超警告。リトルバスターズをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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ガンガンスクロールさせてください。








































「あら二木さん、風紀のお仕事はお休みですの?」
「ええ、そうよ。こんな日くらいは、馬鹿をやらせてもいいでしょう?」
「……それもそうですわね。では、わたくしからシャンパンでも一杯、おごらせて差し上げますわ」
「え?」
「こんな日くらい、よろしいでしょう?」
「……ありがとう。いただくわ」

















































  

  


「メリー・クリスマース!」
 その日、12月25日のクリスマスに、小毬さんはいつも以上にハイテンションだった。
 ソリっぽい見た目に改造したリアカーに乗って、大きな袋を担ぎにこやかに笑っている。
 その格好はもちろん、サンタ服だ。ただ、ズボンかスカートをはき忘れているようだったけど、上着の裾が十分にあるためワンピースと言い張ればどうにかなりそうだった。現に、かなり派手に動いているけれどちらとも見えていない。
 まぁ、これはこれで可愛いと思う。
 これでソリを牽いているのが、トナカイルックの鈴や葉留佳さん、あるいはクドだったらよかったんだけど……。
「フッ! フッ! めりいいい! くりすまーす!」
「まーん! メリー・クリスまーんス!」
 茶色の全身タイツにトナカイの角と赤い付け鼻を装備し、全身の筋肉を誇示しながらソリ型リアカーを牽く真人と謙吾はなんというか、トナカイのソリと言うより、地獄の戦車と言った方が近かった。



『星降る夜の、クリスマス』



「もぉーろぉーびぃとーこぉぞぉーりぃーてぇー、筋肉センセーション!」
「まーん!」
 もうクリスマスじゃないよそれ。
「あ、理樹くーん! メリー・クリスマース!」
 僕が呼び止める前に、小毬さんの方が僕に気付いていた。
「そしてちょっと見ていけよ、オレの筋肉!」
「いや、いつも見てるから」
「はっはっはー! 理樹よ、照れることはないぞー!」
 そんな薄手のぴっちりとした全身タイツでふたりとも寒くないのだろうか。
「それはさておき理樹君、プレゼントですよー」
 そう言って、小毬さんは担いだ袋から小さな包みを僕に手渡してくれる。
「開けてみて良い?」
「どうぞどうぞ」
「そして見ていけよ、オレの筋肉!」
「いや、それはもういいから」
 呆れながらも、小毬さんからのプレゼントを開ける僕。綺麗にラッピングされていた小箱を開けると、中にはビーズで作られた小さな人形が入っていた。
「わぁ……綺麗だね。これ、小毬さんが?」
「ううん、私だけじゃないよ。ちょっと前からみんなで作ってたんだ。そして私が、配る役なのです」
 と、大きく胸を張って小毬さん。
「へぇ……」
 その、ビーズで出来ていた小さな人形は、精巧に出来ていた。いくら小さいとはいえ、ひとつひとつを作るのには結構手間暇がかかっただろう。しかも、それが担いでいる袋分あるわけだ。
「それじゃあねー、理樹君!」
「フッ! フッ! トナカイ! トナカイ!」
「うおおおおっ! 来るか、真人のトナカイセンセーション!」
 そんな可愛さと暑苦しさを兼ね備えた、天使の座乗する地獄の戦車は快進撃を再開した。
 後には、ため息をつく僕だけが残る。
 ……結局、言いそびれてしまった。
「まぁ、プレゼントするものすら決まっていないんだけどさ」
 思わず、ひとりでそう呟いてしまう。
 すると、まるでそのタイミングを見計らっていたように――、
「困っているようだな、迷える子羊よ」
「……恭介?」
 そう。窓の外にはロープにつかまった形でサンタクロースの衣装を身に纏った恭介が居た(幸いにも、こちらは小毬さんと違ってちゃんとズボンをはいていた)。おまけに、仮面舞踏会にでもつかうような怪しいマスクで顔の上半分を覆っている。
「ククク、違うなぁ……俺の名前は……マスター・クリスマス! クリスマス・ファイトを制してしまったがために、クリスマス・オブ・クリスマスと呼ばれるようになってしまった男さ……」
「なら制覇しなければよかったのに」
 そう言う僕のつっこみは、完全に無視される。
「さぁ、これを受け取るんだ。迷える子羊よ!」
 そう言って、恭介は肩に担いでいた袋から科学雑誌を手渡してきた。表紙を見る限りでは最新号であるらしい。そして、赤い付箋が貼ってあった。
 僕は、その付箋が挟まれているページを開く。
「……これは」
 その内容を観て、思わず息をのむ。
「うまくやれよ、理樹。ではさらばだ!」
 そんな僕を見届けて、恭介は屋上に設置してあるとおぼしき滑車を使って、するすると降りていった。
 やがて、下の階から何やっているんだバカ兄貴! はっはっは。俺の名前はマスター・クリスマス。クリスマス・ファイトを制した――という微笑ましい兄妹のやりとりが聞こえてくる。
 僕は、もう一度付箋の貼られたページを読み直す。
 ……うん、今日で間違いないようだ。



「小毬さーん!」
 サンタルックの小毬さんwith地獄の戦車は、今も絶好調と言った感じで校舎を駆け巡っていた。
 その進路上に、僕は立ちはだかる。
「まーん! くっらっいっ、よみちはっ、ぴーかーぴーかーのー!」
「オレの筋肉が役に立つのさあああああああっ!」
 ちなみに絶好調を飛び越した真人と謙吾は僕を認識していないようだ。
「理樹君! よけてっ」
 慌てた様子で、小毬さんがそう叫ぶ。直後、僕は横っ飛びに転がりつつ、
「小毬さんっ! 今日の夜11時、いつもの屋上に来てっ!」
 はっきりと、そう言った。
「えっ?」
 きょとんとした貌で振り返る小毬さんが、急速に離れていく。
 さぁ、後は来てくれることだけど祈ろう。


■ ■ ■



 僕は部屋から持ち出した毛布にくるまって、待っていた。当たり前のことだけど、10時から一時間ほど此処にいると、どうしたって寒い。
 やがて、小さな足音が響いた。
 僕は夜空を観ていた目を、そちらの方へと向ける。
「小毬さん」
「うん……」
「良かった、来てくれたんだ」
「理樹君からの、お誘いだからね」
 帽子だけ脱いで着替えずに来た小毬さんは、微笑みながらそう言ってくれた。
「それで、今日はどうしたの?」
「ああ、今日流星雨が降るんだ。そのお誘い」
 と、僕。すると小毬さんは困ったように小首を傾げて、
「うん? 今日は星が降らないはずだけど……」
「うん、普通のはね。でも降るんだよ、特別なのがね」
「え?」
 そろそろかな。
 僕は夜空を見上げる。それにつられるように、小毬さんも空を見上げた。
 その直後、いくつもの鮮やかな光の軌跡が、夜空を切り裂く様に通り過ぎた。幾条も、幾条も。
「理樹君、これって……」
 驚いた様子で、立ち尽くす小毬さん。
「小惑星探査機『よだか』が、地球に帰ってきたんだよ」
 と、僕。恭介が僕にくれた科学雑誌には、その帰還が今日のこの時間であることが書いてあったのだ。
「帰って、きた?――でも、あんなに光っているってことは……」
「――うん。『よだか』本体は大気圏の摩擦に耐えられないんだ」
 だからこそあんなに、明るく激しく燃えている。
「そうなんだ……」
 少し悲しそうに、夜空を見つめる小毬さん。
「でもね」
 『よだか』はただ燃え尽きるために地球へ帰ってきたわけではない。小惑星から採取した砂を閉じこめたカプセルを、地球に届けにきたのだ。
「だから、あの光は決して悲しいものだけじゃないんだ。地上の僕らに何かを伝えるための光なんだよ」
 そう。少なくともあの中の光のひとつは確実に、地球へと帰還していくはずだ。
「そっか……そうなんだね」
 自分に言い聞かせるように、何度も頷く小毬さん。
「あ、小毬さんも毛布どう?」
 うっかりしていた。僕は用意していた毛布を今になって小毬さんに差し出す。
「うーん、それもいいけど……」
 再び、困った様子で小首を傾げる小毬さん。
「隣、いいかな?」
 ……え?
「あ、空いてはいるけど」
 持ち出した毛布は割と大きめのものだった。僕はくるまっていた毛布の合わせ目を広げる。
「それじゃ、お邪魔します」
 そこへ、ぴったりと身を寄せて小毬さんが隣に座る。
「うん、やっぱり暖かい……」
「あ、うん……」
 星を観るために明かりの類は持ってきていない。それが幸いして、僕が赤面していることには気付かれていないようだった。
「綺麗だねぇ……」
「そ、そうだね……」
 『よだか』は火星付近の小惑星帯まで行って戻ってくるため、相応の大きさを誇る探査機だった。そのため、突発的な流星雨はまだ終わらない。
「ありがとう、理樹君。それと、メリー・クリスマス」
「うん。メリー・クリスマス」
 僕らが見上げる先の夜空を、流れ星が次々と落ちていく。それはまるで、僕らに対する天からの贈り物のようであった。




Fin.




あとがきはこちら












































「今度は小毬君かっ!」
「ふええっ!?」
「来ヶ谷さん、落ち着いてください。いきなりそんなことを言っても、バレンタインの時は鈴さんがヒロインだったと知らない人には通じませんよ」
「……フォロー済まない」
「いえいえ。というわけで来ヶ谷アワーのお時間です」
「わふー、クリスマスにふさわしい、らーぶらぶなお話でした……」
「なんか真人と謙吾と兄貴がずっと馬鹿やっていただけのようなきもするけどな」
「まぁ、井ノ原さんと宮沢さんはともかく、恭介さんは意図的であったのではないでしょうか」
「ふむ、そうだろうな」
「にしても、クド公回、鈴ちゃん回、んで今回のこまりん回があったから、そろそろ、このはるちん回が来るかなーっ?」
「わたしのか来ヶ谷さんの可能性もありますが。念のために言っておきますが、美鳥の分はノーカンです」
「なんか少年が見境無しになってきているな……」
「基本的に一話完結で済んでますので、それで御了承頂ければと」
「……身も蓋もないな」



「ところで劇中で小毬さんがズボンもしくはスカートをはいていなかった原因は?」
「無論私だっ!」
「ああ、ヤッパリ」
「わふー……」





































あとがき



 今年のクリスマスはリトルバスターズ! でした。
 ここんところの仕事が超絶忙しくてとても間に合わないものと思っていましたが、まぁどうにかいけましたね……。
 さて、次回のリトルバスターズですが――割と早めに行ければなと思います。

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