超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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こうですかっわかりませんっ。










































  

  


 アルバムを整理していると、面白い写真が見つかった。
 ちょっとした騒ぎが起きたときのものだ。
 昔の話。
 まだ、わたし、岡崎汐が小学生だったころ。
 ちょっと困ったことがあったあの日のことだ。



『ダブルブッキング』



「参ったな……」
 ちゃぶ台の上におかれたプリントを睨みながら、おとーさんは顎をさすった。
「……だめ?」
 と、当時のわたしが訊く。
「うん……結論から言うと、駄目だな」
 がっくりと頭を落として、おとーさんはそう言った。
 授業参観、そのお知らせのプリント。
 でも、そこにある日取りは、おとーさんの仕事と重なっていた。
「もう決まっている上に、至急扱い……大急ぎでやらなくちゃ行けないんだ」
「うん……わかった」
「でもな、まだ手はある」
 そう言うと、おとーさんは電話に向かった。
「もしもし――ああ、オッサンか。早苗さんはいる――え? なんだって!?」
 急に低い声になったので、その後おとーさんがあっきーと何を話しているのか、わたしにはわからなかった。
「そうか……うん、お大事にって伝えてくれ。え? あぁ、いいんだ……それじゃ」
 そう締めくくって、おとーさんは受話器を置いた。
「……パパ?」
「早苗さん、風邪だって……」
 なら、あっきーも来られない。とわたしは思った。おとーさんもそう思ったようで、
「ちょっと待ってろ――まだまだ……」
 そう言いながら、電話番号をプッシュしていく。
「もしもし――ああ、俺だ。久しぶり」
『――誰かと思ったら朋也じゃない。本当に久しぶりね』
 気を利かせてオンフックにしてくれたおかげで、藤林先生の声が直に聞こえた。
「あのな、杏――○月×日なんだが……その日、空いてないか?」
『なんで?』
「いや、その――」
『はっきり言いなさいよ。気持ち悪いじゃない』
「……ああ。汐の授業参観なんだが、当日俺が行けなくなってな」
『――そう。残念だけど、仕事があるわ。知ってるでしょ?』
「――ああ、そうだよな、済まなかった。またな」
『……あ、でも……ちょっと?』
 そこで、おとーさんは電話を切った。
「パパ?」
「そうだった……杏にも仕事があるんだよな――とすれば」
 再び電話番号をプッシュするおとーさん。
『はい、伊吹および芳野ですが……貴方は一体何処の何方ですかっ?』
「なんか電話応対として色々間違っているような気がするが――俺だ。岡崎だ」
 電話の主はふぅさんだった。ちなみに、当時のわたしは風子お姉ちゃんと呼んでいた。
『岡崎さんでしたか。汐ちゃんは元気ですか?』
「ああ、元気だ。その汐の件なんだが、――実は、かくかくしかじかで、その日は空いてないか?」
『残念ですが、風子にだって予定はあります』
「――そうか」
『はい。風子は色々な事情で色々なことが遅れていますから、色々なことを色々な勢いで取り戻さないといけないんです』
「最後の修飾が間違っているような気がするが、わかった……済まなかったな、突然で。それじゃ」
『あ、でもですね――』
 おとーさんは電話を切った。
「……すまんな、汐」
「ううん、気にしないで」
 おとーさんが頑張っているのをわたしはこの目で見ていた。
 だから、そう言うしかなかったし、それ以上のことを言いたくなかった。



 そして、当日。
 チャイムが鳴る。わたし達は教室の席にひとり残らず座っていた。
 後ろには、みんなのお父さん、お母さんが立っている。
 クラスのみんなは、何人かずつで順番に後ろを見ていた。
 前を見ていたのは、わたしだけ。
 少し寂しいけど、来年がある。そう思っていた。
「皆さん、揃いましたねー」
 教壇に上がって、担任の先生がそう言った。
「はい、それでは授業を――」
 そう、寂しいけど来年が――、
「ちょっと待ったぁー!」
 ガラッと教室のドアが開いた。今度はわたしを含め、クラスのみんなが一斉にドアに視線を送る。その先には――
「あ」
 わたしは小さく声を上げた。藤林先生? でもなんで? そう思いながら首を傾げていると、
「あ、あの……どちらさ――」
 困惑した担任の先生が訊き終わる前に、藤林先生は大きく息を吸い込み、
「あたしが汐ちゃんのママよ!」
 と、宣言した。
「え、でも、あれ? そうなんですか?」
「そうなのっ」
 オロオロとする担任の先生に、ムスッと答える藤林先生。でも、わたしの視線を感じるとからっと笑って小さく手を振った。
「あー、先生。とりあえず授業を始めちゃってください」
 しかも堂々とそんなことを言う。
「は、はい……えー、それでは授業を――」
「ちょっと待ってくださいっ!」
 再び教室のドアがガラッと開いた。さっきとおなじく、わたし達は一斉にドアの辺りを見る。
「ふ」
 またもやわたしは声を上げた。風子お姉ちゃん? でもなんで? と首を傾げていると、
「風子が汐ちゃんのママですっ! 間違いありませんっ!」
 と宣い、教室をがくっと傾けさせた。特に、藤林先生が盛大にこけている。
「ええと……」
 困ったのは担任の先生だろう。前に図画でうっかり『お母さんの顔』というテーマを出してしまって以来、わたしに気を使ってくれていたからだ。
「あなたも、岡崎さんのお母さんなんですか?」
「もちろんですっ!」
 と、力んで言うふぅさん。
「そ、それでは――」
 途方に暮れた顔で、担任の先生。
「お二人とも、岡崎さんのお母さんなんですか?」
「「はい、そうです!」」
 自信たっぷりにそういう二人。それは、まるで事前に打ち合わせをしていたみたいぴったりだった。
 そして、授業参観は少々遅れたもののちゃんと始まり――何事もなく終わったのである。



 それが、今から十年くらい前の話。
 写真の中では、わたしを真ん中に、藤林先生と、ふぅさんが後ろに並んで写っている。
 わたしがランドセルを背負っているのに対し、二人はスーツ姿だ。ふぅさんは今に比べるとちょっと着慣れていない感じがするし、藤林先生は着こなしてはいるものの、手にもったハンドバックが似合わないといえば似合わない。
 背景は、小学校の校門。確か藤林先生が持っていたデジタルカメラで撮ったものだ。撮影者はそこらの通りすがりを、ふぅさんが捕まえたはず。
 端から見ると、ちょっと変わった組み合わせだったけれども、
 その時のわたしはとても嬉しかった。



Fin.




あとがきはこちら













































こうですかっわかりませんっ。




































あとがき



 ○十七歳、……って十七歳やないやん編でした。
 授業参観って私の時は平日でしたが、最近増えた共働きの家庭のために何か対処しているのかなーと思い、次いで○の家庭の場合は別の問題があるなーって考えて、このような話になりました。
 仕事か家庭かっていうのは多くの社会人にとって命題じみたものになっていると思いますが、ちゃんとそれを割り振ることが出来る親御さんは、偉いと思います。

 さて次回ですが……クリスマス――かなあ?

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