超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「久々に登場です、えへへ……って、このタイトルは」
「あー、作者がノリでつけたみたいよ?」




























































































  

  


「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ――」
 夕食後と風呂との短い空き時間を使って、娘の汐が腹筋をしている。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ――」
 大分寒くなってくる冬のはじめだというのに、汐は白い無地のTシャツと漆黒のスパッツという格好であったが、額に浮いている汗を観る限り寒いということは無いのだろう。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ――」
 元来、演劇部とは体力を使うものらしい。普段は学校でやっているのからと本人は言っているのだが、偶に時間が取れなくなるのか、こうやって自宅でトレーニングをすることがあった。
 それにしても、学生時代――というよりバスケ部に入っていた頃――の俺より、汐は俊敏に動いている。お互い専門は違うが、仮に当時の俺と1対1で試合した場合、いい勝負になりそうだった。
「ふっ、ふっ、筋肉、筋肉ぅ!」
「いや、それはやめろ」



『俺の妻がこんなに貧弱なわけがない』



■ ■ ■



「ただいま、渚」
 あの頃は確か結婚直後だったと思う。俺も渚も就職先で安定して働けるようになった頃だった。
 ――いや、正確に言うのなら俺がそう思っていた頃のことだった。
「おかえりなさい、朋也くん」
「おう!?」
 目の前に、名状し難い光景が広がっていた。
 男子たるもの一度は経験があるだろう、思わずにやけてしまうような想像。程度の差はあるかもしれないがあまり他人には話せないような妄想だ。それが目の前に展開されていたら、驚くしかないだろう。
 あえて、それを一行にまとめてみよう。
 家に帰ったら、妻が学生時代の体操着に身を包んで柔軟体操をしていました。
 ふむ、綺麗にまとまった。どうも俺は錯乱してはいないらしい。
 さらには試しに頬を引っ張ってみたが、普通に痛かった。
「何をしているんですか? 朋也くん」
 ちゃぶ台を片づけて出来たスペースで開脚したまま、渚が首を傾げる。つい最近まで着ていたせいか、ブルマも体操着もきつそうな様子は無かった。
「いや、ちょっと現実感のない光景に出くわしてしまったような気がしてな――何をしているんだ? 渚」
 その格好だと寒いだろう。ようやくその事実に思い当たって慌ててドアを閉めながら、俺。
 しかしなんというか、ブルマで開脚の上柔軟だと、目のやり場に困る。
 ……まぁ、凝視していても問題ないわけだが。妻だし。嫁だし。
「体力を付けようかと思いまして」
 再び柔軟体操を再開しながら、渚。そこで気付いたのだが、所謂運動は苦手系に属する方なのに、身体は良く動いていた。
「なんでまた。学生時代にも、同じようなこと言ってなかったっけか?」
 そして、そのときはお互い支えあおうと言う話で落ち着いたのだが……何故、今になって。
「あのときは、朋也くんと一緒ならそれでいいと思っていました」
 と、一生懸命前屈をしながら渚。
「でも今は違います。わたしも働いているわけですから、皆さんの迷惑にはならないようにしないといけません」
「……なるほどな」
 つきあいがそれほど長くはない俺達だが、その短い間に渚は随分と強くなった。
 そして、今このときも。
 渚は日々、強くなっていたのだ。
「だから、空いている時間があれば少しでも体力を付けた方がいいと思ったんです」
「そうか……それなら俺は何も言わないよ。っていうか、むしろ応援する。でもな、渚」
 ブルマで開脚な柔軟をいつまでも観ていたかったが、そういうわけにもいかないだろう。だから、俺は指摘する。
「はい?」
「柔軟じゃ、体力は付かないぞ」
「……はい?」
 ブルマで開脚で柔軟なまま、渚はぴしっと固まった。
 うむ、投げ出されたその両脚が学生時代より心なしか柔らかそうな――いやいや。



「んーっ、んーっ!」
 そう言うわけでまずは腹筋である。オーソドックスな腕立てもいいかと思ったのだが、一回目で自重を支えきれず、べちゃっとなってしまったので、そちらは早々に保留と言うことになった。
 そんなわけで、比較的負担の少ない腹筋である。
「んーっ、んーっ!」
「がんばれー、渚ー」
 そのままだと自力で上半身を起こせなかったので、俺が足首を押さえているのであった。
 それにしても、案の定というか何というか、挙動のひとつひとつが遅い。まぁ、勢いをつけるのは論外だが急いでやるものではないので良しとしよう。
 それにゆっくり時間をかければかけるほど――。
「……朋也くん、視線の位置がなんかおかしいです」
 腹筋を中断して、渚が真顔でそう言う。
「――気のせいさっ!」
 親指をおっ立てながら、俺。
 確かに、鮮やかな赤い布地と柔らかそうな稜線が目に眩しかった。
「そんなことより頑張れ、あと8回だ。そしたら次はヒンズースクワットだぞ」
「が、がんばりますっ! ――でも朋也くん、どこを見ているんですか?」
「おまえ意外を見るわけがないだろう?」
 少なくとも、嘘は言っていない。
「あ、え、えっと……そうですけどっ、何故かちょっと恥ずかしいですっ!」
 あ、女性が男性の視線を読めるってまじだったのか。
 ちょっと勉強になる俺であった。



■ ■ ■



「へぇ、そういうことがあったんだ……」
 あのときの渚と同じように柔軟をやりながら、汐はそう言った。
 もっとも、渚と同じように勘違いしているわけではない。所謂整理体操をしているのだ。
「まぁ結局、お互い仕事が忙しくなるとそれどころじゃなくなって、気が付いたら定期的にはしなくなっていたがな」
 と、俺。
「別にいいんじゃない? 鍛えすぎて腹筋が割れたお母さんってあまり想像したくないし」
「……そうだな」
 ふと恐ろしい想像をしてしまったが、現役時代猛威を振るっていた杏や智代はどうだったのだろうか。腹筋。
「でもそれってさ――」
 ぎゅっと体を前屈させたまま、汐が続ける。
「本当に、職場だけのことだったのかな?」
「というと?」
 それ以外には見当も付かなかったのでそう訊いてみる。すると汐はあのときの渚のように作業を止めると、
「んー、元気に子供を産みたいってこともあったのかなってね」
 ――!
「そうか……そう言うのもあったのかもしれないなぁ」
 あれから渚が汐を身ごもったのはそれほど間がなかったと思う。だとすれば、それは汐の言う通りなのかもしれない。
「それなら、それは――」
「おっと。おとーさん、その先は駄目。結局無駄になったと思ったのなら、駄目だよ」
 再び柔軟運動を再開しながら汐はそう言う。
「だって、わたしはこうやって元気にやっているんだから」
「……そうだ、な」
 ものすごい説得力だった。
 まったく、渚といい汐といい、どうしてこう俺の意表を突けるのだろう。
 このふたりには、どうにも敵わない俺であった。



Fin.




あとがきはこちら








































「な、なによ……お腹見たいの? ちょ、ちょっとだけならいいわよ?」
「わ、私も構わないぞ……と、当時とあまり変わらないからな……」
「え、なに? なんでそういう流れになるんだ!?」
「おとーさんのえっちー」
「朋也くん、いやらしいです……」
「だから、なんでそういう流れになるんだ!?」











































あとがき



 ○十七歳外伝、追憶同棲編でした。
 ここんところ書いているプロットが重苦しいせいか、その反動でなんか明るいというか軽い感じの話が生まれました。無意識にバランスを取っているのかもしれませんね。
 さて次回は……今度こそシリアスかな?




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