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このお話は、AngelBeats!七話前後まで視聴されていること前提で書いてあります。
(七話AパートとBパートの間の話です)

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「ユイのゲリララジオ、略してゲリララ! 今回はゲストにSSSのリーダー、ゆりさんをお迎えしていまーす!」
「よろしく。ちなみに一部のリスナーに言っておくわ。決して出番が欲しい訳じゃないのよ?」
「……えー、アシスタントの日向先輩と音無先輩がひきつった笑みを浮かべてますが、とりあえず置いておきましょー。それでは早速ゲスト宛のお便りコーナーです! まず最初はSSSからラジオネーム『フェイトさんじゃないです』からのお便りです。『ユイさんゆりっぺさんこんばんは。』はいこんばんはー。『早速ですがゆりっぺさんに質問です』。お、いきなりきましたねー。『ゆりっぺさんの名字は月影ですか?』直球だー! 直球来ちゃったー!」
「何でよ。それじゃ何処かの辛気くさい元プリキュアじゃない」
「ちなみにあたしも元プリキュアです。中の人的に考えて!」
「へぇ、それは意外ね。それじゃ変身するとキュア――キュアけいおん?」
「なんでじゃーっ!」
「っていうか貴女の名字って、もしかして平沢?」
「キャラが名前しか被っていませんから! ヤツらとはオリコンで切磋琢磨しあう、所謂ひとつのライバルですからっ!」
「どんなライバルよ、一体」




























































































  

  





『直井文人七変化』



「まぁ、これくらいはやれた方がいいわけよ」
 と、銃身を通して外したオートマチックピストルのスライドを取り付けつつ、日向はそう言った。
 対天使用作戦本部。元は応接用に使っていたと思われるソファーとガラステーブルを使って、日向は音無に簡易的な銃の分解整備を教えていたのである。
「これ以上の分解は難しいけどさ、練習時に弾詰まりが起きたときはここまですれば大抵解消するんだ。ほかの銃を使うのはその後で良いだろ?」
 無論、緊急時はその限りではないけどな。と続けつつ、日向はスライドを定位置に戻してみせる。
「なるほどな」
 その日向の講義を聴いていた音無は、自分の手元にある銃で同じことをしつつ頷いていた。初心者でも使いやすいからと、SSSのリーダーであるゆり自らに渡された拳銃である。
「そいつはな、扱いやすいし分解も見ての通り楽なんだが、慣れてくると乗り換えるやつが多いんだよ。見た目がシンプル過ぎるってさ」
「そうかな。俺はこの形、嫌いじゃないけど」
 黒いプラスチックの固まりを切り落としたようなその銃を手に取って、音無はそう言う。
「ところでさ音無」
「ああ、何だ?」
「お前、記憶戻ったんだって?」
 そう、此処に来てしばらくの間記憶がなかった音無であったが、ついこの間その記憶が戻っていた。
「あ、あぁ……まだ朧気なところもあるけどな」
 対象戸惑いながら音無がそう答えると、日向はにこっと笑って。
「良かったじゃん。自分が何者かわかっただけでも少しは楽になっただろ?」
「……そうだな、その通りだ」
「ま、これからもよろしくな」
「ああ、こちらこそ……」
 お互い、にっと笑いあう。
「そういえば、日向って長いんだよな。その……SSS(スーパー しょっぱい 塩)」
 今回はSSSのメンバーにあらかじめ記入して貰ったものを、リーダーであるゆりが無作為に抽出した結果である。先の投票ではろくな結果にならないと言って、ゆり自らが考案したものであったが――結果はたいして変わっていないようであった。
「あぁまぁ、長いっちゃ長いかな」
 と日向。
「ひとつ教えてほしいんだが、この世界ってさ。キャラが被っていると来れないってことはないよな?」
「はぁ!?」
 素っ頓狂な声を上げてしまう日向に、音無は慌てて、
「いや、別に深刻な話題じゃないんだ。ふと思いついただけでさ」
 そう言って元校長のデスク、現ゆり専用のデスクへ視線を向ける。
 そこでは、ゆりを中心としたSSSの頭脳陣がその運営に必要な書類の処理を行っていた。普段は連絡役の遊佐が必要な書類をゆりに渡し、ゆりが処理を実施、高松がゆりから渡された書類の整理をしており、竹山はその整理された書類をノートPCに打ち込んでいた。
「高松と竹山って最初眼鏡キャラで被っているなーと思っていたんだけどさ」
「ああ」
「実のところまったく被っていなかったよな」
「ああ、眼鏡だけだよな」
 竹山は見た目通りの頭脳役である。特にコンピュータ関連に詳しく、SSSが使用してるブリーフィングマネージャーも、彼が構築したものであった。
 対して、高松に割り振られた役割は――筋肉である。
 狙撃や連絡、あるいは参謀ではない。筋肉であった。
 もう筋肉としか言いようがない、筋肉である。
「結論から言うけどさ、別にそう言うことはないよ。変な言い方だけど俺達幹部連中はあぁだけどさ、SSSの末端の方じゃ結構似たような性格、趣味の奴多いぜ?」
「そうなのか……」
 その日向の言葉に納得して、無言で書類処理を続けるゆり達に音無は視線を向けた。
 竹山は相変わらずデータの打ち込みを続けていたが、高松の方は飽きたのか終わったのか、いつの間にかその場で上半身裸になりヒンズースクワットを始めていた。
「それじゃあ、大山と直井はどうなるんだろうな」
「あーまー、どっちも似たような感じだよな。背は低いし童顔だし」
 その大山は藤巻と雑談に興じており、直井は窓辺に立って文庫本を読んでいる。
「並んで立って同じ格好になれば結構似ていると思うんだが」
「まぁ性格は既に違うの確定しているけどな」
 音無が再び目を向けると、高松は上半身裸のままTKに手伝ってもらってロープに逆さ吊りになり、腹筋を始めていた。
「でも意外と、脱いだらマッチョだったりして……」
「ははっ、まさか……」



■ ■ ■



「……ふふふ。音無さん、僕の肉体美に惚れてしまいましたね? おっと言い訳は無用です。わかるんですよ、見ているだけでね。まぁいいでしょう、存分に、執拗に、穴が開くほど見つめてください。さあっ、ほらっ、見つめて! 僕の上腕二頭筋!」



■ ■ ■



「……ないな」
「……ああ」
 げっそりした貌で、お互い見つめあう。
「第一それじゃ筋肉で高松と被っちゃうよな」
「じゃあ、直井の方が本格的にアレってのはどうだ?」
「……お前ひとりで十分だよ、日向」
「だから違うっつうの!」
「でもお前、仮に直井が……」



■ ■ ■



「いいんですか? ホイホイついてきて。僕、音無さんでも洗濯バサミ以下でも食べちゃう人間なんですよ? では早速――ほら、力を抜いて。大丈夫です、男は度胸! 何でも試してみるもんですよ――」



■ ■ ■



「いやだー!」
「俺もいやだー!」
 お互い、頭を抱えてしまう。
「大体、力を抜いて何をするって言うんだ……」
「でも俺、音無とだったら――いいぜ!」
「何がだよ」
 お前やっぱり本物のアレだろう、と音無。
「じゃあ、どっちかは実は女の子ってのはどうだ」
「大山が?」
「いや、大山は間違いなく男だ。それは確認済みだからな。つまりは……」



■ ■ ■



「実は僕――女の子なんだ……。でもみんなにばれると馬鹿にされちゃうから内緒にしてね……だって僕、全然女の子らしくないんだもん。あ、でもどうしてもって言うなら、かわいい服、着てみようかな……でもその代わり、音無さんのことお兄ちゃんって呼んでいい?」



■ ■ ■



「やめよう、心臓に悪い」
「ああ、止まっても困らないけどな……」
 お互い左胸を押さえて、音無と日向はほぼ同時にそう呟く
「いや待てよ音無、ここは一歩捻って女の子として育てられた男って設定でいけば――」
「どんな設定だ、それは」
 そう言って後から日向の頭を鷲掴みにしたのは、今まで話題になっていた当の直井であった。
「さっきから何勝手にこの僕で妄想をしている……! あ、良いんですよ音無さんは。妄想でも欲情でも好きになさってください!」
「いや欲情はないから。ある意味妄想はしちゃったけど」
「ある意味でもどの意味でも光栄ですよっ。――で? こっちの洗濯バサミ以下は、この僕で一体どんな妄想をしたっていうんだ?」
「お、音無に訊けよ」
「音無さんから直接聞いたら今日の夜寝られなくなるだろうが……まぁいい。『僕のことをどう想像していたのか喋れ』あと『語尾を音無さんサイコー!にしろ』……」
 一瞬、直井の瞳が怪しく輝く。どこで拾得したものか謎であったが、それが直井の得意技、催眠術であった。
「う……あ、あ……じ、実は筋肉なのかアレなのかリボンが似合う女の子なのかが気になりました音無さんサイコー!……個人的には元セーラー戦士だと思います音無さんサイコー!」
「お前のその能力、本当に情け容赦がないな……」
 そのまま音無さんサイコー! 音無さんサイコー! と連呼し始めた日向を気の毒そうにみやりながら、音無。
「お褒めに与り光栄ですよ。で、音無さんは僕がマッチョかガチなのか女の子なのか確かめてみたいということなんですよね?」
「いやそういう訳じゃ……そうなるのか?」
「そうなるんですよ」
 そう言って、直井は自信に満ちた笑みを浮かべて胸元をくいっと緩めると、
「確かめてみます? 音無さん?」
「いや、いい!」
「遠慮なんかしないで、ほら、ほらほら!」
「折角だから俺も見ていってくれよ音無さんサイコー!」
「う、うわぁー! ふたりして押し寄せてくるなぁー!」



 ここで、ゆりのボールペンの先が書類を道連れにしてへし折れた。
 先にも書いたが、彼女は今SSSの書類を一から整理していたのである。
「……ねぇ」
「はい」
 ゆりの傍らで控えていた遊佐が返事を返す。
「書類より先に、あいつ等片づけちゃっていい?」
「それより有効活用すべきです。いっそのことボーイズラブバンドでも組ませてガルデモと対バンさせてみては?」
「……いやいい。やめとく」
「賢明です。ゆりっぺさん」
 次の書類を手渡しながら、遊佐。
「音無さんも、良い気分転換になるでしょう」
 同じことを考えていたらしい。ゆりは、何も言わなかった。



Fin.




あとがきはこちら








































「マッチョ、筋肉と言えば――だっだーん、ぼよよんぼよよん……不思議ね、揺れないわ」











































あとがき



 ゆりでやると言ったのに何故か直井編になってしまったAngelBeats!でした。
 個人的には、直井と言うキャラそのものは珍しいとは思いませんが、その声を普段は冷静な役が多い緒方恵さんが当てるというのが興味深いところですね。心なしか、すごく楽しそうに演じられているように感じます。
 さて次回こそ……ゆりか?

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