超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
ブラウザのバックボタンで戻ってください。

このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

それでも読む方は方はここをクリックするか、
ガンガンスクロールさせてください。






































「中学生の頃のわたしか……なんだか懐かしいなぁ」
「ああ、そうだな」
「色々あったっけ。超電磁砲ぶっぱなしたり、魔法少女になったり、汎用人型決戦兵器に乗ったり……」
「ちょっと待ておい」





























































































  

  


 明けて、四月。
 その日を翌日に控えて、俺の娘である汐は妙にそわそわしていた。
 俺はというと、特に何も言わずにそんな汐を眺めている。浮ついてしまうのも仕方がないと、わかっていたからだった。
 やがて、汐が壁に掛けれている埃よけのシートに覆われたハンガーを手に取り、慎重に畳に置くと、おそるおそるといった様子でファスナーを開ける。
 中には、おろしたての制服が一式収まっていた。
 汐はそれを手に取り、しげしげと見つめる。
 やがてため息をついて、いそいそとそれを仕舞う。
 かれこれ、五回も繰り返している光景だった。



『風に翻るプリーツスカートを眺めて』



 本当に、無理もない話だと思う。
 なにせ、明日は中学校の入学式だ。緊張しない方がおかしい。
 白状してしまえば、俺だって内心少しばかり緊張しているのだ。保護者である俺でさえこうなのだから、当事者である汐にとってはなおさらだろう。
 で、その汐はというと、また自分の制服を取り出して、じっと見つめている。
「そろそろ着てみたらどうだ?」
 思わず見かねてしまい、俺はそう声をかけていた。
「え、でも……」
 畳にぺたんと直接座っていた汐が、明らかに悩んでいる貌で俺を見る。
「どうせ明日には嫌でも着ることになるんだ。今着てみたっていいだろ?」
 そんな愛娘に、そう助言をしてやる俺。すると汐は、
「あ、そうか……うん、そうだね」
 前に踏み出せないときに背中をそっと押してもらったような、安心した笑顔を浮かべて、
「それじゃ、着てみるね」
 そう言って、ごそごそと着替えだした。
 ……む。
 そろそろ、服を着替えるときには脱衣場を使うように伝えなければならないのかもしれない。
 幸いにして五年生辺りから下着の上にスリップを着るようになってくれたから、視覚的にはまだまだ大丈夫だったりするのだが、もう少し身体のラインがはっきりするようになれば、そうも言っていられなくなるだろう。
 って、何故俺は娘の着替えをじっと見ているっ。
 自己嫌悪に陥って、背中を向ける。
 幸い汐は、はじめての制服を着ることに集中しているせいか、俺の視線が向いていたことも、そこから逸らしたことにも気付いていないようで、拙いながらも(いや、初めて着るので慣れていないのか)順調に着替えていく。
 何故、見ていないのにわかるのかというと、衣擦れの音を遮る手段が無いからだった。流石に耳を塞ぐとおかしいので、そちらの方は黙って聞くことにする。
 しばらく経って――。
「どうかな……パパ」
 その声に振り返ると、汐はセーラー服――中学の制服――に着替え終わっていた。
「変なところ、ない?」
 セーラーのタイを整えながら、汐。
 ……これ、は。
「あ、ああうん。すごくいいぞ」
「そう? ありがと」
 嬉しそうに微笑む汐に、俺も笑顔を返す。
 けれど、内心では汗を拭いたいところだった。
 ――正直言って、見違えた。
 俺にとっては、汐が急に成長したように見えたのだ。
 ただ、中学の制服を着ただけなのに。
 ただ、小学生から中学生になっただけなのに。
 その変化の差に、驚いてしまう。
 こういうものは、見た目も大事だということなのだろうか。
 或いは、制服を着るというその行為が……。
「どうしたの? パパ」
 少しだけ思考が顔に出てしまったのだろう。汐が不思議そうに首を傾げる。
「あ。いや、汐も大きくなったんだなって思ってさ」
「そ、そうかな……ありがとう、パパ」
 はにかみながら、そっぽを向く汐。そういうときにあらぬ方向を見るのが、自分で言うのもなんだが俺によく似ているところだった。
「なぁ、汐」
「ん?」
「ちょっとくるっと回ってみてくれないか?」
「回るって……えーと、こう?」
 その場で、汐がゆっくりと一回転した。
 この頃はまだそれほど長くなかった髪とプリーツスカートがふわりと膨らんで、静かに戻る。
「よし、じゃあ次は爆転な」
「……出来るけど、この格好じゃいや」
「出来るのかよ。すごいな、お前」
 いつのまにそんなに身軽になったのだろうか。末恐ろしい話だった。「でも良く似合っているな。可愛いぞ」
「か、可愛いって――」
 頬に両手を添えて、おもいっきり照れている。その様子は、かつての渚を思い起こさせるものだった。そういうところは、母親似でもあるのだ。
「……あ、そうだ」
 そこで思い出したかのように、ぽつりとそう呟く、汐。
「ん?」
 首を傾げる俺を余所に、汐は箪笥の前で、さっき俺に見せてくれたようにくるりと一回りする。。
「――どうかな、ママ」
 ……なるほど、そういうことか。
 箪笥の上には、渚の写真がある。俺だけだと悪いと思って、汐はそうしたのだろう。
 その気遣いが、嬉しかった。
「なんだったら、入学式に持っていくか? その写真」
 と、提案してみる俺。まぁ持ち歩くと言っても、写真立ての中から出して、背広のポケットに仕舞うつもりだが。
「ううん、そこまでしなくてもいいよ」
 やんわりと、そう断る汐。
「でも、出来れば入学式の後、ママの処に行ってもいいかな?」
 異論など、あるはずもない。
 俺は、大きく頷いてそれに応えたのだった。



Fin.




あとがきはこちら










































「あー、なんか違和感あると思ったら、おとーさんの目の前で着替えていたんだった!」
「はっはっは。もう時効もう時効」
「あうぅぅぅ、なんだか恥ずかしい……」
「でもセーラー服のしおちゃん、とっても可愛かったですっ」
「そう言われると、もっと恥ずかしい……」











































あとがき



 ○十七歳外伝、中学入学編でした。
 元々最萌支援用に用意していていたのですがその支援の機会が無く、そのままお蔵入りになっていたのを、この機会にと全体的に書き直してみました。
 制服を着るというのには、色々と意味がありそうですが、個人的には、今まで年中男らしい格好をしていた近所の幼なじみが、制服を着ることにより女の子っぽくなって急に意識してしまう……というシチュエーションが大好きでありますw。
 中学の制服は特に考えずセーラーにしたのですが、セーラー服の○……意外とありですね。っていうかよく考えたら幼稚園の園服もセーラーっぽいですね。名前もそれっぽいし、もとよりセーラーが似合うのは当たり前かもしれません。
 さて次回は――何にしようかな。



Back

Top