超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
ブラウザのバックボタンで戻ってください。

このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

それでも読む方は方はここをクリックするか、
ガンガンスクロールさせてください。







































「さぁ汐、折角の猛暑だから読者サービスだ!」
「読者サービスって……水着はもうやったよ?」
「くくく――もうひとつあるんだよ。涼しげなのがな……」
「……朋也くん、ちょっとお話しましょうか」









































































































  

  


「拝啓お父様、わたくし岡崎汐は……もう、暑さの限界値です」
 久々の猛暑に、我らが岡崎家は陥落寸前だった。
 路面の空気が歪み、彼方の風景も歪み、アスファルトも処によっては物理的に歪んでいる炎天下の八月。一言で済ませるなら、暑い。これしかない。
「大丈夫だ、問題ない。……俺もそろそろ限界だからな」
 扇風機から送られてくる風は、既に熱風になっている。それでも無いよりはましと言うことで、私達父娘は親鳥から餌をもらう雛鳥のように、扇風機の前にふたり並んで張り付いていたのだった。
「そろそろクーラー入れようよ」
「そうしたいのは山々なんだけどな……室外気をこの広さに部屋に設置するのにはちと勿体無くてな。でも、この暑さなら来年までに用意するか」
「……それ、去年も同じこと言ったからね」
 流れる汗すら拭わずに、わたし。
「そうだっけか?」
 同じく額からの汗をそのままにして、おとーさんが首を傾げる。
「そうそう。で、当面はどうする?」
「水風呂でも浴びるか……先に入ってこい」
「はーい」



『夏の日の、水煙の中で』



 力強いシャワーの水流と、それがわたしの身体や風呂場の床に弾けて飛んだ細かい水の飛沫が舞い、辺りは水煙に覆われていた。
 水温は28度。熱くはなく、冷たくもない、あえて言うなら、涼しい温度。
 所謂、水風呂代わりのシャワーである。
 ちょっと前ならかなり勿体無い行為であったけれど、数年前に高速濾過が可能なシャワー用リサイクル装置が普及してからは、それほど水道代にダメージを与えることが無くなっていたのだった。
 わたしは手早く身体と頭を洗うと、水量を最大にしてシャワーを浴びる。こうして目を瞑って頭からシャワーを浴び続けていると、まるで水の流れの中を泳いでいるような気分になって、かなり気持ち良いからだ。
 ふと自分の身体を見下ろし、想う。
 我ながらまぁ、良く育ったものだ、と。
 ……多くの人の信頼できる証言と、同じく充実している写真、そして数少ないわたし自身の体験により、今のわたしは当時のお母さんよりスタイルが良いことがわかっている。
 いや、スタイルを自慢したい訳じゃない。わたしの周りにはことみちゃんや美佐枝さん、坂上師匠や早苗さんと、わたしよりスタイルがめちゃめちゃ良い人達がたくさん居るのだ。
 だから、わたしの言いたいことはそうじゃない。
 わたしが言いたいこと。それは――わたしの年齢が、わたしを産んでくれたお母さんの歳に近付いてきたということだ。
 それは、十分育ちきって(多分これ以上成長することはあるまい。多分……)、自分の身体が大人になったと自覚したとき、唐突に生まれた感情であった。
 子供の頃はもちろんおとーさんと一緒に入っていた。
 それがひとりになったのはもちろん、それまでは直線で構成されていた身体が曲線を描くようになったから。その当初は寂しい想いと恥ずかしい感情がぶつかり合って、随分と悩んだ憶えがある。
 でも、中学生になるとさすがに恥ずかしさの方が勝り、高校生にもなると恥ずかしさ云々より、そうするのが当たり前という考え方になっていた。
 そうして今のわたしはとうと――と、言う訳だ。
 もう一度、水煙に覆われた自分の身体を見下ろす。
 早苗さんは、わたしの年にはもうお母さんをその身に宿していたそうだ。
 そして、来年にはお母さんがわたしを身籠った歳となる。
 なんだか、とっても不思議な気分がした。
 ずっと子供だと思っていたけど、わたしはもう子供が産める年齢になっている。
 シャワーを浴びたまま、そっと下腹部に手を添える。
 生まれてくる子供が宿るのは、この辺りであろうか。
 ――早苗さんは、無事にお母さんを産めた。
 ――お母さんは、わたしを産むことが出来た。
 ……わたしは、どうなのだろうか。
 もちろん、結婚はおろか恋愛すら未経験のわたしだから、それは所謂杞憂なのかもしれない。
 けれども、今のうちに考えておいた方がいいのかもしれないと頭のどこかでそう思うのだ。
 ――身体が十分冷えてきた。そろそろ出た方がいいみたいだ。



 身体と髪を良く拭いて居間に戻ると、おとーさんが窓辺に何かを吊していた。
「お風呂出たけど……なにをしているの?」
「ああ、遅くなったが風鈴を飾ろうと思ってな。こうすれば、少しは涼しく感じ――って、なんでお前、下着姿でっ!」
 こちらの格好を見て、おとーさんはびしっと指を突きつけてくる。
「違う違う。上はタンクトップで、下はマイクロスパッツ。タンクトップはわかるでしょ? マイクロスパッツっていうのは、ミニのスカートでも穿いているのがわからないくらい丈が短いものなの」
 そう解説をするわたし。タンクトップはともかく、マイクロスパッツの方は色々と役に立つので良く着用していたりするのだが、こうしてそれだけを着用してるのは、思えば初めてのことであった。
「ならまぁ良いが……なんか体温上がっちゃったんだが」
「丁度良いんじゃない? よく冷えると想うから」
「お前なぁ……まぁいいや。行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
 今度はおとーさんが、お風呂場に消える。
 わたしは、窓辺によるとその風鈴を指先でつついてみた。
 なるほど、その澄んだ音色は確かに涼しくなった気がする。
 もう一度だけ、風鈴をつつく。
 その綺麗な音で、わたしの悩みはいくらか和らいだのであった。



Fin.




あとがきはこちら










































「あれ、よく考えたらシャワーシーンって今回が初めて?」
「の、ようだな(録画……しておくか?)」
「そんなことより、風子、ずうっとスレンダーなままなんですが」
「ああ、えっと……わたしが中学生の頃に、色々追い抜いちゃったよね」











































あとがき



 ○十七歳外伝、シャワーシーン編でした。
 それなりに長くやってきたものですが、シャワーシーンは何気に初めてですね^^。
 さて次回は……例によって、未定です;




Back

Top