超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。
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「春ですね……」
「うん、そろそろ化けて出てきたら?」
「つくしか何かのように言わないで下さいっ」
風が、ふんわりと暖かくなってきた。
「春だね」
朝ご飯の片づけをしながら、汐がそんなことを言う。
「ああ、そうだな」
新聞から顔を上げて、俺。今は梅の花が咲き誇っているし、なにより桜の蕾が薄紅色に色付き始めている。
「どこかに出かけたいね」
「そうだな」
時刻はまだ早い。今から準備すればそれなりに遠出が出来そうだった。
「じゃあ、デートしよっか?」
「お前なぁ……」
『岡崎家の、デート』
「いいじゃない。デート」
さらっとそんなことを言う汐。
「お前な……もうすぐ二十歳なんだからそういうのは堂々と言うなって」
と、俺。
「いいじゃない。別にお母さんは怒らないと思うよ?」
と、腰の辺りを越えた長い髪を、うなじ辺りで束ねながら、汐はそんなことを言う。
――まぁ俺も、そう思う。近頃の汐は何というか……大人になっていた。元々冷静な方だったが、このところはそれに沈着さというか、貫禄も加わっているように見えるようになっていた。
だから、汐の言う『デート』も、恋愛的な響きはこれっぽっちも感じられない。これはただ単に、父娘ふたりで何処かに行きたいという意思表示なのだ。
だから、俺の答えはもう決まっていた。そもそもデートという言葉にいちいち動揺していたら、あいつに笑われてしまう。
「わかったよ。行こう」
「ほんとっ!?」
汐の貌が、ぱっと輝く。
「ただし――」
立ち上がり、箪笥を開けながら、俺。目的のものはすぐに見つかり、それを手に取る。
「こいつを被っていけな」
そう言って、俺はそれを汐の頭に被せてやった。
「麦わら帽子?」
上目遣いになって帽子の鍔見つめつつ、汐。
「ちょっと早いけど、良いだろ」
「――うんっ」
それが元々誰のものであるかに気付いたのだろう。汐が嬉しそうに頷く。
「ねぇ、それじゃ何処に行く?」
「そうだなぁ……」
お互い出かける準備をしながら、俺達。
さて、何処に行こうか。
久々にあいつの処に行ってもいいし、海を見に行ってもいい。
行き先を、春風に訊くのもいいだろう。
そう思えるくらい、麗らかな春の一日が始まろうとしてた。
Fin.
あとがきはこちら
「えへへ……三人でおでかけです」
「わたしの頭にのっかっているっていうと、なんか魔法少女のお供みただけどね」
「しおちゃん、わたしと契約して魔法少女になりますか?」
「こらこら、母娘で恐い喧嘩するんじゃない……」
あとがき
○十七歳外伝、春のおでかけ編でした。
予告通りの回想編の前に、ちょっと明るい話を書きたくなって、ほとんど即興でこういう話が出来ました。
さて次回は……前回の予告通り、回想編で。