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このお話は、AngelBeats!四話前後まで視聴されていること前提で書いてあります。

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「ユイのかちこみラジオ〜! 第一回のお便りはSSSのM.Oさんからのお便りです。『遊佐さん、ソニックフォームのバリアジャケット着てみませんか。遊佐さんにはきっと似合うと思います』たまたま近くにいらっしゃる遊佐さん、いかがでしょうっ?」
「着ぐるみを着ると蒸れるので遠慮します」
「ハリネズミの方のソニックを間違われているようですね。M.Oさん残念でしたっ! それでは次のお便りです――」




























































































  

  


「今度の『SSS』(死んだ 魚のような目 してんじゃねーよ)の作戦なんだけど――」
 対天使用作戦本部。そこにある自分の席で、SSSのリーダーであるゆりはいきなりそう言った。
「あ、今はそう言う名称なのか」
 窓から見えるどこまでも続く風景を見ていた音無が振り返り、そう言った。大本の名前は『SSS』(死んだ 世界 戦線)である。が、この名称がちょくちょく変わっていることは、音無がSSSに参入してからもよくあることであったのだ。
「元不良の熱血教師が使いそうだよね」
 と、大山。
「……くだらん」
 愛用のハルバード(斧と槍を一体化した重量級の武器。扱うのには熟練した腕が必要)を担ぎ直し、野田がそうひとりごちる。ただ、それはゆりに対することではなく、音無や大山の発言に対するものであろう。彼のゆりに対する忠誠は、誰もが知るところである。
「まぁ聞きなさい」
 他にも数名が議論を始める中、椅子の上で足を組み、ゆりは静かにそう言う。
「天使の評判と本人への効率的な精神的ダメージ、そして少なからず肉体的ダメージをも負わせる、理想的な作戦よ」



『天使を、おびき出せ 〜壮絶学食編〜』



「ふと、思いついたのよ」
 SSSの会議用グループウェアであるブリーフィングマネージャを立ち上げて、ゆりは言う。
「あなた達、お笑い芸人の鞠尾兄弟が出てた番組『イタ飯かっ!』って番組、知ってる?」
「あー、あったねそういうの」
「向こうではまだやっているのでしょうか」
 大山と高松が即座にそう反応した。
「俺は……思い出せないな」
 と、音無。彼はこの世界に来たときから、いくつかの記憶が欠如しているのである。
「じゃあ音無君向けに説明するわ。あの中にコーナー名は忘れちゃったけど、飲食店とかのメニュー上位十種を注文して、その全てを食べないと帰れないっていうルールの元、出演者がレストランとか居酒屋のメニューを一品ずつ注文していくものがあるのよ。それを作戦に利用するの。天使対、私達ってね」
「……質問、いいか?」
 手を挙げて、音無。
「何かしら?」
「上位十種に入っていないのを選んだ場合、それはどうなるんだ。得点が下がったりするのか?」
「別に大きなペナルティは無いわ。ただ全部食べればいいだけよ」
「そうか、それなら良いか……って、ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?」
 首を傾げるゆりに、音無は多少口の端をひきつらせて、
「全部、食べる?」
「そうよ」
「十位全部を当てるまで?」
「そう」
「それって、順位が埋まるごとに大変なことにならないか? 確率的に考えて……」
「悲観に過ぎるのはやめておきなさい。要は人気メニューを推理すればいいのよ。それに……」
 にやりと笑い、ゆりは続ける。
「向こうは天使ひとり。こっちは――そうね、四人もいれば良いでしょう」
「それ滅茶苦茶卑怯だよな!?」
「勝つか負けるかの展開に、卑怯も桔梗も無いわよ」
 騎士道精神なんて、いまどき流行らないわよ。と、頬杖をついてゆりは言う。
「天使が学食に通い詰めているって情報は無いわ。対し、私達はオペレーション・トルネードを行う毎に食堂を利用している。どれが人気メニューか、大体はわかるわ」
「そうかもしれないが」
 一抹の不安が拭えない音無である。
「とにかくこれで、天使のお腹はぽんぽこりん、評判はずんどこりんってことよ。名案でしょ?」
 どうだと言わんばかりに、ゆり。
「それはわかった。で、どうやって天使をおびき寄せるんだ?」
「……」
「……?」
「……!」
「考えてなかったのかよ!」
「アホですね」
 本部の片隅で耳を澄ませていたユイがぼそっと呟く。
「いいですか」
 そこで陽動部隊と本隊との連絡役を担っている、遊佐が手を挙げた。
「陽動はどうするのでしょう。ガルデモはまだ動かせませんが……」
 遊佐の一言で一瞬場が静まり返った。その理由を、皆がよく知っていたためである。
「――イベントよ」
「イベント?」
「そう、生徒の自主的なイベントってことにするの。それなら規則に違反しているけれど強行的に止めることはできない。つまり交渉の余地が生まれるわ」
「なるほど……」
「食堂を占拠したら大々的に広告し、教師とかが邪魔しに来たら抵抗するんじゃなくってイベントをしたいんだって訴えるの。そうすればNPCである一般生徒と教師陣は判断できなくなって行動不能に陥るわ。そこまで持ち込めば――」
「――天使が、出てくると」
 と、音無がゆりの後を引き継いだ。
「そういうこと。そうと決まれば後は配属ね。高松君と、大山君、イベントの司会をお願い」
「心得ました」
「了解」
「実際に天使と対決するのは私、日向君、音無君と……あとひとりね」
「ちょっと待ってくれよ。発案者のお前はともかく、なんで俺と日向なんだ?」
「お。俺を心配してくれるのか、嬉しいぜ」
 音無の肩に手を置いて、日向がそう言う。
「だって日向君、前に食堂で何でも食べるぜって言っていたんだもの」
「あー、そういやそんなこと言ったっけな」
「じゃあ、俺は」
「何でも食べそうじゃない」
 にっこり笑って、ゆり。
「どういうイメージだよっ」
「言葉通りよ。記憶がないってことは、特に好き嫌い、無いんでしょ?」
「そりゃまぁ、そう言うことになるが……」
 釈然としない音無である。
「それじゃ後ひとり……そうね、甘いものに強い――」
「はいはいはい! やりますやりますっ!」
 そう言って元気いっぱいに手を挙げたのは、ユイであった。
「お前いけんのかよ、そんなちっこいなりで」
「うるさい黙れ、女の子は甘いものは無限大の別腹なんですぞっ!」
 腕を組んで不敵に笑い、ユイはそう断言する。
「それじゃ、この四人で決定ね。残りのメンバーは会場の整備・警備に回って頂戴。後は天使の誘導だけど……音無君、兼任で悪いんだけどお願いできる?」
「俺?」
「そうよ。何かと天使を気にしてるでしょ?」
「そりゃ、そうだが……」
 それが成功しなければ何もかもが失敗するのではないか。そう思う音無である。そして、その懸念は現実のものであった。ただ、ゆり達が気付いていないだけである。
「お願いね」
 あくまで気楽な様子で、ゆりは音無の肩を叩いたのだった。:
「それじゃオペレーション『食い倒れ人形(レッド&ホワイト)』、スタート!」



■ ■ ■



「という訳なんだ」
 夜、学園大食堂前。
 現場を占拠しイベントをでっち上げた7分30秒後のこと。
 女子寮からまっすぐやってきた天使に、音無はただひとり立ち塞がって、事情を説明していた。
 ただし、彼の背後には狙撃手が数名待機しており、高い命中精度を誇るPSG−1やM700、誰かが趣味で作ったとおぼしきM16A1が一斉に天使を狙っていた。万一の強行突入を警戒してのことである。
「……そんな計画を承認した覚えは無いけど」
 小首を傾げてそう呟く天使に、音無は慌てて、
「学生が自主的に始めたんだよ。それで、シード選手としてご招待しているわけだ」
「あたしを?」
 再び小首を傾げ、天使。
「そう、お前を」
「……いいわ。わかった」
 そう言うことになった。



「かかった! これでもう勝ったも同然!」
 武器製造を請け負うギルドから数名を会場の大道具係として借り、その結果猛スピードで作成された会場となるセットの中で、ゆりはガッツポーズを取った。
「なんか天使に悪いことしているような気がする……」
 報告したはいいが、少々気に病んでいる様子で、音無。
「いいじゃん。食べるのは自己責任なんだからさ」
 そんな音無の肩に手を置いて、日向がそう言う。
「そうですよ。仮にお腹が膨れるとしてもそこの先輩だけです」
「なんでお前だけなんだよ。一緒に膨れろっ」
「お、女の子にそういうこと言うかーっ!」
「天使だって、女の子だぞ……」
 呆れたかのように、音無。
「それ以前に、天使なのよ。まぁ、今回は涙目ぐらいにはなってもらうけどね」
 そこで、通信機から連絡が入った。
『こちら遊佐。天使が所定の位置に入りました』
「了解。さぁ、いくわよみんな。楽な戦いだと思うけどまぁ、気を抜かないようにね。うふふふふ……」
 気楽な様子で、ゆりがそう言う。その目は、勝利を確信していた。



■ ■ ■



 結果。
「ごちそうさま」
 天使、上位十位をすべて一発で(しかも順位順に)当て、完全無比のストレート勝ち。
 一方の、SSSはと言うと――。
「い、今ので何品目……?」
 テーブルに突っ伏しながら、ゆりがぽつりとそう呟いた。
『80品目目です』
 通信越し聞こえる遊佐からの報告は相も変わらず平静であり、それ故に憐憫のひとかけらも無いように響く。
「俺もう食えねーよ……」
 普段から緩めているYシャツのボタンをさらに緩めて、日向。
「俺も……」
 同じようにネクタイ緩め、音無。
「天使を狸腹にするどころかこっちが狸腹ですね……」
 他のメンバーに見られないようにお腹をさすりつつ、ユイがそう言った。ちなみに、スカートのホックをこっそり外していたりする。
 ……ゆりも、である。
 故にふたりとも、下半身を活用した――つまり全身を使った――突っ込みを封印していた。派手に動いて内臓から逆流するのを防ぐためでもある。もっとも、日向も音無もぼける余力などこれっぽっちも無かったが。
「おい、どうするんだよこれ」
 80品目目のニンニクの芽入りおやき(ランク37位)を何かの仇のように見つめつつ、音無。
「食べるわよ。これで私達がギブアップしたら余計惨めじゃないのっ」
 絞り出すような声で、ゆりがそう言う。
「やるしかないな……」
 額に浮いた冷や汗を拭き、日向。
「もう無理です〜」
 涙目になって、ユイがそう言う。
「泣き言は無用! 次行くわよっ! 『せんべい汁』!」
『……52位です』
「くうぅぅぅっ!」
「っていうか何品目あるんだ、学食のメニュー……」
 結局、音無達がランキングを制覇したのは92品目目。海苔巻きじゃがバター揚げ(ランク10位。串一本につきジャガイモをみっつ搭載)を、ユイが頬をリスのそれのように膨らませて平らげたことにより終わりを告げたのだった。
 もう二度とやらんとは、発案者であるゆりの言葉である。



Fin.




あとがきはこちら









































「お腹いっぱい……けぷっ」
「――っ……」(ものすごく恥ずかしかったらしい)











































あとがき



 半ば衝動的にAngelBeats!を始めてしまいました。
 まだ物語全体が見えていないのでどうなるのかわかりませんが、今までの話の脇にある物語として読んでいただければ幸いです。
 さて次回は……本編次第ですね^^。

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