超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「ぷち演劇シリーズ。今回からちょっと趣向を変えて過去を振り返る感じで。って訳でわたしが――主人公の同級生、里村茜? これって作者の趣味じゃ……」
「知らん。ちなみに俺の役の主人公、折原浩平は作者的には歴代主人公でもっともはっちゃけているという認識らしい。俺も好き勝手やっていたつもりなんだが、どんだけなんだろうな」
「『知っているが、お前の態度が気に入らない』」
「……何をやっているんだ、風子」
「この台詞の方が有名かもしれない主人公の後輩、上月澪役を射止めましたので、早速……と思いまして。ちなみに諸事情でこうしてスケッチブックでお話しています」
「あ、ふぅさん。それ原作じゃ言わないからね」
「本当ですかっ? ショックですっ!」
「んで、あたしが転校生の七瀬留美役ね……まぁキャラクターの方向性があっているのはわかるけど、乙女を目指すって設定なら智代の出番じゃない?」
「い、いや……私は今回は汐の役の幼なじみ、柚木詩子役だからな。実は中の人的にこういう役も得意なんだぞ」
「そういえば朋也、その中の人の話だけど」
「なんだ、杏」
「なんで主人公の幼なじみ役は公子さんで、先輩役は美佐枝さんなのよ?」
「いやもうそれは譲れないらしい。いろんな意味で」



「な、なんか懐かしいな……」
「まさかこの歳で制服着るとは思わなかったわ。別の意味でもねぇ」



「ところでお母さんの役は?」
「主人公が知り合う少女、椎名繭役です。みゅー……」
「うわ、めっさかわいいっ!」



「春原です……誰も気づいてないけど主人公と馬鹿をやる役です……え? 僕と変わらない? そんなこと言わないで……」




























































































  

  


 その日は俺が夕食当番だったので、俺、岡崎朋也は商店街で夕飯の材料を買ってきた後そのまままっすぐ家に戻って調理を始めていた。
 本日の献立は、野菜炒め。
 この前芳野さんと飲みに行ったときに入った居酒屋の野菜炒めが美味しかったので、芳野さんの知り合いだという店主にその秘訣を訊いたところ、俺でも簡単に出来そうだったので早速真似をしてみた次第であったりする。
 ちなみにその秘訣は、鷹の爪の輪切りと、ニンニクひとかけと、おたま一杯の鶏ガラスープ。鶏ガラスープを作るのが無理なら粉末の素を使い、定量分をぬるま湯で溶くだけでも良いそうだ。
 そんなわけで俺が下拵えをしていると――。
「ただいま」
「おかえり」
 いつもより多少遅めの時間になって、汐が帰ってきた。大方、学校帰りにどこかへ寄っていたのだろう。
 汐も高校二年生、そういうことがあっても良いと思う。
 ただ、その日の汐はなんか妙に顔が赤かった。
 なんだろうか。熱ではなさそうだが……そう俺が思っていると、
「ねぇ、おとーさん」
 汐は、おずおずとそう訊いてきた。
「なんだ?」
 鶏ガラスープの素を慎重に溶かしながら、俺。
「おとーさんって、学生時代にお母さんとキスしたこと、ある?」
「どうだったかな?」
 と、誤魔化す俺。
 実際には忘れもしない、古河家と一緒に行ったピクニックのことだ。今思い起こせばくだらない俺のわがままのせいで、近所の公園になってしまったのだが、そこで俺はオッサンと早苗さんの目を盗んで、渚とキスしたものだった。
「そ、それじゃあさ」
 ひとつだけ咳払いをして、汐は続ける。
「え、え、えー、えっちなことは、した?」
 俺は派手にこけた。



『純情サーキュレーション』



「そーいうこというのはどの口かなー? うーん?」
「ふぉ、ふぉめんなふぁい!?」
 摘んで引っ張った汐の頬は、思ったよりよく伸びた。
 俺は一通りむにむにと汐の頬の感触を楽しんだ後、ちょっと強めに引っ張ってぱっと離す。
「うー、顔が二倍ぐらいになるところだった……」
 自分の顔のあちこちをぺたぺたと触りながら、汐。
「そんなやわな顔じゃないだろ」
 と、腕を組んで俺。
「断言してやる。この場に渚が居たら正座でお説教ぐらいじゃ済まないぞ」
 と、俺。
「……正座?」
 と、上目遣いに俺を見て、汐。
「正座。それに説教2時間フルコース。運が悪いと夕飯抜き」
 ああ見えてそういうことには結構厳しいところのあった渚だから、まぁこんなものだろう。
「で? 一体全体、なにをもってそんなことを訊くことになった?」
 と、夕飯の支度を再開しながら、俺。
「あ、うん……それはね」
 ぽつぽつと話し出す汐。
 話を要約すると、学校の帰りに本屋に寄ったのだが、そこを出るときその裏路地で、同じ学年の男女がその……よろしくやっていたらしい
「――どこまでやっていたんだ?」
「言えません」
 顔を赤くして、そっぽを向き、汐。キスぐらいで驚くたまではないはずだから、それ以上のことをよろしくやっていたのだろう。
 なんというか、若いなーという感想しか出てこなかった。
「信じられないでしょ、人が見ているかもしれないところでそんなことするなんて!」
「確かに、個人的にはそういうの、どうかと思うけどな」
 と、野菜を手頃なサイズに切りながら、俺。
「そうよね!」
 我が意を得たりと言った感じで、汐が両手を腰に当てて強く頷く。
「ま、家でやる分なら止めないけどな」
「えー……」
 思いっきり不満そうな、汐。
「いいじゃないか、好きなんだから」
 と、俺。
 そういう意味で言えば、俺と渚の学生時代における恋愛模様は――渚が途中あの熱で倒れてしまったことを差し引いても――割と淡泊な方であったと思う。
 結婚してからは、それはもうすごかったけどな!
「おとーさん、なにあらぬ方向にVサインしているの?」
 ……おっと。
「いかんいかん、ちょっと思考が暴走したが――多分お前の見たカップルはあれだ、そういうのが我慢できなくなって、人が来ないと『思ったところ』でついいちゃいちゃしちゃったんだろ」
 と、俺。
「そういうところの理性はなるたけ効かせて欲しいが、まぁ本当にふたりきりのときは仕方ないな」
「たとえば、どんな?」
 納得できない様子で、汐。
「そうだな……両親が不在の自宅とか?」
「それって、結構難しくない?」
「難しいよな。両親共働きとかならありそうだが」
 俺が学生であった時は割と居たような気がしないでもないが、今はどうなのだろう。あまりその辺の話を職場でしないため、よくわからなかった。
「ま、そういうケースの有無はさておいて、実際にふたりきりで周りに邪魔されないなら……そうだな、責任の負える範囲でならいろいろあっても問題ないと思う」
 と、フライパンに油をひきながら、俺。
 だが、それは汐にとって納得できない話であったらしい。事実、
「男の人って、そういうところあるよね」
 頬を膨らませて、そんなことを言っている。
「そこらへん、男女の区別ないと思うぞ。俺だって渚におねだりされたことあるし」
「嘘ぉっ!?」
 あ、いかん。
 今のはちょっと刺激が強すぎて、汐の渚に対する幻想を打ち砕いてしまったのかもしれない。
 ……当たり前のことであって、残酷なことでもあるのだが、汐は渚のことを直接にには知らない。だから、汐は渚のことを人伝に訊くことになるわけだが、そこでどうしても、理想の渚像を構築してしまいがちになってしまう。
 それはそれで構わないのだ。寧ろ、汐に与えられた特権であるとも思う。
 もっとも、一度だけ『弱小演劇部の部長というのは表の顔で、裏では当時の生徒会長とクラス委員ふたりを陰で操っていた学校における真の支配者』みたいなイメージを持っていたことがあったので、それだけは修正したのだが(大方、智代と藤林姉妹、それに春原から聞いた話を統合した際、話を間違った方向で再構築しまったのだろう)。
「ま、まぁおねだりされたのはキスくらいだったけどな」
 咳払いをしながら、俺。
 実際には違うのだが(本当だ。信じてくれ!)、それをおっぴろげに言うと汐の情操教育に悪いだろう。
「うーん、なんか信じられないなぁ……」
「カップルをどういった目で見ているんだ、お前は」
 まさか、手をつなぐのも云々……と言うのなら、真面目にそのギャップを埋めなければならないような気がする。
「男はみんな狼なんでしょ?」
「――誰が言った、そんなこと」
「藤林先生」
「ああ……」
 杏なら言いそうな話であった。
「その理論だと女も狼だと思うぞ?」
 少し呆れて、俺。大方、ふざけて汐に吹き込んだのだろう。
「そう?」
「ああ。杏なんてよく春原を喰い殺しかけていたからな」
「ええー、それは嘘じゃ……あれ? そういえばおじさまよく杏に殺されかけたとか言っていたけど――あれってそういう意味!?」
 どういう意味だか知らないが、確かに春原は杏のおかげで何度も死にかけていたから、あながち間違いではないだろう。
 だから俺は、そのことについてはそのまま黙っていた。
「だから、なんだ」
 野菜炒めの最後の仕上げに取りかかりながら、俺はそう続ける。
「確実に言えることはな、そういったことは今、知ろうとしないことだ」
「え……?」
 どういうこと? と、汐が首を傾げる。
「お前まだ、本格的な恋をしたことないだろ?」
「ほ、本格的って――そんなこと……そんなこと……」
 否定はしていたが、思い当たるところはあったらしい。汐の反論は途中で尻切れトンボとなり、消える。
 なんというか、純情だった。
「事前に何かを知っておくのも大事だが、その本質を知らないのに理解しようとすると、妙なことになるだろう?」
「う……そうかもしれないけど」
「だから、恋をしたときにおもいっきり訊いてこい。こっちはそれほど恋愛経験豊富とは言えないが、出来る限りのことを教えてやるから」
 野菜炒め、完成。コンロの火を止めて大皿に盛る。
「ただし、彼氏の話は厳禁な」
 そう言って片目を瞑ってやると、先ほどまでずっと仏頂面だった汐は顔を綻ばせ、
「……うん、わかった。そのときは、よろしくね」
 笑顔を浮かべたのだった。
「ああ」
 同時に作っていた味噌汁もいい感じになってきたので、こちらもコンロの火を止める。
「夕飯出来たぞ。皿出してくれ」
「はーい」
 汐が元気に返事をする。
 いつか、汐も恋をするだろう。彼氏とやらのことを考えるとあまりそのときが来て欲しくはない思いもあったが、そのときが待ち遠しくもあるのもまた、事実であった。



Fin.




あとがきはこちら








































「はぁ〜い、と・も・や・くぅ〜ん? だ・れ・が・狼で、陽平を喰い殺そうとしたってぇ?」
「べ、弁護士を要求する!」
「残念ですが有罪です」
「な、渚ぁっ!?」



「ところで朋也。私のシナリオでは校舎の中でやりたい放題だったよな?」
「すまん智代、それは別次元の俺に言ってくれ」
「……シャイニータンバ――」
「異次元の兵器を持ってくるんじゃない! 俺のバルキリーでもよけられそうにないぞそれっ!」
「あー、おとーさんも師匠も、中の人ネタはほどほどにね」











































あとがき



 ○十七歳外伝、いちゃいちゃはほどほどにしとこーぜ編でした。
 話の元は私が会社帰りに――いや、いいや。空しくなってきた……。
 えーと、次回ですが、しばらく忙しいので未定かつ間が空きそうです;



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