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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「ようやく出番なのだわ!」
「ながかったですねー」
「ふ、ふふ……待っていたわけではないぞ。本当だぞ?」
「あたしゃてっきり来年からだと」
「もう出ていたので気にしなかった」
「ぐぬぬ……」
「ぐぬぬ……」
「ぐぬぅ……」
「あー、えらいクリスマスになってもーた」












































































































  

  


  これほどまでの虚飾はないと、千里朱音は思う。
 12月25日の夜、クリスマスパーティの会場のこと。
 正確には、クリスマスではない。
 朱音が属している『ガイア』は反キリスト教の組織である。故にお題目も、星の巡りを祝うとかなんとか、なにか適当なものでお茶を濁している。
 理由は至極簡単、この国がクリスマスを祝う体質だからだ。
 それ故、それっぽい行事を立てれば、組織を後援する人々は自然と集まってくるという算段であり、事実その通りであった。
 故に、これほどまでの虚飾はないと朱音は思うわけである。
 クリスマスツリーではないと言い張りながらも電飾のついた樅の木を飾り、賛美歌ではないと言い張りながらもゴスペルのような合唱を会場のBGMとして流す。ここまで来ると、いっそ清々しいとも思う。
 ……それにしても。
 カクテルグラスの中身――ノンアルコールの炭酸飲料――で唇を湿らせながら、朱音は思う。
 彼らは今頃、楽しんでいるだろうか。



『楽しみたいのは、”クリスマス”』



「へ? あれ? 会長は参加しないんですか?」
 数日前、さも不思議そうに天王寺瑚太朗はそう言った。
 オカルト研究会での、部室のことである。
 窓から外を見ると、数日前から降り出した雪のおかげで、辺りは真っ白に染まっていた。
「ええ、申し訳ないのだけれど」
 いつもの通り部長の席に座った朱音は、広げていた手紙を丁寧に折り畳みながらそう答えた。
 市販のレターセットを、部室に備え付けれたプリンターに上手く通して印刷したものだろう。カラフルなフォントとタブレットで手書きしたものと思しきイラストが添えられたその文面には、オカルト研究会でクリスマス会を開こうという主旨が描かれていた招待状であった。
「うーん、出不精の会長でも大丈夫なように会場をここにしたんですが……」
「おまえねぇ……確かにここが会場なら、よほどの事情がない限り参加していたけれど」
「でしょ?」
「でも、その『よほどの事情』があるのよ。その日は、私の所属する環境団体のパーティに参加しなくてはいけないの」
 朱音自身、あまり気の進まないパーティである。だが、その立場上参加しなければならないものでもあったのだ。
「ですけど……」
「まぁまぁ。瑚太さんや、会長さんにも色々事情があるんだよ」
 なおも食い下がる瑚太朗の肩を、同じオカルト研究会の会員であり、クラスメイトであり幼なじみでもある(らしい)神戸小鳥が止めた。
「いや、それはわかるんよ。でもなぁ……」
「欠席したら、それはそれで問題ですからねー」
 朱音と同じ組織に属している鳳ちはやが、少し困った様子でそんなことを言う。
「そうか、カイチョーは無理なのか……」
 端でそれを聞いていた中津静流が、残念そうにそう呟いた。
「静流、無理を言ってはいけないぞ。組織とはそういうものだろう」
 そんな彼女を、彼女と仲の良い此花ルチアが慰める。
「――そうだな。だが残念だ」
「……まぁ、私のことは気にしてなくてもいいのだわ」
 オカルト研究会に流れるどんよりとした空気を振り払うように、朱音は努めて冷静を装い、そう言った。



 世界規模の組織となると、何かと挨拶周りが面倒くさい。
 作り笑いにはもう慣れていたし、他愛の無い会話というのにも慣れてはいたが、それが何度も続くとなると、多少はうんざりしてくるものである。
 しかし、今回は多少趣が違うようであった。
「今年は、随分と少ないのね」
 広い会場の一角で、ドレス姿の朱音がぼそっと呟く。
「ここ数日、各地で『ガーディアン』との抗争が激化していますからね」
 朱音の隣に控えていた、秘書の津久野がそう答えた。こちらは、いつも通りのスーツ姿である。
「ここまで足を運ぶことが出来ないというのは、問題ではなくて?」
「おっしゃるとおりですが、あくまでここ数日です。新年を迎える前には沈静化するのではないかという予測が出ておりますので、ご安心ください」
「そう。――まぁ、この場に限って言えば感謝するべきなのかもしれないわね」
 ただ、随分と突発的な印象を受ける。まったく、いったいどんな裏があるのやら。そう思いながら、朱音はグラスを再び傾けた。
「あと、もうひとつ」
「まだあるの?」
「はい。風祭近隣の森で野良の魔物が多数うろついているとの情報が入りましたので、現在調査中です。もっとも、数は多いと言っても無害、或いはほとんど無害の魔物ばかりだそうで、戦闘を想定したものではありませんが……あまりにも数が多いので、例のドルイドの可能性を考慮しているようです」
「あちらもこちらも元気なものね。それで、うちの人間も少ないと」
「ええ。警備も必要最低限になってしまいました。切り札である鳳咲夜を配備しているので何も問題ありませんが」
「――そういえば、彼も参加出来なかったわけね」
「はい?」
「こちらの話よ」
「はぁ……。それはそうと、先ほどの会談でこちらの挨拶周りは終わりましたが、この後はいかがなさいますか?」
「――え? もう終わってしまったの?」
 ドレスを着用しているため、自分では今が何時かがわからない。それ故朱音は会場の柱時計に目をやった。そして、その時刻に軽く目を見開く。
 時計はちょうど、瑚太朗達がクリスマス会を始める時刻を指していた。今から急げば――間に合わなくもない。しかし……。
「いかがなさいました?」
 朱音の表情から不安を感じたのだろう。津久野が声をかける。
「ううん、大丈夫よ」
「それならばいいのですが……お部屋に戻りますか?」
「いいえ。それをすると後で理事会がうるさいわ。テラスに出て、風にでも当たってくる」
「では、こちらを――」
 津久野が、何処からともかくドレスと同じデザインのショールを持ち出し、朱音に羽織らせる。
「ありがとう、津久野」
 肘まで覆った手袋に包まれた右手を振って、朱音はひとりテラスに出た。



「ふむ……これは」
 建物の隣の棟から一部始終を見ていた鳳咲夜が、ぽつりとそう呟いた。「どうみても朱音さん、いらない子状態ですね」
 その咲夜の隣で双眼鏡をのぞきこんでいたちはやが、的確な感想を漏らす。
 別に覗きをしている訳ではない。
 会場内の警護と監視を遠距離から行っているだけである。
 通常の警護担当が対処できない事態が起きた場合に彼が出動するという手はずをとっているためこうして距離を置いているわけであったのだが、それが却って好都合であった。
 色々と、小細工を弄する手間が省けたからである。
「ヨ太朗君の予想通りになりましたね。プランBに移行して結構ですよ、ちはやさん」
「わかりました! それでは行ってきますねー!」
 張り切った様子で、ちはやが駆け出す。
「ふむ……」
 その背中を目で追って、咲夜は小さく眉を動かした。
「ガーディアンとドルイド、そして間接的ながらも我らがガイアまでもを動かしましたか。末恐ろしいですね、ヨ太朗君は」
 皮肉気ながらもどこか嬉しそうに、咲夜はひとりごちる。
「――まぁ今回は動かされることとしましょう。さて、そろそろこちらも準備いたしますか」
 咲夜が、めがねをかけ直す。
 そして次の瞬間、その姿はかき消えたのであった。



「さすがに、寒いわね」
 積もった雪の放射冷却を侮っていた。
 ショールの前をきっちりと閉じて、朱音は小さくため息を付く。
 すると吐息は即座に白くなって、静かに拡散していった。
 その様子が何故か可笑しくなって、朱音は小さく笑ってしまう。
「何をやっているのかしらね、私は」
 自嘲気味に、そう呟く。周囲は夜の闇と積もっている白い雪に包まれていて、朱音の声に答える気配はない。
 だからこそ、だろうか。
「――行きたかったのだわ、クリスマス会」
 ぽつりとそんな一言が、朱音の口から発せられていた。
「それは奇遇ですね」
 返ってくるはずのない返事が、朱音の頭上から響く。
「え……?」
 戸惑う朱音。そこへすとんと、テラスに降り立った影がひとつ。
「こんばんはお嬢さん。怪盗高校生です」
 長いコートをマントにように翻すその姿は、まごうこと無く――、
「天王寺! おまえ、こんなところにどうやって……!」
「ちはやに放り投げてもらいました」
 慌ててテラスの下を見ると、中庭でにこやかな笑顔を浮かべているちはやが、手を振っていた。
「そうじゃなくて、ここまでの警備をどうやって――咲夜ね」
 そもそもちはやが動いていて、彼が動いていないわけがない。
「それで、何をしにきたのよ。おまえ」
「いやだなぁ会長。怪盗がすることといったら、ひとつですよ」
 わざとらしく片目をつぶって、瑚太朗はそう答える。
「麗しきお嬢様を、さらいに来たんです」
「そ、それって」
 私のことじゃないでしょうね――と朱音が言い終わるよりも早く、
「ちょっと失礼」
 瑚太朗がそう言って、両手で朱音を抱える。
「しっかり掴まっていてくださいね。行きますよ?」
「行くって、まさか――」
 そのまさかであった。瑚太朗は、朱音を抱き抱えたまま助走をつけると、そのまま中庭に向かって飛び降りたのである。
「おまえ、着地はちゃんと考えて――!」
「ご心配なく!」
 瑚太朗の言うとおり、着地先には、雪の吹き溜まりがあり――。
「そいっ!」
 彼は朱音を両手で掲げるように持ち上げて、吹き溜まりの中に突っ込んだのであった。
「天王寺!?」
「つ、つめてー! 吹き溜まりは予想以上にコールド! 俺の心臓危うくホールド!」
 下半身まるまる埋まりながらも、どうにか吹き溜まりから脱出する瑚太朗に、朱音は珍しく気遣った様子で、
「無茶しすぎよ、おまえは――!」
「これからもっと無茶しますよ」
 朱音を抱え直し、瑚太朗は走り出す。
「そうですそうです。これからオカルト研究会まで一直線にダッシュなんですからー」
 瑚太朗と併走して、ちはやもそんなことを言う。さらにはそのちはやに併走して、
「お見事ですヨ太朗君、朱音お嬢様に怪我ひとつ負わせず外にお連れできるとは、多少見直しました」
 咲夜までもがそう言ったので、朱音は目を丸くしてしまったのであった。
「会長の身代わり、どうにかなったのか?」
「その点についてはご心配なく。会場の隅にさりげなく1/1スケール朱音お嬢様フィギュアを設置いたしました。近くを人が通ると、ランダムで『よくってよ』『紅茶を持ってきてちょうだい』『好きなバンドはガルデモよ』と呟きます」
「地味にすげぇ……」
「そして役に立たない機能ね……」
 瑚太朗と朱音が、ほぼ同時にそんな感想を漏らす。
「まぁそれは、些末なことです」
 いつも通りの冷静さと、どこか状況を楽しんでいるかのような口調を織り交ぜて、咲夜がそんなことを言う。
「さぁ会長、みんなが待っていますよ」
 朱音を抱き抱えたまま、まったく息を切らさずに瑚太朗が続ける。
「小鳥がツリーを用意して、ルチアが飾り付けをして、静流がさんまを焼いて待っています」
「さんまですって!?」
 瑚太朗の腕の中で吹き出す朱音。
「ええ、いまの季節は身が締まって美味いとかで。大根下ろしとポン酢も大量に用意しているそうですよ?」
「洋食に疲れた舌には最高ね」
 瑚太朗の肩に、手を回す朱音。
「ありがとう、天王寺――瑚太朗」
「いえいえ、どういたしまして!」
 瑚太朗が破顔してそれに答える。
 雪の積もった道を、四人はまっすぐと風祭学院へと急ぐ。
 目指す先、ようやく見えてきたオカルト研究会の部室と思しき部屋からは、暖かい光が漏れていた。



Fin.





あとがきはこちら










































「戻ったぜ!」
「おわー! 瑚太さんが会長さんをお姫様だっこして戻ってきた!」
「な、何故だかしらないが、なんだかうらやましいぞ!」
「一見すると花嫁を強奪した恋愛映画の主人公ですもんねー」
「そのまま結納か」
「お似合いですよ、朱音お嬢様」
「な、な、なにを勝手なことをいっているのだわ!?」



■ ■ ■



「魔法の第三惑精クリーミィ☆かがりん、ジョジョ立ちでゴゴゴゴゴ! と参上! ――また欄外ですか! いい加減にしてください!」
「いつからここが固定枠じゃないと錯覚していた?」
「あ、ありのままに起こったことを話すぜ……! のコピペをいまここでしましょうか? 篝ちゃん暇ですので」
「いや、いいから。CLANNADんとこでさんざんやってたみたいだし。っていうかこれクリスマスSSじゃん。もっとクリスマスの話題で行こうぜ」
「そうですね。実は篝ちゃん、服を黒から赤に変えるだけでサンタガールに変身できます。ご存じでしたか?」
「便利で良いけど、それ静流もあたはまらね?」
「白タイツの方が好みでしたか! 作者は黒タイツが好みだというのにっ!」
「さりげなく作者の趣味を暴露するんじゃない」
「それではみなさま、良いお年を。今年も世界を滅亡させることをあきらめた、クリーミィ☆かがりんでした」
「勝手にまとめに入ったぁ!?」











































あとがき



 今年のクリスマスSSはRewriteでした。
 なんというか、ようやくオカルト研究会のメンバーが総員登場と言った感じでしょうか。もっとも、今回は朱音にウェイトが置かれたような気がしますが……。
 次回ですが、例によって未定です;





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