超警告。リトルバスターズをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「直枝さん主演で、仮面ライダーWってどうでしょうか」
「いいかもしれないけど、何が別の視点で見ていない? 西園さん……」

















































  

  


「なんか面倒くせぇなぁ……」
 もはや完全にリトルバスターズのものとなった部室のロッカーを開けて、真人はそう言った。
「そう言わないの、真人。洗濯、圧倒的にしやすくなったでしょ?」
「まぁ、そうだけどよ」
 僕の言葉にそう愚痴りながらも、真人は素直に体操着に着替え始めてくれる。
 そう、少し前から僕らバスターズの練習時には、全員体操着に着替えることにしたのだ。以前から女子の有志が着替えていたけど、それだとどうしても服装的にちぐはぐに見えることと、さっき僕が真人に言ったように洗濯関係が圧倒的に楽になるからだった。
 それに、体操着で練習するだけで何か本格的になった気がする。これは、僕の自己満足にすぎないのかもしれないけど。
 さてと、僕も着替え着替えっと――。
「……あれ?」



『消えた体操服』



「なんだ少年、今日は制服か」
 やはりというか何というか、制服のままマウンドに上がってきた僕にいち早く気が付いたのは、来ヶ谷さんだった。
「着替えるのは面倒だが、少年も体操着になるというから、おねーさんはそれを了承したんだぞ。何せ――」
 そこで来ヶ谷さんは一息付くと拳を握ってあらぬ方向を向き、
「――少年の短パン姿とか、好きだからっ!」
「セクハラだからね、それ……」
 しかも大声で言うことじゃないと思う。
「はっはっは。照れるな照れるな」
 と、僕の言うことに全く耳を貸さない来ヶ谷さんだったけど、
「で、何かあったのだろう?」
 急に表情を改めて、そう言った。
「わかっているなら混ぜ返さないでよ……」
 少し呆れながら、僕はこれまでの経緯を説明する。
「体操服が、無くなった?」
 こちらの想像する以上に真面目な貌で、来ヶ谷さん。
「それは、ゆゆしき事態だな」
 その頃には、バスターズの全員が異変を察して集まっていた。
「俺のでサイズが合えば良いんだけどよ……」
 と、真人。
「一回りどころか、二回り違うもんね」
「俺の胴着というわけにもいかんしな……」
 謙吾が重々しくそう言う。確かに胴着だとある程度サイズ差を誤魔化せるけど、気慣れていない僕だと動くのに難儀するだろう。 
「恭介よ、こんなかで理樹に一番体型が近いのはお前だけだ。何とかしてやんねぇか?」
 そう恭介に振ったのは、意外というか何というか真人だった。けれど恭介は額に皺を寄せて、
「それをしたいのは山々なんだが……悪い理樹。予備の体操着、この前燃やしちまったんだ」
 淡々とそう言う。って、燃やした?
「何をしたのさ」
「この前、ちょっと自爆しちまってな……」
 何故か遠い目になって恭介。何の? とは怖くて訊けない僕だった。
「いやまあ、とりあえず学校側に捜索届けを出すとして、今日は悪いけど僕だけ制服ってことで――」
「はいっ!」
 まとめようとしたところで、それを遮るように挙手をしたのは、予想外の人物だった。
「ど、どうしたの小毬さん」
「うん、あのね理樹君」
 うまく対応できずに上擦ってしまう僕とは違い、小毬さんはいつも通りの笑顔で、
「私の、貸してあげよっか?」
「……へ?」
 今、何て?
「理樹君なら、いいよ?」
「い、いやいや。いやいやいやいや!」
 思わず声が裏返ってしまう僕(どうでもいいけど、僕の声が裏返ると鈴そっくりになるらしい。あまり嬉しくないけど)。見れば真人、謙吾、そして恭介ですら固まってしまっている。
 そして、それ以上に驚いているのが小毬さん以外の女性陣だった。無言で驚く鈴を始め、
「なんたるナチュラル……」
「予想外の展開ですね……」
「だ、大胆ですー……」
「こまりんマジパネェッス!」
 それぞれらしいと言えばらしい反応を示している。けれど小毬さんは意には介していないようで、
「うーん、そうかな?」
 首を傾げてそう言った。
「ゆいちゃんゆいちゃん、恭介さん達と私達だったらどっちが理樹君とサイズが近いのかな?」
 小毬さんにそう言われて、来ヶ谷さんは僕をさっと視ると、
「私達女性陣だな」
 あ。そんなにあっさりすっぱり言われると、ちょっと哀しい。
「だよ、ね。だったら、一回ぐらいは貸してあげても良いと思うんだけど……駄目かな?」
 沈黙が、女性陣を包む。
 しばらくして、静かに手を挙げたのは葉留佳さんだった。
「それだったら私のでも、いいヨ?」
 そっぽを向いたまま、そんなことを言う葉留佳さん。
「わたしのでも、構いません」
 スコアボード代わりのスケッチブックを抱え直しながら、西園さんもそう言う。
「無論、おねーさんもOKだ。何だったら今すぐ脱いで渡そうか?」
「いや、いらないから……」
 ここで、やっと女性陣の言うことが理解出来てきた。
「あのさ。みんなもうちょっと、自分のこと大事にしようよ……」
「まるで不良少女に対する、新任教師みたいな台詞ですね」
 自分もその範囲に含まれていることに、全く気付いていない様子で西園さんがそう突っ込みを入れる。
「はぁ……」
 と、そこで皆から距離を置いていたクドがため息を付いた。
「どうしたの、クーちゃん?」
 小毬さんが心配そうに訊くと、クドは一旦間を置いて、
「皆さんが羨ましいですー……」
 そんなことを言う。
「うーん、どして?」
「私もリキに貸してあげたいのですが、私のさいずだとどうしても合いません……仮にリキが履いたとしてもぴちぴちになってしまいます……」
 その瞬間、全員が沈黙した。ややあって、来ヶ谷さんが――。
「いや、有りじゃないかそれは?」
 同時に、西園さんがはたと膝を叩き、葉留佳さんが派手に噴き出す。
 なんだろう、今すぐこの場から逃げ出したい気になるのは。
 っていうか、今すぐ逃げないとクドのを借りることになりかねない――そんな、学生時代の黒歴史堂々トップ思い出を作るのだけは避けないと……!
「鈴っ!」
 僕は、最後まで黙っていた鈴を頼ることにした。
 来ヶ谷さんにはかなわないかもしれないけど、西園さん達になら――! 
「――わかっている、理樹」
 組んでいた腕を静かに解きながら、鈴は力と意志の籠もった声でそう言った。
「あたしのを、貸してやろう」
 ちっがーう!
 頭を抱えてしまう僕。
「ふむ、これだけ数が多ければ、少年とのサイズも良いところまで合わせられよう。さっそくだが、正確な数字を――こら少年、胴回りを隠すな」
 計れなくなるだろう、と来ヶ谷さんは言うけど、僕としてはそうしたいのだからしょうがない。
「――少年」
「履かないよ、僕は」
 しばし、来ヶ谷さんと視線を交錯させる。
 いつもならここで僕が押し負けてしまうのだけれど、今回に限っては来ヶ谷さんの方がふっと表情を和らげ、
「……仕方ないな」
 そう言って、ふらっと部室に戻っていく。その意図を計りかねて、僕らが顔を見合わせている間に来ヶ谷さんは紙袋を手に戻ってきて、
「ほら、少年にプレゼントだ」
 そう言って、それを僕に放ってよこした。
 僕は早速それを開けてみる。中に入っているのは体操着だった。
「助かるよ、来ヶ谷……さん……」
 礼を言いながらシャツを取り出し、続いて下のを取り出そうとして僕は言葉を詰まらせた。何故ならそれは男子の短パンでも女子のスパッツでもなく、真っ赤な生地に白のラインが入ったブルマだったからだ。
「……これを、僕にどうしろって?」
「似合うと思うぞ、少年」
「似合わないよっ」
「有りだと思います」
「無いから! 絶っ対無いからっ!」
 だからそんなに期待した目で見ないでっ、西園さん!
「姉御、強引なのは良くないですヨ。第一そんなの着たら理樹君のパンツ、サイドから丸見えですカラ」
 それはそれで見てみたいような気がしないでもないような、と葉留佳さんがあまり想像したくないことを言いつつフォローに回ってくれる。
「む、そういえばそうだな……」
 ノーパン直履きという手もあるが、と不穏なことを呟く来ヶ谷さん(と、それを聞いて口許を押さえて悶絶する西園さん)に、全力で無い無いと手を振る僕。
「その心配はないぞ、来ヶ谷」
 と、そこで今まで固まっていた恭介が口を挟んだ(真人と謙吾はまだ固まっている)。
「理樹はいつだって、ブリーフだからな」
「恭介!」
 そういうことはあまり口に出して欲しくないのにっ。
 けれど、その発言そのものは取り消せるわけもなく、
「なん……」
「……だと」
 そろって濃ゆい貌になる葉留佳さんと来ヶ谷さんだった。
「あぁ――」
 西園さんが感極まった様子であらぬ方向に感謝の祈りを捧げている。
「まだ、絶滅していなかったんですね……!」
 何だろう、その天然記念物扱い。
「まぁ、何はともあれ」
 くっくっくと、来ヶ谷さん。
「問題はノープロブレムですネ」
 けっけっけと、同じ単語を繰り返す葉留佳さん。
「覚悟はよろしいですね、直枝さん……?」
 最後にふっふっふ、と西園さん。
 直後、三人は僕とのと距離を一瞬で詰めて、
「「「さぁ、これを……!」」」
 三人とも、目の色が変わっている。
「それだったら、スパッツの方がまだ良いよっ!」
 思わず叫ぶ僕。
 途端、冷たい風がマウンドを駆け抜けた。
 ――あ゛。
「……その言葉が聞きたかった」
 いつも通りの沈着冷静な貌で、来ヶ谷さん。
「各々方、よろしいな? 理樹君ともっともウエストが近いものが、予備の体操服を進呈、だ」
「いいだろう」
「異議なーし!」
「無いですー」
「どうぞ」
「『ざわ……ざわ……!』」
「いや、盛り上がっているところ悪いけどさ……もういいよ。制服でやるから」
 口先が尖っていることを意識しながら、僕。こうなったらもう、仕方ないだろう。
「ふむ……? そうか、わかった」
 ひとつ頷いて、来ヶ谷さんはそう言った。
「……今、何て?」
「わかったと言ったんだ。少年が嫌がることを強制する趣味は無いからな」
 着て貰えれば万々歳だったことに代わりは無いがな、と来ヶ谷さん。
「ただまぁ、少年の体操服を取り返すことには全力を注がせて貰うぞ」
「ああうん、それはむしろお願いするよ。あ、でも暴力沙汰は避けてね」
「努力しよう。まぁ、とりあえずはさきほどから校内外のオークションサイトの監視を始めておいた。現時点で該当数はゼロのようだ」
「い、何時の間に……」
 携帯電話をちょこちょこいじっているのは見ていたけど、それだけでそこまで出来るものなんだろうか。来ヶ谷さんだから、やってのけてしまったんだろうけど。
「本格的な捜査の方は練習が終わったあたりにでも、始めようか。――しまった。自白剤が切れていたな」
「……追加するね。暴力沙汰プラス、薬品関係も禁止の方向で」
 呆れながら他に何か禁止事項はないか考える。暴力通り越して抹殺しちゃいました、は流石に無いと思うから言わなくていいだろうか――、
「あの」
「……はい?」
 そこで不意に、背後から声をかけられる。
「直枝理樹君はこちらにいらっしゃいますか?」
 見ると、チアリーディング部の女子だった。



■ ■ ■



「そういうことだったんだ……」
 ひたすら頭を下げるチアリーディング部女子――部長さんらしい――に対し、僕はそう呟いた。
 要するに、その部活の後輩が、やってしまったらしい。
 そして事の重大性に気付いて青ざめていたのを、この部長さんが気に留めて話を聞いたら……とのことだった。
「本当に申し訳ありません」
 と謝るチアリーディング部の部長さん。
「いや、別に良いよ」
 と、僕は言った。
「でも……」
「どうにかなっていたらともかく、こうして普通に帰ってきたんだしね。もう二度としないのなら僕からは特に言うことないから」
「優しいなぁ、理樹くんは……」
 葉留佳さんがぽつりと言う。
「良いじゃないか葉留佳君。それもまた、少年らしくて」
 と、来ヶ谷さん。
「そうだね、理樹君の言う通り見つかったんだし」
「めでたしめでたしですー」
「まぁ、よい落とし所でしょう」
「いっけんらくちゃくだな」
 みんな好き好きにそう言っているけど、どれにも否定意見はなかった。
「何にせよ、もう気にしないでね」
「そう言って貰えると、助かります。近いうちに本人にも謝りに行かせますので。あと……」
 そう言って、チアリーディング部の部長は、少し大きめの紙袋を僕に手渡した。
「お詫びの品です。どうか受け取ってください」
「あ、どうもありがとう……」
 紙袋を受け取ってそう言うと、チアリーディング部の部長さんは感極まったように一礼して、
「中身は私達と同じユニフォーム一式です! お似合いになると思いますよっ!」
「似合わないからからっ! 着ないからっ!」
 っていうか、来ヶ谷さんも西園さん葉留佳さんに加えて、小毬さんもクドも鈴ですら僕に期待の眼差しを向けないでっ。
 ああまったくもう、なんでこうなるのっ!



Fin.




あとがきはこちら













































「……ひとつ訊いて良い? 笹瀬川さん」
「わたしくに答えられることでしたら構いませんわ、二木さん」
「なんで今日は、みんなサングラスをかけているのかしら」
「……それはわたくしにもわかりませんわ」
「あー、うん。みんな集まったかね? それでは今日のお題――に行く前に、西園女史、前回のssから本日までの
日数を教えてくれ」
「はい。前回の『その名はローレンス』の掲載が2008年5月30日。それから実に491日経過しています」
「ええっと、一年は365日だから1年と……1年と……」
「1年と約4ヶ月ですよ、三枝さん」
「サンキュー、クド公。つまりそれだけ待たされたってことですね姉御!」
「まぁそう言う訳だ。というわけで今回は作者に――」
「お仕置きですね姉御、わかります!」
「待ちたまえ、葉留佳君。まぁお仕置きするのは簡単だがね、それでまた出番が減るというのは困る」
「う……、それはそうですネ」
「そこでだ。遅筆に喘ぐというならば、我々で話を決めてしまおうと思うのだ。これが今回のお題だな」
「ん」
「鈴君が一番手か。どうぞ」
「猫がたくさん出てくる」
「ほう、それで?」
「あたしが嬉しい。終わり」
「……次」
「はーい!」
「小毬君、どうぞ」
「純情ラブコメ路線って、どうかな?」
「それだとヒロインがひとりに絞られないか? 争奪戦をやれというのなら、本気を出してしまうぞ? 私なら」
「はいはいはいはい! ホラーなんてどうっすかホラー! もうぐちょぐちょのげちょんげちょんなのでひとつ!」
「小毬君がすごい真面目な顔でNOと言っているのでやめておこう。あとそれな、作者的にもノーだそうだ」
「はい。宇宙を目指す、あすとろのーつものはどうでしょう?」
「クドリャフカ君、それは前にやっているぞ」
「はい。恭介さんと直枝さんでやらな――」
「はい次」
「おーほほほほほ! わたくしを主演に冒険ものでいかがかしら?」
「それは構わないが、君が蛇やら蜘蛛やら蠍やらと絡むことになるが、良いか?」
「……遠慮しますわ」
「で、そう言う姉御は?」
「ふむ、私なら――そうだな。あの世で天使と」
「ストップ! 姉御ストップ!」
「収拾つきませんね……」
「――いつも通りで良いんじゃないの?」
「ふむ? どういうことかね、二木女史」
「言葉通りよ。無理して他のジャンルに行っても私達じゃ無理があるでしょ」
「な、なるほど……」
「そうかもしれないな……いや、慧眼と言うべきか」
「まぁ、続きを書いて貰うためにも、コンシューマ版が速く出てくることを祈っていた方が良さそうね」
「それでわたくしの出番増やしていただけるのかしら……」
「……私のもね」





































あとがき



 来ヶ谷アワー通り、久々のリトルバスターズでした;
 なんかもう久々だったんでペースを掴むのに時間がかかってしまいましたが、次回はもうちょっと早めにいければいいなと思っております。
 次回はコンシューマ版の前に……出ると良いなぁ;

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