超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
ブラウザのバックボタンで戻ってください。

このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

それでも読む方は方はここをクリックするか、
ガンガンスクロールさせてください。


























































「俺たちの後輩がアニメ化か……感慨深いな」
「リトルバスターズだよね。どんなお話になるのか、わたしも楽しみっ」














































































































  

  





『岡崎家の、お月見』



 たまには月見酒がしたいという実に唐突な連絡と共に春原が我が家を訪れたのは、金曜日の夜、それもだいぶ遅くなってのことだった。
「いや、悪い悪い。急に飲みたくなってさ」
 おそらく、仕事が終わった後そのままこちらに向かったのだろう。やや大振りながらも持っていた鞄は通勤鞄のようであったし、学生時代はとても想像できなかったスーツ姿が、随分と様になっている。
「あれ? 汐ちゃんは?」
「ああ、ちょっと古河家に行ってる。なんか大荷物を担いでいたから、たぶん泊まりだろう」
「ふぅん……」
「そう残念そうにするな。汐がいない分――」
 俺は、台所の戸棚からそれを取り出して、ちゃぶ台の上に置いた。
「これがあるからな」
「お、結構いい酒じゃん」
 にやりと笑って、春原。
「酒の銘柄、わかるようになったのか」
 冗談混じりにそういうと春原はにやにや顔を崩さずに、
「そりゃあ、が――おおっと、若い頃は安酒ばっかりだったけどさ。最近はちょっと奮発してみたりしているんだよ。最初は芽衣のやつに『もったいない!』って怒られたけど、ちょっと飲んでもらったら、ときどきならOKって言ってくれるようになったしね」
「……そういや、芽衣ちゃんも飲める年齢なんだよな」
「だいぶ前からだけどね。それに、汐ちゃんだってあと一年さ」
「――あと一年か」
 どうしても、感慨深くなる。後一年で汐は二十歳――色々な想いが、胸中で渦巻いていた。
「ま、それはさておき飲むとしよう」
「そうだね、夜も遅いし」
 俺の考えていることを察したのか、春原はそれ以上なにも言わず、それのそばにどっかりと腰を下ろす。
 俺は俺で、コップをふたつ用意し、それぞれになみなみと酒を注いだ。
 そして、どちらからともなく、コップの縁をそっと打ち鳴らす。
「ススキに月見だんご……風情だねぇ」
 ちゃぶ台の真ん中に置かれたものに目をやって、春原がそう呟いた。
「若いときは気にも留めなかったけどな。最近になってわかるようになってきた気がするんだ」
「ああ、僕もだよ」
 どこか遠くを見るように、目を細めて春原。そして月見だんごをじっと見つめ――、
「あれ、これ……だんご大家族じゃん。どこに売ってたのこんなの」
「だんご自体は普通のものだよ。それに俺と汐とで顔を描いたんだ」
「あー、なるほどねぇ……」
 昔――渚に大量のだんご大家族を自作して渡したこと――を思い出して、作ってみたのだ。当時は割と大変な作業だったが、ふたりでやればそれほどでもなかった。
「汐ちゃんもだけど、渚ちゃん大好きだったもんね。だんご大家族」
「ああ。あいつが遺したものの半分は、それ絡みなくらいだからな」
 そして、それらの大半は今汐のものとなっている。
「そいつは懐かしいね。それにしても――」
 外の月を眺めながら、春原は呟く。
「こうやってさ、渚ちゃんと飲みたかったかな」
「そうだな……」
 俺も同じようにしながら、酒を飲む。
「でもあいつ、一杯でべろんべろんだったからなぁ……」
「はは……それはそれで見たかったよ」
「いや、あれは俺だけの特権な」
「妬けるねぇ、この」
 春原の肘を、俺が軽く受け流したそのとき――家の電話が、けたたましく鳴り響いた。
 思わず、春原と顔を見合わせる。なんだろうか。緊急の仕事なら携帯電話の方にかかってくるはずだが。
 とりあえず、受話器を取り上げる。
「はい、岡崎ですが――」
『小僧か!? いますぐうちに来い! ウサギが、ウサギが……うおおおおおおお!』
 そこで、電話は唐突にきれた。
「なに、今の」
 受話器から漏れるほどであったオッサンの大声に、春原がそんな感想を漏らす。
「なんかよくわからんが……一緒に来るか?」
「そうだね、酔い醒ましの散歩としゃれ込もうか」
 なかなか粋なことを言う春原と一緒に、古河パンへと向かう。
「こんばんはー。早苗さんいますか? なんかオッサンがウサギに襲われたみたいで……」
 そう言いながら、灯りのともった店舗に入ると――。
「いらっしゃいませー! 古河パンによーこそ!」
「ですよっ」
 ば、ば、ば、ばばば、
「バニーガール!?」
「バニースーツ!?」
 口々に、俺と春原。そう、そこには一部の隙もなくバニーガールの格好をした汐がいたのだ。……その、早苗さんも。
「汐おまえ、なんて格好を――」
「大丈夫大丈夫! 網タイツより目の細かくて、なおかつ布地が厚めのストッキングだから、多少ハイレグでもそれほど恥ずかしくないし!」
「本当ですねっ!」
 いやいやいやいや!
 どうも最近の汐は、肌の露出を抑えるのには熱心でも、ボディラインを隠すことを忘れているような気がする。……遺憾なことに、早苗さんも。
「早苗さんまで――なんでまた?」
「それはですね……うさぎは、ひとりだととっても寂しいからですよっ」
 全く答えになっていなかった。
「た、たすかった……危うく汐の目の前で早苗を押し倒すところだったぜ――」
 奥の方から、燃え尽きた様子でオッサンがそう呟く。自重しろ! と言いたいが、その気持ち、わからなくでもない。
「岡崎はいいよね……汐ちゃんをコスプレさせ放題なんだからさ……」
「おいその誤解を招く表現はやめろ」
 杏あたりが聞いたら、動けなくなるまで辞書を投げつけられそうでかなわない。
「まぁそれはともかく――」
 俺と春原に何かがのっかったカナッペを手渡しながら、汐が言う。
「せっかくのお月見なんだから、みんなでパーッとやりましょ。もうすぐ藤林先生や師匠、ことみちゃんやふぅさんも到着するから」
「ば、バニーでか?」
「いや、さすがにそれはしないから。こっちで着替えてもらうつもりだけど」
 それでも十分だった。
「なに、もしかしておとーさんも着てみたい?」
「いや、全力で遠慮する」
 そんなものを見ても誰も喜ばない……はずだ。
「ま、これはこれで――」
 はやくも立ち直った平静さを取り戻した春原が、口の端で笑って言う。
「楽しむと、しますかね」
 ちがいない。俺は黙って頷き、それに答えたのであった。



Fin.




あとがきはこちら









































「どう朋也、似合うでしょ?」
「お、おう」
「さすがにこの年だと、ちょっと恥ずかしいな」
「いや、気にすることはないと思うが」
「いくつだろうとなんだろうと、恥ずかしい格好なの……!」
「あ、うん。それがたぶん正常な感想だと思うが」
「風子、対照的です」
「ああうん、でもまぁいいんじゃないか?」



「……あー、いいなぁ。私も混ざりたかったですよ、岡崎さん」
「そういう芽衣ちゃんは、彼氏できたか?」
「も……! ももも、もちろんですよ岡崎さん! こ、この年でいないわけないじゃないですか! あ、兄をかけたっていいですよ!」
「いや、いらない」
「つっこむところそこかよ岡崎っ!」



「ど、どうですか? 朋也くん」
「お、おう――その……似合うよ、渚」
「う、嬉しいです。恥ずかしい格好をして良かったです……」
「うわーい、娘のわたしもびっくりのラブラブ空間だー」











































あとがき



 ○十七歳外伝お月見編でした。
 バニー、良いですよね……(遠い目で)。
 さて次回ですが、礼によって未定です;

Back

Top