超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「駆け出しの時はカバーとかもよくしていたんだ」
「へぇ、芳野さんも参考にしていた曲とかあったんですね。どんな曲なんですか?」
「ふむ、久々に歌ってみるか……『どこからみてもスーパーマンじゃない――♪』」
「渋っ!」























































































  

  


「風子、突如として文学に目覚めまして」
 突然、ふぅさんはそう言った。
 週末の土曜日、カフェ『ゆきね』でのこと。
 学校帰りの時はお互い美術講師と生徒という間柄だから、こういう休日のときだけになるのだが、わたし達はときどきこうやって喫茶店やファミリーレストランで取り留めもなく話をすることがあるのだった。
「もうこんなに書き貯めました」
 そう言って、400字詰めの原稿用紙で出来た束をどさっと置く。
「おお」
 なんというか、これはすごい。データ入力化した昨今で原稿用紙という点も含めて。
「それで、汐ちゃんの演劇部用にと演劇の台本を書いてみました。読んでみてください」
「どれどれ……」
 わたしは、その台本に目を通してみた。



『スターフィッシュガールズ!』



■ ■ ■



風子? 風子。
年? 秘密。
趣味? ヒトデ。


みたいです。



■ ■ ■



「……これさ」
 わたしは原稿用紙から顔を上げて、ふぅさんにそう言った。
「携帯小説じゃない?」
 しかも、なんというかそのまんまの。
「よくわかりませんが、携帯できない小説ってあるんでしょうか」
「そっちこそよくわからないんだけど……」
 超大判の本なら、或いは? って論点がずれている。
「で、全体ではどういうお話なの?」
 わたしはそう訊くと、ふぅさんはいつになくきりっとした貌で、
「はい。とある女子高生が宇宙戦艦に乗って大活躍するスペースオペラです」
「あの書き出しでそうなるんだ!?」
 斬新というか何というか……ん?
「ちょっと待ってふぅさん。あれ、冒頭だと名前が風子になっていたけど」
「はい……?」
 ふぅさんはよくわからないといった様子で台本を見直しはじめ――。
「うっかりしてましたっ!」
 うっかりにも程があるような気がする。
「こうなったら仕方ありません。汐ちゃんのお母さんの名前、借りて良いですか?」
 それゆけ! 宇宙戦艦オカザキ――もといフルカワナギサ?
「うちのお母さんは女子高生時代に宇宙戦艦に乗って大活躍してないから……多分」
「では汐ちゃんそのもので」
 それゆけ! 宇宙戦艦オカザキウシオ。って頭に宇宙戦艦と付くと男の人みたいにみえる。元々、男性でも女性でもありな名前だけど。
「これって、演劇部の台本なんだよね?」
 その役をわたしが演じようが演じまいが、混乱が起こるのは間違いないと思う。
「でも風子の名前だとどこか気恥ずかしいです」
「うん、わたしもね。流石に恥ずかしいかな」
 この前たまたま読んだ漫画に、読みまで一緒な同じ名前の人がヒロインの漫画があった。容姿はあまり似てなかったけど、でもなんとなく感情移入しやすくなってしまうし、どこか照れたような感じになってしまうのだ。
「それに、宇宙だと今度の演目に被っちゃうし」
「宇宙と宇宙で被ってしまいましたか! 孤独のグルメですっ!」
 ショックを受けたかのように叫ぶふぅさん。にしても孤独のグルメって……。さすがに宇宙は食べないと思うけど。
「それで、どんなお話なのでしょうか」
 その、すぐさま復活するタフな精神力にはあやかりたいと思う。
「えっとね……宇宙での配送業が当たり前にある時代で――」
「ほうほう、それでそれで?」
 好奇心満載といった様子で、ふぅさん。
「で、その冴えない宇宙輸送業のふたりが、これも冴えない若者の依頼で恋人の教授を探しにおんぼろの宇宙船で宇宙を行くわけ。わたしは、途中で合流することになる故郷を探す歌が好きな宇宙人の役ね」
 それで、今回はわたしは着ぐるみを着ながら歌わなくてはならないのだった。自分で割り振ったものとはいえ、なかなかハードなものにしてしまったと思う。
「冴えないんですか。冴えた方が舞台映えすると思いますが」
 当然の疑問を口にするふぅさん。
「その冴えない三人が、普段ならまずやらないことを仲間のためにやる。そこに至るまでの心境の変化が見せ場であり、テーマなのよ」
 元となったのはわたしが生まれるずっとずっと前のアニメなんだけど、あっきーがちゃんと録画保存しておいたおかげで観ることが出来たのだ。時折主人公の男の子を女装させて学校に放り込んだりするロボットもの(驚くべきことに、本当にあるのだ)とか、お母さんと声がそっくりなヒロインのファンタジーとかあるのだけれど、基本的にあっきーコレクションはどれもためになっていたりする。
「なるほど……」
 ふぅさんは納得したように頷いた。
「要するに、岡崎さんですね」
「なんでそこでおとーさんが出てくるの!?」
 今度はわたしが大きな声になってしまった。
「違うんですか?」
 きょとんとした様子でふぅさん。
「え? あー、……うーん?」
 指摘されて気が付いた。ふぅさんの言う通り、違いはない……のかもしれない。。
 無意識にやっちゃったんだろうか、わたし。でもおとーさんって別に冴えないってわけじゃないと思うし、いざというときは格好良い――あれ? ってことは普段はやっぱり冴えない?
「それはそれで良いと、風子は思います」
 混乱するわたしを気遣ってくれたのか、ふぅさんはそう言ってくれた。
「あ、ありがとう……」
「――で、汐ちゃんはどういう男性の方が好みなんですか?」
「ふぁい!?」
 ふぅさんがそういう話題をするとは思わなかったので、少しばかり噛んでしまうしまうわたし。
「えっと……悪ぶっていても本当は良い人かな。いざという時には正しいことのために体を張ってくれる人」
「それって岡崎さんじゃないですか」
「そうともいう」
「今度は断言ですかっ!」
 そう、今度は断言する。何故なら娘というものは父親を理想の男性像をみると言うからだ。わたしがそう説明すると、ふぅさんはちょっと眉値を寄せて、
「汐ちゃん、普段岡崎さんをダビデ像みたいな格好で想像していたんですが――ちょっと将来が心配です」
「いや、男性像ってそういう意味じゃないから」
 流石にそんな想像はしたこともない。
「そういうふぅさんはどうなの?」
 今度はわたしの番。テーブルの上に頬杖を突いてわたしがそう訊くと、ふぅさんはちょっと間を置いて、
「風子ですか。風子は……ヒトデのような、男性が……」
「うーん、どこかの漫画で見たような気がするけど、普通は無理かなぁ……」
 確か、荒川河川敷でどうのって漫画だった気がする。
「まぁ容姿はともかく、風子がいつもヒトデに抱いているような感情を持てる人がいいです」
 それって、一緒にいると常にトリップしているってことなんだろうか。それは何というか、ふぅさんの彼氏(想定)が相当苦労するような気がする。
 でも、一緒にいるととっても安心できる人だったら……それは、とても幸せなことなのかもしれない。
「わたし達が、同じ人を好きにならなければいいわね」
 だから、わたしはコーヒーカップを指で軽く弾きながらそう言った。
「ヒトデみたいな岡崎さんですか。それは流石に無理があり過ぎます」 ……う。思わず想像してしまった。
「うん、それは確かに無いかなぁ……」
 せめて、被りものにしてもらいたい……かな?
「でも、もし居たら一声おかけしますのでご心配なく」
 ミルクたっぷりのカフェオレを口に運びながらふぅさんはそう続ける。
「風子、汐ちゃんとは対等な勝負がしたいので」
 それは幼馴染み兼親友として、とてもありがたいことだった。
「じゃあ、そのときは全力全開でね」
「格闘だけは、勘弁してください」
 ……えー。



Fin.




あとがきはこちら









































「というわけで新しい台本です」
「どれどれ……」



■ ■ ■



「ご機嫌はいかがかしら? 風子」
「とてもよろしくてよ、あゆ」

「また、おもしろい本を読んだのよ」
「まぁ、なんていう本?」
「ええと……。あぁ、タイトルを忘れてしまったわ」
「どんなお話だったのか、聞かせていただけるかしら?」
「ええ、よろしくてよ」

 主人公は両親を亡くした孤独な少年。けれど彼にはルームメイトをはじめとする四人の仲間が居た。ある時、主人公と四人の仲間は周りを巻き込んで野球のチームを作っていき、その輪を一気に広げていく。そして、その輪は、その絆は、いつかしか掛け替えのないものになっていくのであった……。

「素敵なお話ね」
「その主人公のルームメイトには、決まった口癖があるの」
「まぁ、どんな?」
「それはね――『筋肉筋肉ぅ!』」



■ ■ ■



「どうでしたかっ?」
「うん……色々な意味で、駄目」
「駄目ですかっ! 風子絶望しました!」










































あとがき



 ○十七歳外伝、幼なじみとだべり編でした。
 ちょっと忙しい日々が続いて、ふと休みの日の時にふと浮かんだものをそのまま書いてみたらこんな話になりました。たまにはまぁ、こういうのもいいんじゃないかと思います。友達同士の会話的に考えて。
 さて、次回ですが……何にしようかな?


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