引っ張る。
「今は誰も見ていないけど?」
 前後を見てみる。なるほど、朝早く来たうえに上演までまだ時間があるせいか、この通路には誰もいない。
「そうだな。それじゃあ――」
 俺は、そっと片腕を差し出した。
「お手をどうぞ。お嬢様」
 ……昔、渚にも同じことをやったことがある。あのときあいつはえらく恥ずかしがってそっと掴まる程度に手を絡めてくれたのだが――、
「ありがとっ」
 汐は思いっきり絡めてきて、しっかりとくっついてきた。
 その遠慮のなさは、やっぱり父娘だからだよな、と思う。でもそれは、渚の時とはまた違った意味で心地よいものだと、俺は思ったのだった。



Fin.




あとがきはこちら













































「うう……ちょっと羨ましいです――ああっ! しおちゃんに嫉妬してしまいましたっ」




































あとがき



 この調子で行くと本編を追い抜きかねない、○十七歳外伝でした。
 ただ、デレデレしている○が書きたくなって、その思いの丈をそのまま書いてみたのですが……なんかあんまりデレデレしてないですねw。根がやっぱりしっかりものだからでしょうか。
 さて、次回は……何にしよう。

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