超警告。Charlotteの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「友利奈緒検定?なんだそりゃ」
「さぁ、こっちもよくわかんないんで。とりあえず乙坂さんもなんか適当に問題考えてください」
「練習巡洋艦鹿島と見分けがつく」
「いきなりギリッギリな問題出すなコラ」









































































































  

  


「新しい能力者が見つかったって?」
「はい。今回のは厄介ですよ」
 いつも通りの生徒会室で、友利はそう言った。
 今日は収録があるとかで、西森はいない。
 高城の姿も無い。律儀な性格であるから、おそらく友利に頼まれて別行動中に違いない。
 熊耳はもう去った後なのだろう、これまたいつも通りに広げられた地図の上に、一滴の水滴が徐々にしみこもうと努力しているところだった。
「それで、どう厄介なんだ?」
「日付指定型ってやつです」
「なんだそりゃ」
「特定の日でないと、発動しない能力者のことですね」
「それのどこが怖いんだ?」
 その日でなければ、ただの一般人だろう。
「その日までわからないってことですよ。事前調査が遅れます。事前調査が遅れるってことは、書道も遅れるってことで――最悪、なにもかもが手遅れになることもあるんですよ」
「それは……なんか、いやだな」
「ええ。だからこちらは必死になって、先手を取ろうとしているわけです」
「過去にもいるのか、そういうやっかいなのが」
「そうっすね、つい最近なら――どんな場所にいても今年の恵方がわかる能力者とか」
「……それ、どこも強力そうに見えないんだが」
「たまたまっすよ、たまたま。でも、今回は節分の時みたいにはいかないっすよ」
「――どんな、能力なんだ?」
「異性からチョコを貰う能力です」
「……は?」



『チョコレートの、行き先』



「帰っていいか」
「いや、実害は過去最高レベルなんで」
 机の上で両手を組んだまま、友利はそう続ける。
「異性であれば、能力の効果範囲に入ってしまうと問答無用でチョコをあげたくなります。その距離は能力者の半径5メートル。真後ろにいた女生徒も被害に遭っているところをみると、視線は関係ないようです。故に、私みたいに気配を消してもアウトでしょうね」
「それは……たしかに強力だな」
「それに、非常に危険です。年に一度という限定的とはいえ、任意で広範囲に洗脳が出来るんですよ?」
「それはそうかもしれないが……次の日まで待てばいいんじゃないか?」
「おなじことを科学者連中も考えているでしょーよ」
 こっちは先を越す必要があるんですよ。ため息をつきながら、友利はそう続ける。
「困ったことにターゲットは主に女子校の登校時に校門へ侵入し、適度に注目を集めたところで能力を発動。ある程度チョコレートを収集した後能力を発動させたまま撤収――という方法で荒稼ぎしているようですね」
「最低なやつだな」
「乙坂さんとどっこいどっこいのよーな気がしますが」
「僕は誘導しただけだ。相手の気持ちを書き換えるような洗脳なんて、していない」
「どっちもどっちな気がしますがね。それはまぁ、さておきましょう。いま議論することじゃないんで」
 それは、僕も同意見だった。
「それで、女性陣が一切接近できないとなると、どんな作戦を立てたんだ?」
「フッ、そりゃあ決まってるっすよ」
 友利が眼を細めた。おそらく組んだ手で見えない口元は笑っているのだろう。
「まず乙坂さんが女装します」
「まて」
「そしてチョコレートをもってターゲットが侵入するとおぼしき女子校に潜入」
「おい」
「ターゲットが能力を発動させて女子が群がったら便乗して接近し告白」
「こら」
「そして目視できる範囲に到達したら、『入れ替わって』ターゲットの能力を解除、抜け殻になっている乙坂さん自身を抱えて『入れ替わり』の効果時間ぎりぎりまで指定の方向へ走ってください。あとはこっちでなんとかしますんで」
「ひとつ、いいか」
 下手な反論は意味をなさない。短いながらも友利とつきあってきてわかっていることだ。だから、質問を繰り返してできるだけ軌道の修正を図りたい。
「高城はどうした?」
「バックアップ要員です」
「なんでだ。最低でも僕と一緒に前線にだせるだろう」
「そうしたいのは山々だったんですけどねー」
 友利が指を鳴らす。すると生徒会室の扉が開き、高城が――高城が!?
「お呼びですか」
「なんで女子の体操服を着ているんだよ!?」
「体格にあう制服が無かったのです……!」
 しかも今時見かけないブルマを、だ。おまけに三つ編みのかつらまで被っている。なんというか、歩未の情操教育に非常によろしくない出で立ちだった。
「なんで、一番大きいサイズの体操服を無理矢理着てもらいました。体操服なら、ある程度布地が伸びますからね。古い格式を保っているお嬢様学校だったのが災いして、ブルマですが」
「だからって、お前――」
「いいのです。これもお役目ですからっ……!」
 さめざめと泣く高城。どうでもいいがそのたびに大胸筋がぴくぴくと動くのが、密着した体操着のおかげで手に取るようにわかって、なんというか……非常にコワイ。
「というわけで高速移動する筋肉ブルマと、射程内に入れば一撃必殺女装男子。乙坂さんならどっちを選びます?」
 そうのたまう友利の尻には、間違いなく悪魔のしっぽが生えていた。



 下校時。とあるお嬢様学校の校門付近。
 ターゲットの朝の行動を分析した結果、この学校が狙われる可能性大と出て、僕たちはこの学校へ布陣していた。
「こちら乙坂。配置についたぞ」
 結局、友利の作戦はそのまま決行されることになった。
 色々検討したのだが、僕の頭脳ではそれ以上良い案を導き出せなかったのだ。
 で、あるならばやることはひとつ。この不快な状況をさっさと終わらせることだ。
 ――こんな姿、歩未には絶対に見せられない。
『GPSの確認とれました。現時点でなにか不都合はありますか?』
「脚がすーすーするのが気持ち悪くて仕方がないな!」
『はい、不都合なしっと。タイツはいているからそれほどでも無いはずっしょ』
「そのタイツも気持ち悪いんだよっ。なんだこの脚全体が締め付けられる感じはっ!?」
 身体に不必要にフィットするブレザーの感触も、体格を誤魔化すために装着したパッド入りブラも、気色悪いことおびただしい。
『そのうち慣れて寒い日は手放せなくなりますよ。うちの制服タイツはだめですけどね――おっと、対象を望遠鏡で確認。まもなく乙坂さんの視界にも入ります。こっちは念のため少し距離を取りますよ』
「ああ、そうしてくれ。――こちらでも、確認した。接近する」
 見た感じは、どこにでもいそうな普通の男子生徒だ。だが、その顔には妙に自信があるように見える。
 ――かつての、僕のように。
 そいつは無造作に校門をくぐった。
「あの、ちょっとおまちください!」
 校門付近で常駐していた、風紀委員とおぼしき生徒が駆け寄ってくる。
 他の生徒がなにごとかと注目を集めるその刹那、そいつはにやりと笑って――。
「『ギブミー、チョコレートっ!』」
 なるほど、視線で発動しないからどうするのかと思ったら、声か。
 感心するまもなく、その場にいた複数の女生徒が一斉に黄色い声を上げる。
 ――なるほど、これはひどい。この場に歩未がいたら確実に悲鳴が上げてしまったにちがいない。あるいは友利でも――いや、なんでいま友利を連想した!?
 雑念をふりほどいて、僕も校門をくぐって、一気にターゲットをへと接近する。出来るだけ女子っぽいしぐさでかけよって、あらかじめ友利が用意してくれた高級チョコレート店の包みを懐からとりだし、他の女子がターゲットにチョコを渡すより早く――。
「あの、これを……」
「うほっ、超好みの可愛い子発見!」
 冗談じゃない!
 そう叫びたいのをこらえて、僕は能力を発動させた。
 入れ替わったら、すぐさま勘をたよりに能力を解除。
「……え、あれ?」
「なんで私、チョコを手に?」
 同時に僕は僕の身体を抱えて一直線に走り出す! 目指すは校門。そこを抜ければ友利がなんとかして――。
「お待ちしておりました」
 校門の影からぬっと現れたのは、友利ではなく体操着姿の高城だった。
 その名状しがたき服装の高城がバットを振るい、ほぼ同時に僕の能力は切れて――。



「……忘れたい戦いだった……」
 夕暮れの生徒会室で、僕は黄昏れていた。
 あの忌々しい女子生徒の服からはすでに着替えている。しかし、あの感触はしばらく忘れられそうにも無かった。
「おつかれさまでした。乙坂さん」
 今回の顛末を書類に書いていた友利が、筆記用具を勢いよく置いてから、そうねぎらう。
「女装はこれっきりだからな」
「そりゃそうっすよ。こんなんが毎回あったらこっちが困ります」
 似たような能力者が現れたとしても、次はもっとましなやり方で行きますよ。と、友利は続ける。
「まぁ、それはそれとしてですね。これ、いりません?」
 そう言って友利が取り出したのは、高級チョコレート店の包みだった。
 それは見覚えがある。僕が女装したときに懐からとりだしたものと同じ形をしていたからだ。
「それ、僕にもたせたものじゃ無いよな?」
「当然っすわ。あっちはあのあと私らが美味しくいただきましたし」
 そんなことをしていたのか。道理で、元の身体にもどったときに包みが無かったわけだ。
「これは予備にこっちでもっていたものですよ。ですけどもう用がありませんからね、折角ですから今回の立役者である乙坂さんにあげようかと。まぁ、折角のバレンタインですし?」
「そうか……そういうことなら、もらっておこうか」
「はいはい。動機はともあれこうやってチョコを渡すのは初めてなんで、ちゃんと喜んでくださいよ」
「うわーうれしいなー」
「めっちゃ棒読みっすね!」
 そこで、お互いに吹き出してしまう。
「さてと、こっちはこれから今回のターゲットの転入手続きを書かなきゃいけないんで、乙坂さんはもう上がっちゃってください。チョコは、歩未ちゃんと食べるんですよ?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
 チョコの包みを鞄にしまいながら、僕はそう答え、廊下へと向かう。だが、部屋を出る直前でふと振り返って、
「友利」
「なんすか?」
 すでに書類とにらめっこをしていた友利は、顔を上げもしない。
「チョコ、ありがとうな」
 一瞬、友利の肩がぴくりと動いた。
 ややあって返事の代わりか、片手をあげてひらひら振ってみせる。
 そんな友利の様子を見届けて、僕は帰宅の途へとついたのだった。



Fin.





あとがきはこちら









































「おいこら! あたしはともかく柚咲をださないたぁどういう了見だごるぁ!?」













































あとがき



初のCharlotteのSSは、バレンタインものでした。
なんというか、私自身も予想外です。
次は……なににしようかな?



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