超警告。リトルバスターズをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「俺の名前はマスター・オブ・クリスマス。クリスマスファイトを征してしまったために――」
「うんそれ、前にもやったからね恭介」


























































  

  


「めりー・くりすまーす!」
「そして見ていけよ、オレの筋肉!」
「はっはっはぁ! ちゃんとプレゼントをもらっておけよ?」
「さらに見て行けよ、オレの筋肉!」
 夜の女子寮前を、ソリ型リアカーが爆走する。
 リアカーに乗るのはサンタクロースの格好をした神北小毬。そしてリアカーを引くのはトナカイカラーの全身タイツにツノと赤鼻を付けた井ノ原真人と宮沢謙吾である。
 そんな異様な集団がメリークリスマスと叫びながら走り回るものだから、つい何事かと寮の住人は顔を出し、そこで小毬がリアカー後部に積んだ巨大な袋から、小さなプレゼントの包みを手渡しで(そうでない場合は上手に投げて)配っていくという流れであった。
「……毎度のことだけど、よくもまぁあんなことを考えつくわね」
 ――その様子を、二木佳奈多は校舎の廊下を巡回しながら眺めていた。
 今日は12月25日のクリスマス。多少のことは目を瞑ることにしているが、こうして日課である校舎巡回を怠ったりはしない。
「ま、あの子達はあの子達、私は私――か」
 ただ二学期が終わった現在、きたる新年、そして三学期への準備としてやることはたくさんある。
 なので、佳奈多はこの日も風紀委員が使用している教室で徹夜覚悟の書類整理を行うつもりであった。
「♪くっらっいっよみっちはっ! ぴっかっぴっかの〜」
「♪オレの筋肉が役に立つのさああああああああああ!」
「ほわぁ〜。真人君も謙吾君も、息がぴったりだねぇ〜」
 既に小毬達の姿は見えなかったが、そんな陽気な歌と声が、こちらまで届いてくる。
 そんな三人に佳奈多は苦笑したまま、風紀委員が使用している教室の明かりを付け――。
「お邪魔していますわよ、二木さん」
 思わぬ先客に思わず息をのんだのであった。



『彼女たちの、クリスマス』



「さ、笹瀬川さん……」
 笹瀬川佐々美。自他共に認めるソフトボール部の次期キャプテンとして、佳奈多とは部活の運営委員会などで何度も顔をあわせている間柄である。
 ――もっともそれ以上に、リトルバスターズがらみのイベントやハプニングで一緒になることの方が多いのだが……。
「来てくれたのは嬉しいけれど、今の時刻に校舎内にいるのは校則違反よ?」
「それくらい存じておりますわ。同時に、風紀委員が教室に駐在している場合は、いついかなる時もここに訪れてもよろしいはずですわよ?」
「――そうだったわね」
 そうだった。佐々美はこういった細かいことに抜け目がないのである。なにげに、佳奈多の周りでは数少ないタイプであった。
「それで用件は?」
「そうですわね……相談――といったところかしら」
「それなら、こっちの仕事をしながらでいいかしら?」
「構いませんわ」
 来客用のソファーに座り、制服の胸あたりを撫でながら、佐々美はそう答える。なので、佳奈多は自分の席のデスクランプをつけると、おもむろに備え付けられているノートパソコンの電源を入れ、書類の作成を始めた。
 だが、いつになっても肝心の相談がこない。
「そういえば、いつも一緒にいる取り巻きはどうしたの?」
 しかたがないので、佳奈多の方から話題を振ってみる。すると佐々美は何故か憮然とした様子で、
「四六時中一緒にいるわけではありませんわ」
「でもクリスマスなんだから、一緒にお祝いしたんじゃないの?」
「それは、そうなんですけれど……」
「――何かあったの?」
 ノートパソコンの画面から顔を上げて、佳奈多はそう訊く。すると佐々美は少し恥ずかしそうな顔で、
「実は……」



■ ■ ■



「佐々美様っ! これクリスマスプレゼントの――セーラームーンなりきりブラセット、セーラームーンモデルです! やっぱり佐々美様には主役たるセーラームーンがお似合いですよね!」
「いえいえ佐々美様っ! 佐々美様には私からのセーラームーンなりきりブラセット、セーラーマーキュリーモデルがお似合いです! 佐々美様には知的なセーラーマーキュリーが似合うと思うんです!」
「待ってください佐々美様っ! 佐々美様ならこちらのセーラームーンなりきりブラセット、セーラーヴィーナスモデルがお似合いだと思います! だって、佐々美様には美の象徴であるヴィーナスの名前がふさわしいですからっ!」

「「「さぁ、是非とも試着を――もちろんこの場で!――……佐々美様っ!!!」」」



■ ■ ■



「ああ、それは……」
 それ以上、言葉が続かない佳奈多だった。
「一応フォローいたしますけど、普段はいい子たちなんですわよ。ただ何故か、わたくしのことになると暴走してしまうだけですの」
 それに優秀なソフトボール部員なんですのよ。と、佐々美。
「それはまぁ、わかるけどね……」
 ソフトボール部の練習は、割とよく目立つ方である。それもリトルバスターズのようなカオスっぷりでという意味ではなく、正統派の運動部としてかなり厳しい練習をしているのを、佳奈多は何度か目撃していた。
「ですから、少しほとぼりが冷めるまでは流浪の身というわけですわ」
 制服の胸部分を触りながら、佐々美。
「それじゃ、相談と言うより雑談ね」
 肩をすくめて、佳奈多は書類作成を再開した。
「気が散るようでしたら、退散いたしますけれど……」
「これくらいで気が散るほどヤワではないわ。ただ、ここだと殺風景じゃない?」
「そんなことありませんわ」
「そうかしら。私より――リトルバスターズの方に行けばいいのに」
 ぴくりと、佐々美の髪が震えた。
「考えないわけでは……ありませんでしたけれど……」
 制服の胸部分を触りながら、佐々美。
「合流すればいいじゃない。賑やかさなら圧倒的よ。あなたもあの脳天気なソリ、見たでしょ?」
「あれはもうソリというより古代ローマの戦車みたいでしたわね……それより、そういう二木さんはどうですの?」
「私は――今、書類仕事しているでしょ」
「期日は今日というわけでもないでしょうに」
「片づけられるものは先に片づけておくのが私のやり方なのよ」
「……難儀ですわね」
「よく言われるわ」
 キーボードに指を走らせながら、佳奈多はそう答える。
「それで笹瀬川さん、その胸の内ポケットにあるプレゼントはどうするの?」
「!?」
 今度はびくりと、佐々美の全身が震えた。
「……気付いていましたの?」
「無意識でしょうけど、さっきからそこばっかり触っていたからね。何か隠しているんだってすぐにわかったわ。風紀委員を長くやっているとね、こういうことに鋭くなっちゃうのよ」
 と、なんでもないように佳奈多。
「で、まぁ訊かれていないのにアドバイスするなんていう非効率的なことをするけど、渡さないで後悔するより、渡して後悔する方がずっといいわ」
「……そういうものですの?」
「私の経験談よ」
 ノートパソコンのキーボードを叩きながら佳奈多はそう答える。
「そうですの……二木さんも、結構大変な道を歩んでいらっしゃいますのね」
「大変でない道なんて、ないんじゃない? 誰であろうとも、ね」
「そうかも、しれませんわね」
 ほぅ……とながく息をつきながら、佐々美は静かに頷く。
「決めましたわ。わたくしちょっとリトルバスターズの方に行って参ります」
「ええ、その方がいいと思うわ」
「なんだか申し訳ありませんわ、もしよろしければ――」
「一緒に行きましょうって? 私はいいのよ。仕事がまだあるしね」
「……わかりましたわ。それでは――」
「まって」
 そう言って、佳奈多はデスクから立ち上がると、備え付けの小さな冷蔵庫の扉を開けて緑色のボトルを引っ張りだした。
「まぁ」
「言っておくけど、白ブドウの果汁に炭酸を封入したものよ」
 息をのむ佐々美にすかさずそういうと、佐々美は瞬きをして、
「それでも驚きですわ」
「雰囲気だけでもね」
 小さいグラスふたつを用意して、静かに注ぐ。
「メリー・クリスマス」
「メリー・クリスマスですわ」
 ちんと、ふたつのグラスが小気味良い音を立てる。
「ごちそうさまでした。それでは、いってまいりますわ」
「ええ、いってらっしゃい」
 再び書類作成の作業に戻りながら、佳奈多。
 そんな彼女に、佐々美は優雅に一礼すると風紀委員の教室を出ていった。
「ふ――」
 思わず、小さなため息が漏れてしまう。
「私の経験談だなんて――笑っちゃうわね」
 渡さずに後悔し続けているのは自分自身であるのに、何故あんなアドバイスをしてしまったのか――と、軽い自己嫌悪に陥る佳奈多であった。
「そんなことより仕事よね。さぁ、朝になるまでに終わらせて――あれ」
 終わっていた。
 自分で思っていた以上のペースで進められたらしく、書類は完全にできあがっている。
「なによ。時間が余っちゃったじゃないの。これなら私もあっちに行けるけど――」
 デスクから立ち上がって、窓を眺める。ここからだとよく見えないが、リトルバスターズの部室あたりから暖かな光が漏れているのが確認できた。
「……やめておいた方が無難ね。ガラじゃないもの」
 そういって佳奈多は手早く後かたづけを終えると風紀委員の教室を後にしようとし――、
「ゲーハッハッハぁ! このはるちんが深夜残業まがいのお姉ちゃんを見過ごすと思うてかぁ!」
 ドアの向こうで待ちかねていた仁王立ちの三枝葉留佳と鉢合わせしたのであった。
「笹瀬川女史だけ行かせるとは水くさいじゃないか」
 思わず後ずさった佳奈多の背中に豊満な胸が当たる。いつの間にか、背後を来ヶ谷唯湖に取られていたのだ。
「夜はこれからだぞ? 二木女史。小毬君と少年は所用があって少し遅れるが、他の者は皆――君が来るのを待っている」
 こうなると、もうどうにもならない。
 参ったといった様子で佳奈多は両手をあげた。
「ああもう……好きにしてちょうだい」
 そう言う割には、その顔に浮かんでいるのはどこか嬉しそうな笑顔であった。



Fin.




あとがきはこちら












































「来ヶ谷アワーのお時間だ。随分と久しぶりだったな」
「前回はアニメ第一期放映開始記念で、今回は第二期最終回直前ですからね」
「まぁまぁ、お姉ちゃんが主役になったんだから良いじゃないですカ」
「本来は笹瀬川女史がメインだったそうだが――まぁ、ヒロインポジションだったからいいんだろうな」
「……あいつの物語は、どこかひねてるからな」
「りんちゃーん、そういうことを言うのは、めっですよー」
「なのです!」
「まぁ作者のことは置いておこう。というわけで今回のお題――というより話題だな――は、アニメの感想といこうか。まずは、西園女史から行ってみようか」
「そうですね……あの子の描写がすごく丁寧でよかったと思います。あと、件の人形劇に『Cat Shit ONE』を使うとは思いませんでした」
「ああうん、いきなり濃い話題だな。では次、葉留佳君」
「うーん、お姉ちゃんのエピソードがテレビで流れないのがちょっと残念だったけど……でも私のエピソードを丁寧にやってくれたのは嬉しかったかな。原作だと曖昧だったところもちゃんとフォローしていたし」
「うむ、君のエピソードは確かにわかりやすかったな。それでは次、クドリャフカ君」
「一番びっくりしたのはお母さんのビジュアルでした! わふっ!」
「本当だったな」
「一瞬妹かと思いましたヨ」
「可愛かったねー」
「まぁ、クドの母らしい」
「――能美さんのお父さん、もしかしてその手の趣――」
「西園女史、そこまでだ。さて次は――鈴君」
「あたしか――うーん、最終回を見てから感想を言いたいな。でも今のところまではすごくいい」
「そうだな。今週の鈴君は観ていて気持ちの良いものだった。さて、トリは小毬君に任せよう。どうぞ」
「ゆいちゃんがすっごい乙女なシーン、可愛かったねー!」
「やーめーてーくーれー!」
「ああっ! 姉御が一発で壊れたっ!?」
「わふー! 壁に頭を打ち付けたら壁の方がへこんだのですっ!?」
「くるがやは意外とおとめちっくだ」
「あのエピソード放映中、メインヒロインみたいだという声が多数あがりましたからね……」
「うーん、本当に可愛いと思うけどなぁ……」




































あとがき



 お久しぶりのリトルバスターズでした。
 リトルバスターズのソーシャルゲームで佐々美様があまりにも愛らしいので一発書くで! となったのですが、何故か主役は佳奈多になりました。いや、佳奈多もそのゲームで十分はっちゃけ――もとい可愛いのですが。
 さて次回は――超未定です。

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