超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「ハートキャッチプリキュアに出てくる生徒会長って、文武両道だしこっそり可愛いものが好きだし、女の子らしい格好にあこがれているし……師匠みたいですね」
「……まぁ、中の人も一緒だしな」




























































































  

  


「それじゃ、お昼には戻ってくるからね」
 びっと敬礼して、汐はそう言った。
「そこまで焦らなくていいからな」
 と、俺。
「いいの。わたしがやりたくてやっているんだから。それじゃ、行ってきます!」



『十本の、カーネーション』



 本日、日曜日。俺は思いっきり休日であったりする。
 だが汐はというと近いうちに演劇部の公演があるとかで午前中だけ、練習があるらしい。故に、先ほどのように慌てて飛び出していったのだが……なんとも、我が娘らしかった。
「さて……」
 汐が帰ってくるまで俺には予定がない。どうしたものかと思案していると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「はーい」
 宅配便だろうか、そう思って玄関の戸を開けると――、
「今日は、花咲フラワーショップです」
 汐よりちょっと年上とおぼしき女性が、花束を持って立っていた。
「ええと、花屋さんですか?」
 突然のことに、ちょっと間抜けな質問をしてしまう俺。
「はい、そうですけど」
「失礼ですが、花を注文した憶えは……」
「あ――! こちらこそ申し訳ありません! 実はうちでは宅配サービスも承っておりまして……」
「だから注文は――」
「春原陽平様より、岡崎様にお花の宅配を承っております。こちらにサインをお願いいたしますっ」
「ああ、なるほど……」
 どうも、花を届けに着てくれた人は少しおっちょこちょいであるらしかった。
「はい、ありがとうございます。それではこちら、花束をひとつと、カーネーションを一輪です。どうぞ」
「あ、ど、どうも……」
「花束もカーネーションも根本に水で濡らした綿を入れておきましたので少し長めに保ちますが、早めにお水をあげて下さいね。それでは、失礼いたします」
「ああ、はい。どうも……」
 いまいち状況についていけない俺。何故、花束が。何故、春原が。何故、カーネーションなのか、が。



『ああ、無事に届いたんだ。良かった』
 早速電話で聞いてみたところ、春原の奴はきわめて暢気な様子でそう言ったのだった。
「花束はともかく、何でカーネーションなんだ?」
 花瓶に入れた花束とカーネーションを見ながら、俺。
『いや、この場合はカーネーションが主役なんだよ。ただそれだけを宅配してもらうのは流石に悪いと思って、花束をつけたのさ』
 と、暢気な様子は変わらずにそう答える春原。
「質問の答えになってないぞ、なんでカーネーションなんだ?」
 俺がそう追求すると、春原は少し間を置いて、
『あー、渚ちゃんが母親だからかな?』
 そんなことを言った。
「渚はお前の母親になった憶えが、まったくもってこれっぽっちもないんだが」
『そりゃわかっているよ。でもね、僕の周りで母親になったのって、渚ちゃんだけなんだよ。だから、なんとなく母親のイメージがあってさ』
 ……なるほど、そう言うことだったのか。
『ま、そういうわけ』
「……わかったよ。これはありがたくいただいておく。だが、お前の親御さんは健在だろ? ちゃんとそちらの分も渡したんだろうな?」
『そりゃまぁ、ね。この歳になると親の有り難みがよくわかるようになったからね……』
「……そうか。そいつは良かった」
 思わず頬が綻ぶ。思ってみれば、学生時代は俺も春原もそんなことはこれっぽっちも考えていなかった。だが今は……というわけだ。
「お前さ、今度はいつこっちに来れそうだ?」
『んー、そうだねぇ。夏休みには行けるようにしたいねぇ』
「そうか。それじゃそれまでに美味い酒でも用意しておくよ」
『お、それは楽しみだねぇ』
「それじゃ、またな」
『ああ、汐ちゃんによろしく』
 俺は、静かに受話器を置いた。
「――だってさ、渚」
 思わず、箪笥の上にある渚の写真立てに話しかけてしまう。
「なんだか、嬉しいよな」
 写真立ての中の渚も、心なしか嬉しそうだった。
 そこへ、玄関の呼び鈴が響く。
「はーい」
 もう一度外に出てみると……。
「こんにちは、朋也くん」
 ことみだった。
「今日はまた、どうしたんだ?」
 そう俺が訊くと、ことみはひと呼吸間をおいて、
「これ」
 カーネーションを一輪、俺にくれたのだった。
「両親にお花をあげようと思ってお店に寄ったら、カーネーションがあってつい買っちゃったの。本来は白い方なんだけど、赤い方が綺麗だったから、汐ちゃんのお母さんにって」
「……そうか。ありがとうな」
 よく見れば、ことみが持つ花束にはカーネーションが一輪添えられていた。それはつまり……そういうことなのだろう。
「そろそろ行かなきゃ。それじゃ朋也くん、またね」
「ああ。今度はゆっくりしていってくれな」
 俺がそう言うと、ことみはほにゃっと微笑んでアパートを後にした。「こういうやつなんだ、昔から」
 もらったカーネーションを花瓶にさしながら、俺は渚の写真立てにそう説明する。なんというか、出来れば知り合いでいてほしい組み合わせだった。渚なら、ことみの良い友人になれただろう。そう思う。
 にしても今日は――そう思ったところで、三度呼び鈴が鳴った。
「はーい」
 千客万来だな。そう思いながら玄関の戸を開ける。
「ハイ、朋也。ハッピーマザーズディ!」
 杏と椋の藤林姉妹だった。
「どうしたんだ、お前ら揃って」
 俺がそう言うと、藤林がおずおずと、
「あの、渚さんにこれを……」
 と、ふたりして一輪ずつカーネーションを手渡してくる。
「お前達……」
「いやね、あたし達の周りで母親になったのって、渚だけじゃない? だからなんだかよくわからないけど、母親ってイメージがね」
「それ、春原も同じことを言っていたぞ」
「嘘でしょ!?」
「本当本当。さっき宅配で送ってくれたんだ。ほら」
 そう言って半身をずらし、奥にある花束達を見せてやる。
「うっそ……よりによって陽平と同じ思考回路なんて……」
 頭を抱える杏。
「照れ隠しですよ」
「ああ、わかってる」
 お互い苦笑するしかない、藤林と俺だった。



 その後も智代、宮沢、芳野さん、公子さん、そして風子から一本ずつ。カーネーションをもらい、気がついたら昼をちょっと過ぎていた。「なんか慌ただしかったな」
 花瓶に並べられたカーネーションと渚の写真立てを交互に見ながら、俺。
 そこへ、ものすごい足音が、どこかから響いてきた。そしてその足音はまっすぐこちらに向かい、
「た、たはっ、ただいまっ!」
 息も絶え絶えと言った様子で、汐が帰ってきた。
「お帰り、何をそんなに慌てているんだ、お前は」
 俺が呆れてそう言うと、汐は額の汗を拭いながら、
「いやだってお花屋さん寄ってきたから。その分遅れたら悪いと思って。ほら」
 そう言って、一輪のカーネーションを俺に見せる。
「お前で、十本目な」
 できるだけトリッキーにみえるよう笑いながら、俺。
「へ? ってあれ? なんでこんなにカーネーションが? しかも花束まで!?」
 おもいっきり首を傾げている。
 そんな汐に、俺は苦笑しながら、
「渚のところにいく途中で話すよ。その前に、昼飯な」
 そう言って、俺は台所に立つ。こんなに急いで帰ってきたのだ。きょうは俺が作らないと、汐に悪い。
「とりあえず、飯が終わったら渚のところに行こうな?」
「うんっ!」



Fin.




あとがきはこちら









































「みなさんその……ありがとうございますっ!」











































あとがき



 ○十七歳外伝母の日編でした。
 大急ぎで書いたんですが当日に間に合いませんでした。不覚っ。
 さて次回は、回想編か、コメディで。

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