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このお話は、AngelBeats!最終話話まで視聴されていること前提で書いてあります。

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「むふー……」
「あら、今回はラジオお休みなの? っていうか何悩んでいるのよ」
「あー、いまやっている魔法少女ものであたしの中の人が出ているんですけど、いつ死ぬか心配でして」
「生死を気にしなきゃならないなんて、どんな魔法少女ものよ」
「最近は結構多いですよ?」
「ま、それはいいとして、別にいいんじゃないの? なんせあたし達はもう死んでいるし」
「あっはっは、それもそうですなっ!」

「なんか物騒なこと言ってね? あのふたり」
「ああ、そうだな……」





























































































  

  


 夕食を終えて対天使用作戦本部に戻ってきた音無は目を疑った。
 いつもであれば中央奥にゆりが陣取り、いつものメンバーが集うブリーフィングルームの様相ががらりと変わったいたからである。
 中央奥にゆりが居る。それはいつもと変わらない。
 が、PCのキーボードを猛烈な勢いでたたいているのは竹山ではなく読書用とおぼしき眼鏡をかけた遊佐であったし、いつものソファーで銃の分解整備をしているのは、野田や藤巻などの男性陣ではなく、ユイ、関根、ひさ子らガルデモの面々であったのだ。



『女子会したって、いいじゃない』



 基本、SSS(真・ソニック・ショートケーキ。先週からそのように呼ばれている)の戦闘要員は男性中心である。
 それは戦闘力云々という訳ではなく、女子に格好悪いところみせられるかよ、というある意味子供っぽい感情であったが、音無には微笑ましいものであった。
 だから、本部にに集まるのは大抵男衆中心であるのだが……。
「それで、物資の輸送ルートは掴めたの?」
 いつもの通り白いベレー帽を着用して、ゆり。
「はい。校舎地下一階の通路から地上一階に上がった後、想定していたコース3を通って大食堂に移動しているようです」
 PCの入力に忙しい遊佐に代わってか、ゆりの隣に控えていた入江がそう報告する。
「そう。それで物資の中身は?」
「遊佐ちゃん」
「はい」
 入江の求めにより遊佐がキーボードのキーを一際強めに叩く。するとブリーフィングルームのスクリーンにいくつかの段ボールが表示された。
「物資A、物資B、物資C共に確認出来ました」
 と、関根。
「最大の障害となる天使の動きはこっちで補足済み。今は校内を見回り中みたいだよ」
 ひさ子がそう言う。
「例え窓から飛び降りたとしても、校舎間の移動にはどうしても時間がかかる。ましてや今回は三棟移動しなければならない。その間に事は片付くだろう」
 締めくくるように、椎名がそう言った。彼女は普段から居るが、作戦に対してここまで発言することは極めて稀である。
「OK、そういうことなら問題はないわ」
 座っていた椅子から静かに立ち上がり、ゆり。
「オペレーション『チャーリー&ジョニー』、決行よ」
 いつになく強い空気を放って、女子一同が一斉に頷く。



「……なんだこれ?」
 硬直していた音無の肩越しで、日向がそう呟いた。音無と同じく、食堂から夕食を終えたその帰りである。
「……誰だこれ?」
 いつもと全く違う女性陣に混乱したのか、藤巻がそう言う。
「いや、何か女性陣がやる気満々なんだ。なんでなんだかよくわからないが――」
 と、困った様子で二人の方に首を向け、音無。
「何か悪いもの食ったかな」
 割と真面目な表情で、藤巻が心配そうにそう言う。
「ユイの奴じゃあるまいし――ってかそのユイは――」
 心配そうに部屋の中を見回す日向であるが、彼の心配は杞憂に終わった。ソファーに座っていたユイが、静かに高笑いを始めたのである。
「はっはっは。後はガチで落とすのみですなっ」
 と、不敵な笑顔のまま、ユイ。
「邪魔する奴らはぎったんぎったんにのしてやりますよ!」
 中指をおっ立てんばかりの勢いで拳を握り、そんなことまで言う。
「……良かった。あいつは平常運転だな」
「どういう意味だーっ!」
 弾かれたかのように入り口――音無達が身を潜めて覗いていたところ――に向かって叫ぶユイ。続いて、室内にいた女子全員の視線がその後を追う。
「ど、どーすんだよっ」
 と、小声で藤巻。
「ま、こういうときは素直に訊くのが一番っしょ」
 そう言って、日向は扉を開け放った。
「あら、誰かと思ったら日向君に藤巻君、それに音無君じゃない」
 と、ゆり。
「水臭いぜ、ゆりっぺ。作戦なら俺達にも声をかけてくれればいいのに」
 そんな百合に対して、いつもの調子で日向がそう言う。普段は個性的なメンバーに埋没しがちな彼であるが、SSSの所属は長い。故にこういったときは自然と彼の出番となるのであった。
 だが――。
「いいの。今回はあたし達女性陣だけでやるわ」
 普段は日向の言うことをある程度は聞き入れるのに、今回はそっけなく、ゆり。
「俺達は……?」
「陽動でもしてて」
 そっけなく、ゆり。
「陽動って……」
 困ったように音無。
「ロックを歌うか?」
 藤巻がそう訊く。
「俺らだといけてコミックバンドだろ」
 呆れたように、日向。
「閃いた! 俺達、バンドを始めます!」
「そのネタ見切った! バンド名は『逝去後ティータイム』!」
「よしそれでいこう!」
 ちらっと女性陣を見る男子三人。
「それで、トラップの設置なんだけど」
「ギルドからクレイモア(地雷)を数機供出して貰うことが出来ました」
「中身は?」
「鉛玉だと物資が破壊されるおそれがあるので、催涙効果のある薬品を液状にしてカプセルに納めたものに変えてあります。炸裂すると中のカプセルが割れて液体が瞬時に気化、催涙ガスとして機能します」
「炸裂してから気化するまでの時間は?」
「およそ2秒から3秒。ある程度の爆風はあるので相手に対処する時間は与えません」
「完璧だわ」
「ありがとうございます」
 ――完全に、無視されていた。
「反応がない……だと……!?」
「ってうか俺らより真面目にミーティングを続けているんだが」
 信じられないと言った感じで、日向。
「いつもだったら堪忍袋の緒が切れているはずだよな」
 っていうか慣れないボケなんてするもんじゃなかった……と溜息をつきながら、音無がそう言う。
「作戦の説明は以上よ。なにか質問はある?」
 そのやりとりすら無視したまま、女子だけのミーティングは終焉を迎えていた。
「無いようね……それでは、オペレーション・スタート! ……行くわよ、みんな」
 女性陣が一斉に敬礼を返し、先陣を切って部屋を退出したゆりの後に続いていった。
「音無さん達は如何なさいますか?」
 情報管制のためだろうか、ひとり残った遊佐が、PCのモニターから顔を上げずに、そう訊く。
「……俺達も行くか」
「ああ、そうだな」
 いまいちノれない男子三名が、女子達の後を追うように、のろのろと部屋から退出する。



■ ■ ■



 ゆり達は、校内を静かに進んでいく。
 校内の不思議というか、この世界の不思議のひとつに、食料の調達がある。かなでや一部の生徒が趣味でやっている家庭菜園はさておいて、食堂の食材はいつのまにやら補充されているのだ。その補充方法、および補充される風景を、ゆり達はとんと見たことがない。
 一度は本気で張り込んだことがあったが、食堂はまるで無尽蔵の冷蔵庫でも持っているかのように営業を続けていたため、調査は三日で打ち切ることになった。
 それ故、今回のように校内に搬入してくる物資を追いかけるのは、初めてのことだったのである。
「間違いないわ。あれね」
 夜間のため照明が消えた廊下をのろのろと進むフォークリフトのようなものを確認して、ゆり。
「最終確認。かなで――天使の現在位置は」
「三棟向こうの校舎三階を巡回中です」
 遊佐と二言三言話し合った入江がそう報告する。
「OK。行くわよ、みんな!」
 そう言って、ゆりは拳銃を抜き放つとフォークリフトの前に立ちふさがった。
「フリーズ!」
 天井に一発発砲してゆりがそう警告する。同時に、椎名が撒き菱を撒いて、最後に後から続いてきたガルデモのメンバーがフォークリフトを半包囲する。
「SSSよ。大人しく荷物を渡しなさい――って」
 口上の途中で銃を下ろすゆり。そして、つかつかとフォークリフトに歩み寄る。
「無人カーゴだったのね……」
 あえて言うのなら、ビデオカメラと古くさいコンピュータを組み合わせたようなものが操縦席の替わりに設置されていた。今は前方が通れないことを抗議しているのか、小さな赤いランプを点滅させている。
「まぁ、いいわ。それじゃみんな、物資を――」
 そのとき、何処か遠くで重低音が響いた。
「なに、今の――」
「天使です!」
 本部に残った遊佐と連絡を取り合っていた入江がそう叫ぶ。
「三階から飛び降りた天使が、外壁を破壊しこちらに直進中!」
「それって――」
 ゆりが確認するまでもなかった。
 全員が居る場所から数メートル離れた場所校舎の壁がいきなり爆音と共に吹き飛んだのである。
「校舎を、ぶち抜いた!?」
 しばらくすれば勝手に直るとはいえ、今まで使ってこなかった手段に驚くゆり。だがそれも一瞬の間で、
「展開!」
 と号令を飛ばすのと同時に自らも拳銃を構える。遅れて、残りのメンバーもそれぞれの獲物の狙いをゆりに倣った。
 狙う先は天使――かなでである。
「貴方達。自分が何をしようとしているのか、わかっているの」
 銃口に囲まれているというのに、かつて完全に敵対していたときのように強烈な威圧感を漂わせて、かなではそう言う。
「それでも、やらなきゃいけないときがあるのよ」
 両手から片手に拳銃を構え直し、空いた手で太股に括りつけた鞘からナイフを抜きつつ、ゆり。
 隣に立つ椎名が苦無を逆手に持ち、さらに後方にてガルデモのメンバーが思い思いの武器の引き金に指を添える。
「往生せいやあああー!」
 先陣を切るかの如く、ユイがグレネードランチャーを炸裂させた。
 事前にマスクを着けてところを見ると、催涙弾なのだろう。
 かなでは、それを難なく――、
 蹴飛ばした。
「な、なんですとぉ!?」
 時限信管だったのか、それとも信管そのものを器用に避けて蹴ったのか、あらぬ方向に飛んでいった弾頭が今になって炸裂する。
「……させないわ」
 着地姿勢からゆらりと背筋を伸ばして、かなで。
「煙幕弾!」
 即座にゆりが叫び、
「ラジャー!」
 関根が無反動砲を構え、撃つ。弾は狙い通りかなでの足下に着弾し、ゆりの言う通り猛烈な煙幕を張ったのであった。
「今のうちよ!」
 入江、ひさ子、そしてユイが無人カーゴに駆け寄り、最後に単発である無反動砲を投げ捨てた関根が殿を務める。
 ――が。
 その煙幕の中から両手にハンドソニックを発動させて、かなでが躍り出る。
 ただしそれはゆりによって看破されていた。即座に右からゆり、左から椎名が強襲し、右手のハンドソニックはゆりのナイフ、左手のは椎名の苦無が止める。
 その隙を狙って、背中を見せずに後退していたガルデモが足止めしようと煙幕を張ろうとするが――、
「ガードスキル『ハーモニクス』」
 情け容赦なく、かなでは分身を呼び出した。
「くっ!」
 ゆりが慌てて拳銃を捨てもう一本のナイフを、冷静なままの椎名が腰に納めた小太刀を引き抜く。
「攪乱系の弾丸じゃ、駄目って事か――やむを得ないね」
 額の汗を拭い、ひさ子が自分の獲物である連装式ショットガンの弾丸を、ガスのそれから鉛玉が詰まったものに換えた、まさにその瞬間であった。
「ん待てい!」
 かなでやゆり達の背後から、フラッシュライトが照らし出される。
「……あれは」
「男子達?」
 ゆりの言葉を継ぐように、入江がそう言った。
「……結弦」
 静かに、かなでがそう呟く。
 そう、ライトを背負って登場したのは、彼女たちの言う通り、音無、日向、藤巻の男子三人であった。ただ、肩からかけているのは銃や刀ではなく、ギター、ギター、ベースである。
「俺達『逝去後ティータイム』!」
 声を響かせて、音無。
「最初の曲は――」
 続いて日向がストイックな口調で続ける。
「――『麻婆はおかず』!」
「そのまんまやないかっ!?」
 最後に藤巻がそう吠えた。
 かなでは、無視した。
 ゆり達もである。
「なんか空気が――冷たくね?」
 と、藤巻。
「っていうかものすごく居たたまれないな……どうする? 音無」
 日向が音無にそう訊く。
「だから一曲目は『天使に触れたいよ』にすれば良かったんじゃ」
 だがしかし、彼らを見た数秒ほどの時間はあったのだ。
「そぉい!」
 機を見逃さなかったユイがグレネードランチャーを零距離でぶっ放し、今度こそ煙幕が発動する。
「しまっ――」
 珍しく、かなでが動揺した。
「いまよ!」
 その機を逃さず、ゆりの号令の許、女子が突入する。
「なにこのリアルなボコスカウォーズ」
 ぼそっと、藤巻。
「ぼ、ボコスカウォーズって……」
 言いたいことはわかる。昔のマンガでよく見られた喧嘩表現とそっくりであったのだ。
 やがて――。
「とったどー!」
 煙幕に巻き込まれた無人カーゴの上から両手に段ボール箱を抱えて仁王立ちになり、ユイがそう宣言した。
 続いて晴れた煙からひとりのかなでをゆりと入江が、もうひとりを椎名とひさ子が押さえつけた姿が露わになる。
 ちなみに、椎名以外全員着衣が乱れていた。
「あなた達、これが何かわかっているの?」
 と、かなで。
「当然でしょ」
 ゆりがそう答える。
「俺達は、知らないけどな」
 と、音無。
「そう、じゃあ説明するわ」
「あ、ちょっとタンマ!」
 何故か慌てた様子で、ゆりが組み付いていたかなでの口を塞ぐ。だが、そんなゆりの事情など斟酌するひつようもないかなでは淡々と、
「チョコレートの材料よ、これ」
 分身の方に、そう言わせたのだった。
「……はぁ!?」
 唖然とする男子一同。
「何だってまた、そんなものを……」
「必要な分だけ、分捕るつもりだったのよ」
 かなでの関節をきめながら、ゆりがそう呟く。
「なん、ですって――」
 かなでが一瞬息を飲んだ。
 一瞬の、間。
「言ってくれれば、お裾分けしたのに――」
「――なんですって!?」
 今度はゆりが言う番であった。
「とりあえずアブソーブしたいから離してくれる?」
「あ、うん――」
 慌ててかなで達から離れるSSS女性陣。
「うっかりしていたわ。最初に連絡すべきだったのね」
 分身と融合し、着衣を改めたかなでがそう言う。
「折角だから、家庭科室も解放するわ。一緒にどう?」
「そういうことなら、お願いするわ」
 どこかばつが悪そうに、ゆり。
「はっはっは。まぁお互い水に流して早速行きましょうっ!」
 ユイがそんなことを言い、
「皆で作るのも、面白そうだしねっ」
 と、関根が言う。
「もしもし遊佐ちゃん? 何かよくわからないけど目標達成した上に家庭科室貸してくれるって。え、現地で合流? わかった。じゃあねーっ」
 どやどやと、女子一同が去っていく。
 ……後には、音無達男子一同が残ったのであった。
「何だったんだ、俺達……」
 と、藤巻。
「いいんじゃね? 平和的解決とやらになったみたいだし」
 両手を頭の後ろで組んで、日向がそう答える。
「まぁ陽動にはなったんじゃないか、な……?」
 微妙だったけどという言葉を飲み込んで、音無はそう言った。



 そして、数日後――。
「女子一同から、男子一同へ。ね……」
 受け取った可愛らしい包みを手にとって、音無はそう呟いた。
 チョコレートである。
「感・無量――!」
 男泣きで感涙する野田であった。なんでも、ゆりから直接貰ったらしい。
「へへ。無駄じゃなかったな、『逝去後ティータイム』」
 チョコの包みを指で摘んで、藤巻がそう言う。
「え、あれ気に入ったのか……」
 対して、ちょっと後ろに引く音無であった。
「しっかし、こんなイベントを開くなんてねぇ……サンキューな、音無」
「どういうことだ?」
 急に日向にそういわれて、思わず面食らってしまう。
「初めてのことなんだよ。音無のおかげで、状況が変わってきているってことさ」
「……そうかな?」
「ああそうさ。でないと多分、かなでちゃんはあんな風に材料をお裾分けしなかったと思うぜ?」
「――なるほどな」
 再び綺麗にラッピングされた包みに目をやって、音無。
「それなら、いいかな?」
 そこへ、どたどたと駆け足で本部に駆け込んだ者が居る。
「あ、音無さん、こんなとこにいたんですか」
 直井であった。
「どうしたんだ、一体」
「どうしたもなにも今日はカレンダー上バレンタインじゃないですか。女共が浮かれていますが、それに僕も対抗しようと思いまして」
「……対抗?」
「はい。どうぞ、音無さん。本命です!」
 そう言って直井が手渡したチョコレートの包みは、かなりでかかった。
「そういや最近姿見せなかったな」
 これ作ってたんかい、と日向が呟く。
「っていうか貰う方が作ってんじゃねええええ!」
 そこで、キレたユイが乱入した。しかし言っていることはもっともな話である。
「しかも、なんでそんなに凝ってるんですか! あたしらへのハードル上げて楽しいかぁ!」
「僕は元陶芸家だ。味の方はともかく造形に関して言えば、これ位どうってことはない」
 しれっとした貌で、直井。
「もちろん、そんな誇りを思い起こさせてくれたのは音無さんのおかげです!」
「あ……うん、良かったな」
 どうすればいいんだこれ。そう思いつつも受け取る音無であった。
「こうしちゃいられねぇ、俺もチョコ作らねえと」
 そんな音無の様子を見つめて、日向がそんなことを言う。
「作るんじゃねー! 贈るんじゃなくて! 貰いましょうよっ!」
「んなこといってもなぁ、今まで貰ったことないし。そういう意味じゃ、俺もこうやって貰うのは初めてかな?」
 そう言って、先ほど音無と同時にもらったチョコレートの包みを見せて、日向。
「……そんじゃついでにもう一個貰ってください」
 そう言って、ユイが綺麗に包装されたチョコレートの包みを日向に手渡す。それも、直井のものほどではないが、十分に大きかった。
「へ? いいのか?」
「いいに決まっているじゃないですか。義理なんですから」
 後ろ手になってそっぽを向き、ユイはそう言う。
「だよな。でもサンキュ!」
「――この鈍感」
「へ?」
「何でもないですよーだっ!」
 いーっ! と、子供がやるような仕草をした後、ユイは本部を出ていった。
「なんなんだ、あいつ」
「さ、さぁなぁ……」
 冷や汗をかきつつ、音無。
 日向には聞こえなかったようだが、割と近くにいた音無にははっきりと聞こえていたのである。
「ま、いいか、これでチョコの数はおあいこだわなっ」
 にかっと笑って、日向がそう言う。
「あ、あぁ。そうだな……」
 そんな彼から微妙に視線を逸らして、音無。
 実は、音無の方がひとつ多いのである。
 そう、彼は朝方早く、かなでに呼び出されて貰っていたのだ。
 もちろん皆には、内緒である。



Fin.




あとがきはこちら








































「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「……なにやってるの?」
「あー、しおりん(※関根のこと)がやたらと某魔法少女の胡散臭い勧誘員の真似が巧いので勧誘ごっこをやってるんです」
「あ、そう……」
「ってなわけで……ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「要らないわ。ちんたら呪文唱えるより散弾撃ち込んだ方が早いでしょ?」
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「悪いけど、バンドがあるから」(何気に初登場)
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「麻雀で十分強いから、いいや」
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「――あさはかなり」(ちょっと悩んだ)
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「フェイトさんや金色の闇さんと被るので辞退します」
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「出来ないわ、だって天使だもの」
「ボクと契約して魔法少女になってよ!」
「すいません、あたし現役だもんで」











































あとがき



 AngelBeats!、バレンタイン編でした。(一週遅れですが;)
 あちらは世界の設定上季節ネタが出ませんでしたが、私の方はそんなん関係ねぇとばかりに進めていこうと思いますw。
 さて次回は、早ければホワイトデーで。

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