超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「ぷち演劇シリーズ。今回も過去の作品振り返り編ってことで、『Kanon』をチョイスしてみました」
「例によって主人公が俺か。それで言い出しっぺのお前は?」
「わたしは主人公の幼なじみだよっ」
「そしてわたしがその幼なじみのお母さん役ですっ。しおちゃんの役でもお母さん役が出来て嬉しいですっ」
「そりゃいいんだが、その手にある蛍光色の液体が入った瓶は何なんだ渚……」
「それよりも、おねぇちゃんがもの凄く複雑な貌になっているのが気になりますが」
「そういう風子は何の役だ?」
「天使ルックのちょっと背の低い女の子です。ちなみに天使と言っても手からライトセーバーが伸びたりしませんが」
「そんな天使はいないだろ……」
「はちみつくまさんなの」
「こ、ことみ!? ことみさーん!?」
「ことみちゃん、うさ耳だけで良いからっ。バニースーツいらないから!」
「汐、これでいいか?」
「……師匠、その着ぐるみは色々不味いです」
「何でだ? 確か私の役はこんこんきつ――」
「それってネタバレですから! ふぅさんの役並みにすんごい秘密ですからっ」
「ちょっと、ことみや智代が濃ゆいから椋が滅茶苦茶埋まっちゃってるじゃないのよ」
「おねぇちゃん、そんなことわざわざ言わなくて良いから……」
「っていうか、渚と言い汐と言い杏といい藤林といい、なんかキャラがかぶっているような」
「おとーさんもね」
「そうか? ここまで物忘れが激しくはないと思うけどなぁ……」
「それ、朋也くんにはきっと言われたくはないと思うの」
「こ、ことみちゃんが言うと重みが違います……」




























































































  

  


「おとーさんってさ――」
 娘の汐がそう話しかけたのは、とある休日の朝のことだった。
「おとーさんってさ、春原のおじさまとのつきあい、お母さんより長かったんだよね」
「あぁ。まぁ遺憾ながら、な」
 読んでいた新聞を畳みながら、俺。
 実際の話、学生時代からの俺の知り合いで、渚よりつきあいの短い奴はそうはいない。強いて言うのなら、智代あたりになるのだろうが、それだってせいぜい数日の間だった。
 そんなわけで、春原に限らずとも大抵の面子が『遺憾ながら』になっってしまう。それは汐もわかっているようで、
「まぁそれはいいから――」
 と、軽く受け流されてしまう。
「お母さんと出会う前のおとーさんと、春原のおじさまってどんな感じだったの?」
「どんな感じって……馬鹿ばっかりやっていたよ」
「それだけじゃわからないよ」
 と、ちゃぶ台の上に頬杖をつき、汐。
「本当に馬鹿な話だぞ?」
 そう念を押す俺。
「うん、構わないから」
「そうか……」
 汐がそう言ってくれたので、俺は当時のことを思い出しつつ息を吸い込んだ。



『高校生男子の日常』


■ ■ ■



 話をしよう。
 あれは確か1万4千――いや、36万回目だったか?
 ……まぁいい。当時の俺にとっては昨日と同じことだったが、あいつにとっては多分、まだ見ぬ明日のことだったみたいだ。
 あいつには72通りのあだ名があるからなんて呼べばいいのか……確か最初のあだ名は――そう、『陸に上がったウーパールーパー』
 そう、あいつは最初から言うことを聞かなかった。
 俺の言う通りにしていればな……。
 まぁ、良い奴だったよ。



「なにこの導入」
「まぁいいんじゃないか?」



「そんな装備で大丈夫か?」
 一限目を余裕でぶっちぎった春原の部屋で、俺は腕を組みながらそう言った。
「大丈夫だ。問題無い」
 きりっとした貌で、春原がそう答える。
 そんな装備というのは、普段の制服と、本来ならそれとセットになるネクタイの代わりに着けられた、蝶ネクタイのことだった。
「一限目、終わったみたいだな」
「計算通りさ」
 980円の格安理髪店から貰ったプラスティックの櫛で髪を整えながら、春原が答える。
「それじゃ、行ってくる!」
「ああ、頑張ってこい」
 と言っても、念のため後を付いていく俺だった。
 春原は颯爽と寮から校舎へと入り、教室移動をしているひとつ下の女子を見つけると、
「そこの彼女〜 僕とお茶しない?」



「ナンパかっ!」
「言ってなかったか? まぁいい」



「えっ、なに? この変な人」
「うっ」
「もしかして、お笑い芸人」
「あっ」
「でも全然面白くなさそう――」
「ぐっ」
 フルでボッコボコにされる春原。まさにフルボッコだった。
 やむを得ず、俺はフォローに回る。
 女子達が去って、静かに崩れ落ちる春原にそっと歩み寄ると、
「俺は言っている……ここで死ぬべき定めではないと」
「ナンパでいちいち死ねるかっ! しかも岡崎が言うのかよ!」
 だって他にフォロワー居ないし。
「まぁいいんじゃないか?」
 というわけで仕切り直す俺達だった。



「一回で諦めようよ」
「そんなんだったら36万回もやらないさ」



「春原、そんな準備で大丈夫か?」
 二限目。再び春原の部屋にて、俺はそう訊いていた。

「授業出ようよ」
「だから渚と出会うまではこんな感じだったんだ」

「一番良いのを頼む」
 前の経験を生かして、そんなことを言う春原。
「よし、任せておけ」
 こんなこともあろうかと、授業をふけて外に出ることを考えて用意していた普段着をつきだしてやる俺。
「……ジーンズ?」
「ああ、しかもビンテージだ」
「マジで?」
 すげーと、喜ぶ春原。
 実際は、古いだけだけどな。
「それじゃ、行ってくる!」
「ああ、頑張ってこい」
 と言っても、念のため後を付いていく俺だった。
 だって、上は普通の制服で下はジーンズじゃ、どう見ても不審者だし。
 春原は性懲りもなく颯爽と寮から校門をくぐり、授業の前準備だろうか、ひとりで体育館へと向かう体操着姿の女子を見つけると、
「そこのかーのじょっ!」
「ひぇっ」
 あ、やばい。あいつ可愛いからって見境無く声かけてやがる。
 だが春原は見境を無くしているせいでそれに気付かず声をかけているわけだし、既に声をかけてしまった事実は変わらない。
「ねぇ、いまひとり?」
「いえっ、あのっ、そのっ」
 もう既に、怯えた表情で女生徒はあとずさっている。
「どう? これからお茶でも」
「ま、まだ授業中じゃ……」
「そんなこと言わずにさぁ」
 やむを得ず、俺はフォローに回る。
 せめて、傷は広げないようにしないとならない。
「俺は言っている……すべてを救えと」
「OK! じゃあここにいる岡崎と一緒にどう? ズバッと一発!」
「えええええっ!」
 お茶を飲むのにズバッと一発は無いと思う。
 ……それにそれ、捉えようによってはすごく不味い表現じゃないか?
 とは言っても、それを取り消すことも無かったことにすることも出来るはずもなく。
 案の定、怯えきった女生徒は涙目になると、
「ご、ごめんなさいっ!」
 全速力で、逃げていった。
「ありゃ、失敗しちゃったか。上手くいくと思ったんだけどなぁ」
「お前はあれで上手く行っていたと思っているのか」
 呆れ顔で、俺。
「それにあれ、やばいぞ」
「なんでさ」
「だってあの女生徒――」
 校舎に消えたその背中を見送りつつ、俺は言葉を続ける。
「確か、我らが委員長殿の双子の妹じゃなかったか?」
「……え?」

「……え?」
「ああ、当時はな」

「いいんじゃないかな。俺無関係だし」
「ちょっ! おまっ!」
「やぁ。俺のサポートが心配なのか?」
「今無関係とか言いませんでしたかねぇ?」
「いいんじゃないかな」
「何がだよっ!?」
「お前もよくやってくれるしな」
「結果は散々だよっ」
「いや、お前の頼みは断れないな」
「じゃあ何とかしてくれよこの状況!」
「いやでも委員長殿は絶対だからな」
「そりゃそうだけどさ」
「さぁ、行こう」
「どこにだよ!?」
 どこって、修羅場に。
「ちょっと、あんたたち?」
 そしてその修羅場は、割にすぐ近くにあるのだった。
「授業に出ていないからどこにしけこんでいるのかと思ったら――なにしてんのよ?」
「い、いや、何も?」
 ぶんぶんと首を横に振る、この期に及んで往生際の悪い春原。
 我らが委員長殿、藤林杏閣下は先ほど涙目になって逃げた女子生徒――双子の妹の藤林椋――が消えた校舎の方から歩み出てきていた。
 つまり、俺達が何をしていたのかを知っているのに違いないのだ。
「何も? ――あたしの可愛い妹が泣かしたじゃない」
 口の端を小さく笑みの形に歪めて、杏。
「い、いや、あれは不幸な事故というか……だからここは拳を納めて、ね?」
 土下座せんばかりの勢いで、春原。
「拳を納める? やぁね。あたしはただ――」
 ぼこっと、杏の周囲の地面がへこむ。
「あたシはタだ、イモートノカタキヲトルノデス!」
 怒りのあまり、片言になっている杏だった。



■ ■ ■



「……それで?」
「ああ、また駄目だったよ。あいつは話を聞かないからな。まぁこの次があるとしたら、お前にも頼むとするよ、汐」
 ウィンクをひとつして俺はそう言ってやる。
 すると、汐は春の日溜まりのような笑顔を浮かべて、
「うん、マジお断り☆」
 容赦の無いマイドーターだった。
「でも……色々と興味深かったかな」
「そうか? 馬鹿な話だったろ?」
「んー、そうかもしれないけど……」
 考えながら話しているのだろう。汐は天井を見つめながら、
「おとーさん達の学生時代の話が聞けて、良かったと思う」
「――そうか」
 それならば、あながち無駄話ではなかったということなのだろう。
「なんていうか、お母さんと出会って、おとーさんも春原のおじさまも変わったんだね」
「そうだな……今思えば、そうなんだろうな」
 あの頃はそれどころじゃなかった。
 そしてその前は、この時間がこのままずっと続いていくのだと思っていた。
 何もかもが、渚と出会ったことで変わり、動いていったのだ。
「ま、変われて良かったと思うよ」
「そうだね、わたしもそう思う……」
 両手で頬杖を突いて、嬉しそうに汐はそう言う。
「んで、あと35万あまりの馬鹿話はどうする?」
「あ、もう間に合ってるからいいや」
 だよなー。



Fin.




あとがきはこちら








































「汐ちゃんも間接的にとは言え渚ちゃんから色々受け継いだことがあると思うけど、もし汐ちゃんに子供が出来たら、どんなことを伝えたりする?」
「んー、そうですね……『話をしよう。あれは一万四千回目――』」
「うおおおおい!? なに母から子に語り継いじゃってるのっ! 話さなくて良いから、そんな僕の黒歴史!」
「でもちょっと羨ましいです」
「別に羨ましくないからねっ! 渚ちゃん!」











































あとがき



 ○十七歳外伝、悪ノリ編でした。
 別の話の方でエルシャダイをちょっとネタにしましたが、今度はより濃くネタにしてみました。
 エルシャダイの主人公組を朋也陽平コンビが演じたら面白いだろうなぁと思っていたんですが、実際に動かすとなるとちょっと難しかったですね。
 さて次回から――ちょっとシリアス気味に行きます。多分。



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