超警告。Rewriteの全シナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。
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「天王寺! 最初が肝心だというのに、これは一体どういうことなの!?」
「あー、会長出番無いですね……」
「私もないですー! どうなっているんですかー」
「いやまぁちはやはちはやだから」
「瑚太さんや、あたしもかい?」
「本来なら出るべきなんだけどなぁ」
「……まぁいい。出番というものは今後出てくるだろう」
「さっすが委員長、マジクール!」
「では、出演してくる」
「「「「な、なんだってー!?」」」」
「言ってなかったのか、静流」
「……言い忘れてた」
「では――」
「……うむ」
古く、それでいて使い込まれたテーブルを挟んで、俺、天王寺瑚太朗とアンティークショップ『フォレスト』のオーナーである江坂さんは、お互い深く頷いた。
いつものように、俺はオカ研ことオカルト研究会のブログに乗せるネタ集めで、江坂さんのお店『フォレスト』にお邪魔していた。だが、『フォレスト』――というか江坂さんからいつも役に立つネタを提供して貰えるわけでもなく、
「ンマーイ!」
「うむ! やはり山葉堂のワッフルは最高だな……」
こうやって遠くから取り寄せたスイーツを堪能する位のことしかなかったりする。
……正直、俺がこうして此処にいることは、江坂さんの仕事の邪魔だろう。
けれども、何処か懐かしい気がして俺はこの店にこうやって足を運ぶことが多かった。まぁ『フォレスト』は、あまり客の出入りがない。というかほとんどない。
だからこそ、俺達はこうやって店の一角で甘味を楽しんでいるわけだが――。
「ちーす。江坂さんいますー?」
「……え?」
『あったかもしれない、”同窓会”』
「今宮さん……?」
店を訪れたのは、ここ風祭市の路地裏でフリーマーケットを取り仕切っている(らしい)今宮さんだった。
「お、天王寺君じゃん。珍しいとこで会うもんだ」
かけていたサングラスを無造作に畳んでポケットにしまい、今宮さんはそんなことを言う。
「今宮さんこそ、どうしてフォレストに?」
江坂さんのフォレストは、アンティークを扱う店だ。今宮さんのフリマとは、いまいち接点が思いつかない。
俺のその疑問は顔に出たのだろう。それを察した今宮さんは少しだけ苦笑すると、
「あー、いや。ここって高級アンティークって趣だけどさ、別のアンティークも置いてある訳よ。そいつを引き取りに来たってわけ」
「別のアンティーク?」
「古くて、丈夫なもののことだ」
静かに立ち上がりながら、江坂さんがそう言う。そして、店の奥にあった大量の引き出しがついたタンスのようなものから、少しくすんだ金属製のスプーンを取り出して、俺に見せた。
「天王寺君、君はこのスプーンが何年前のものに見えるかね?」
江坂さんから色々教えて貰っているが、俺にはまだアンティークに対する審美眼が備わっていない。それは江坂さんもわかっているから、多分見たままの印象を求めているのだろう。
「そうっすね……十年ぐらい前ですか?」
正直、少しぼろっちいスプーンだった。
「ふむ、君にはそう見えるか」
「違うんですか?」
「うむ。このスプーンは――八十年前のものだよ」
「は、八十年!」
俺どころか、俺の親も生まれていない。もちろん、江坂さんでさえも。
「じゃあこれ、すっげえ高価なものなんですか?」
俺がそう訊くと、江坂さんは思わせぶりに笑って、
「そうだな。……まぁだいたい、100円くらいだ」
「ひゃ、100万――って万ついてねえっ!?
100円ショップで買えるお値段だった!
「もしかして、超お値打ち品!?」
「いや、特に特殊な金属、貴金属で作られたものではないからな。特に精密な細工を施しているわけでもないし、妥当な価格だろう」
それでも江坂さんにとっては同じ商品なのだろう、普段の商品を取り出すときに使う白い布の上に載せたそれを、江坂さんは丁寧に元の場所に戻した。
「そういうものなのだよ。古くても使い続けられているもの。それもある意味、アンティークなのだ」
使われることもなく、戸棚にずっと仕舞われているものに、何の意味があるだろう。江坂さんはそう言う。
「ま、そういうものも江坂さんのところに来るから、こうして俺がフリマで売りさばいているってわけ。そういうの、ここの店じゃちょっと売りにくいでしょ」
と、今度は今宮さんは説明してくれた。
「まぁ今宮はこんな格好の男だが、これらを必要とする人間を見抜く力がある。だから私も、彼を信用してこのような商品を預けているのだよ」
と、江坂さんが話を締めくくる。俺はただ感心して、頷くだけだった。
そこへ――、
「じー! 遊びに来た」
「おじゃましまーす」
「静流君に、西九条君か。今日は千客万来だな」
何処か嬉しそうな様子で、江坂さんがそう呟く。
「お忙しいところ、済みません――あら?」
「おーす! お久しぶり」
きょとんとする西九条先生に、今宮さんが片手をぶんぶんと振った。
「今宮さん、西九条先生とお知り合いなんですか?」
俺がそう疑問を口にすると、
「んー、まぁちょっとな。この店の常連同士ってやつ? な?」
「そうねぇ――まぁ、そういうことにしておこうかしら」
「おわー、冷たいねぇ……」
「へぇ……もしかして、恋人同士とか――」
「それはないわよ、天王寺君」
茶化したつもりでそう言ったのだが、西九条先生のその否定に一秒もかからなかった。ついでに言うと、その瞬間だけ妙に周囲の気温が下がった気がする……。
「かーっ、冷たいねぇ」
でもそれは俺の気のせいみたいで、今宮さんはひたすら軽い口調でそんなことを言っていた。もしかすると、ふたりの間ではいつも通りのやりとりなのかもしれない。
「あら〜、そんなことないわよー」
いつも通りのおっとりとした口調で、西九条先生。その様子を見るにつけ、先ほどのことは錯覚であったのだろうと思う。
「フフ、揃ったか……。全員は、久方ぶりのことだな」
江坂さんの一言で、今宮さんと西九条先生は少しだけ目を伏せた。
けれど、それはほんの一瞬。俺でないと、気付けないくらいの刹那だ。
「……なにがです?」
だから、俺はそれに気付かない振りをしつつ江坂さんにそう訊いていた。
「フフフ……まぁ、昔の話だよ。皆、少し待ちたまえ。すぐに紅茶を用意させよう」
そう言って江坂さんが手を叩くと、すぐさま全員の紅茶が用意される。
「そういや、調子はどうよ、天王寺君?」
出てきた紅茶に砂糖とミルクをたっぷりと入れて飲みながら、今宮さんはそう俺に訊く。
「デジカメも学園生活も順調ですよ」
「いいでしょあのデジカメ。無理な倍率のズームがついていないから望遠でも広角でも綺麗に撮れるとことかさ」
「そうっすね。下手な安物や携帯のだと何処を押せばいいのかわからなくなるけど、あのカメラはそこら辺がちゃんと計算されているから扱いやすいです。そう言う意味で本当に助かりました」
「いいっていいって。礼はあのカメラを売ってくれた奴にな。礼はいらねえとか言うけどさ、あいつ結構そう言われるの結構好きなんだよなー」
「ツンデレっすね」
いかにも道を極めたって感じだったけれど、人は見かけによらないものだ。
「そう言えば天王寺君って、静流ちゃんと仲良いけど――どこまで進んでるのかしらー?」
「「ブフッ!?」」
唐突にそんなことを言った西九条先生に、俺と、何故か今宮さんが同時に紅茶を吹いた。
「て、天王寺君? お前さん、静流お嬢ちゃんと――」
「そ、そんなことありませんって! そりゃ、静流は大事なオカ研の仲間ですけど……」
「仲間、か――」
何故か少し残念そうに、静流。
「っていうか今宮さん、静流とも知り合いだったんですか?」
「そりゃ、この店で顔会わせてりゃね」
「そうなのか? 静流」
今宮さんを疑うわけではないが、静流にもそう訊いてみる。すると当の本人は『うぬは何を言っている? 当然であろう!』とばかりに頷いて、
「いまみーは、じーと友達で、とーかとも友達だ。なら、私とも友達だろう」
「……なるほどな」
正直、その考え方が羨ましく思える俺だったりする。
「そーれーで〜」
そこで一息ついたのが不味かった。その隙を、西九条先生が突いてきたからだ。
「天王寺君は、誰か好きな人が居るの?」
「いいや、いやいやいや、居ませんよ!?」
どう考えても、もろばれだった。
「ことりのことか」
『さすがの我も、あれには勝てぬ……』と言った面もちで、静流がそんなことを言う。
「ことり? 神戸さんのこと?」
「え、あ、まぁ……」
もう、頭の後ろを掻いて誤魔化すことぐらいしかできない。
「まぁ、一回振られているんですけどね」
「なに言ってるのよー天王寺君、それでも毎日ああやって一緒にいるんだから脈はまだあるってー」
「そうそう。男が一回振られたくらいで諦めちゃ、駄目だっての。それだけはやっぱ、玉砕覚悟が必須じゃん?」
大人ふたりが、まるでクラスメートか何かのように猛烈に俺をプッシュする。
「そういう今宮さんと西九条先生はどうなんですか?」
たまりかねて、俺はそう無茶ぶりをしてみた。でもよく考えたらふたりとも見た目は立派な大人だ。そう言う話、ひとつやふたつはあるだろう。
「俺……?」
「私ー?」
俺の様相に反して、お互いみつめあったまま、今宮さんと西九条先生はしばらく静止する。
「わりー、そういうのないわ。こちとら今やっていることが精一杯でね。それどころじゃねーって感じ?」
と、今宮さん。
「そうねぇ……私もそんな感じかしらー」
おとがいに指を当てて、西九条先生もそんなことを言う。
「そうですか……まぁ、なんですね――」
頬杖をついて、俺は言う。
「本当、みんな元気そうで安心したよ」
うん……?
「……天王寺?」
「……天王寺、君?」
「――え? あ、あれ?」
俺、なんか今すげー変なこと言わなかったか?
「す、すいません……西九条先生や今宮さんにタメ口みたいなしゃべり方しちゃって――」
まるで、今宮さんや西九条先生とずっと前から友達だったみたいに言ってしまって。
「……いいってことよ、勇者先生!」
「なんすかその呼び方!」
何処のライトノベルの主人公だ、っていうか俺のこと!?
「先生……せんせい、ゆるしちゃんだからっ!」
「だぁぁ……どうして涙ぐんじゃうんですか、西九条先生! わけわかんないっすよ!」
なんだかよくわからないが、今宮さんも西九条先生も笑顔だった。
■ ■ ■
「なんだかよくわからないが」
皆の席から少しだけずれて、紅茶の入った自分専用の湯呑みを両手で持ちながら、静流がそう呟いた。そして、瑚太朗と新と灯花が和気藹々愛としている様子に目を細めると、
「とーかといまみーがこんなに嬉しそうにしているのを、初めて見た」 そんなことを呟く。
「ふっ、そうだな……。覚えておきたまえ、静流君」
と、同じく目を細めて宗源は言う。
「これが、絆と言うものだよ」
Fin.
あとがきはこちら
「魔法の第三惑精クリーミィ☆かがりん、みなさんの声援を受けて華麗に登場! ……って、あれ?」
「……なにやってんの、篝」
「此処は――まさかの欄外!? 篝ちゃんショックです!」
「本編に出てきて何する気だったんよ、お前……」
「それはもちろん、謎の転校生として風祭学園に通い、有事の際には魔法の第三惑精クリーミィ☆かがりんに変身して、学園とか風祭市とか地球を救う所存です。っていうかむしろやる気満々です。ゲーム本編じゃ滅ぼしているばっかりでしたので」
「そういやデストロイな毎日だったな……」
「というわけでクリーミィ☆かがりんはその圧倒的な力で悪を消し去ったり、中津静流を砲撃で吹っ飛ばした後抱きしめて和解して無二の親友になったりします」
「絡みにくいネタはやめろっての」
「スターライトブレイカーの『ライト』を外すと、篝ちゃんの技っぽくなりませんか?」
「スターブレイカーじゃ星壊しちゃうだろ。どうせならスターピープルブレイカーにしておけよ。っていうか、その場合の俺のポジションは?」
「何かある度に『なん……だと……!』を言うポジションなんかが妥当でしょう」
「なん……だと……! っておい」
「まぁそれはともかく篝ちゃん、しばらくは居座るつもりですので、フォローよろしくお願いします」
「居座るって、なんでなんよ?」
「だって、どうせ篝ちゃんが欄外じゃない方に出てくるのに、時間がかかることが目に見えていますから」
「最初っから最後までメタなのな……」
あとがき
というわけでRewriteを始めました。いきなりしんみりシリアス気味ですが、しばらくはそういう路線が多くなるんじゃないかなと思います。或いは、クリーミィ☆かがりんでw。