超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「ぷち演劇シリーズその2。持っていかれて最後に笑っちゃうなんとか。この主人公の役ってなんか違和感無いような……」
「その主人公の父役だが、なんか違和感無いような……」
「双子の姉役があたし? なんか違和感無いような……」
「その双子の妹役ですけど、なんか違和感無いような……」
「風子が知性的でグラマラスな眼鏡の方ですね。違和感ありません!」
「「「「いや、それはないから」」」」









































































  

  


 今年の桜は例年より咲き誇っているように見えた。
 それを見逃さなかったオッサンと、我が娘汐の発案により、俺達は皆で花見に来た。
 そのオッサンはと言うと先程不注意な発言をして早苗さんとマラソンを始め、汐はというと風子達と談笑している。
 それはまぁそれで良いんだが。
 それはそれでいいんだが……。
「あははー、なんかすっごい酔っちゃったー」
 陽気を通り越して頭のネジが外れた声で、杏が俺に寄りかかかった。言いたくはないが、二の腕に胸が当たっている。
「……私もだ」
 こっちは普段と変わらない声だが、真っ赤な顔ですり寄る智代。こちらは何がとはあえて言わないが、肩が挟まっていたりする。
「今日は朋也の家に泊まっちゃおうかなー?」
「いいな。私もそうしようか」
「お前等な……」
「あら、何されたって良いわよ? ねー、智代」
「ああ、私は構わないぞ、藤林」
「俺が構うわっ。っていうかお前達ふたり同時に来てどうする気だよ」
 基本的に協調姿勢をとるふたりだが、こういったことに関してはお互いに足を引っ張ってしまう傾向にある。今回もそれを期待しているのだが……、
「どうするって……ふたり一緒でも、良いわよ?」
 あっさりと杏は、そう言った。
「……へ?」
「ああ、構わないぞ。なんなら同時でも」
「ちょ!?」
 よくよく見れば、ふたりとも目の焦点が何処かおかしい。何というかこれは――春原を狩るときの目!?
「風子ー、ちょっとこっちきてー」
 そうこうしている間に、杏は俺達とは離れた場所にいた風子を手招きしていた。
「お呼びですか?」
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「風子も夜伽の仲間入りですか。謹んでお断り致します」
「お前もさらっと怖いこと言うようになったな……」
 どうしても汐と同年代みたいに扱ってしまう風子だが、本来は俺達と大差ないのだから、ある意味当然といえば当然と言うべきなんだろうが。
「それに汐ちゃんがいると夜伽ではなく、枕投げになります。風子、それなら喜んで参加しますが」
「枕投げで朋也ゲットできるんなら全力でやるけどね。とにかく、その汐ちゃんを今夜そっちで泊まるように出来ない?」
 風子の動きが一瞬止まった。おろらく、その意味を考えたのだろう。
「……なるほど、お互いの利益を尊重しようということですね、わかります」
「話がわかるじゃない。よろしくね」
「では早速、風子行ってきます」
「頑張ってね!」
「成功を祈る!」
 多分、失敗すると思う。




『その人の、面影』



■ ■ ■



「というわけで藤林さんと坂上さんが岡崎さんを巻き込み少子化対策に取り組みたいそうなんですが、汐ちゃんはどうしますか?」
 かなり酔っている藤林先生に呼ばれて、周りの空気がどピンクだったおとーさんのところに行っていたふぅさんは、戻ってくるなりわたしにそう言った。
 どうしようもない内容だと想像していたけど、ここまで直球ど真ん中だと、なんというかため息しか出てこない。
 さて、回答だが……そんなこと、言うまでもなく決まっている。
「無論殲滅だ。塵ひとつ残さず、な」
「ちょっと待って汐ちゃん、顔怖い顔怖い顔怖い! この前演劇でやった何とかモスクワの幹部みたいになってるからそれ!」
 たまたま側にいた春原のおじさまに即座に突っ込まれてしまう、わたしだった。
「そんなに怖かったんですか?」
 地に戻ってそう訊いてみると、
「十分すぎるくらい怖かったって。ほら、見なよ。風子ちゃん固まってるでしょ」
 なるほど……確かに、固まっている。固まってはいるけど……。
「この汐ちゃんになら、踏まれてもいいです……」
 あっちの世界へ旅立っているふぅさんだった。しかもいけないベクトルがかかっている。
「どうするんですか、おじさま。二次災害起こしちゃって」
「いや、厄介事増やしたの僕じゃなくて汐ちゃんですよねぇ!?」
 そりゃまぁ、そうなんですけど。そんなことを思っているうちに、ふぅさんの目の焦点が元に戻って曰く、
「……風子、危うくめそに目覚めるところでした」
 それはきっと、めそじゃなくてマゾだろう。あと目覚めて欲しくない。絶対に。
「めそでもボナンザでもいいからさ、風子ちゃんも言ってやりなよ。さっきの汐ちゃんは怖かったって」
「それはそうかもしれませんが、この前の劇のヤラナイカさん役は結構はまっていました」
 ヤラナイカじゃないです。それ最悪の間違え方です、ふぅさん。
「えー、でもどっちかというとヒロインの二挺拳銃なガンマンの方が似合っていると思ったけど」
「それは風子否定しませんが」
「でしょ」
「あ、その意見は確かに部内でも出ましたね」
「でしょでしょ。っていうか汐ちゃん、最近主役やらなくなったよね。なんで?」
 意外といってはいけないのかもしれないが、鋭いところを見ている春原のおじさまだった。
「それは、わたし部長ですから。そろそろ後輩で主力になる子を見つけないと」
「……なるほど、色々考えているんだねぇ」
 僕も部活を続けていたら、そんなことを考えないといけなかったのかもね。と、考え深げにそう言う春原のおじさま。
「さてと、とりあえずわたしは藤林先生と師匠を止めてきます」
 両手をぽきぽきとならしながら、わたしはそう宣言した。いつまでも放っておくと、おとーさんの精神衛生上好ましくない。
「……穏便にね。岡崎も見ているわけだし」
「努力はしますけどね。でもわたしだけ素面という状況に、そろそろストレスが溜まってますので……!」
「突っ込まないからね、僕は」
 明後日の方向を向きながら、ビールの入った紙コップを傾ける春原のおじさまだった。と、そこへ――、
「春原さん……」
 艶っぽい声と共に、誰かが背後からのしかかる。
「うひゃああああ!」
 春原のおじさまが、悲鳴を上げた。そのおじさまの背後をとって、のしっと寄りかかっていたのは、目が何処かとろんとしていることみちゃんだった。
「ど、どどどどうしたのさことみちゃん!?」
「ええと……なんだかとってもほわーんて感じなの……」
 そのままぐいっと抱き寄ってくることみちゃんに、
「ひ、ひいぃッ!」
 おじさまの身体が電気が走っているかのように震え上がる。まぁ、首筋に息が吹きかかる位置じゃ仕方がないかもしれないけど。
「……悲鳴を上げるのは予想外でした」
 わたしがそう言うと、おじさまは首をぶんぶんと横に振って、
「そりゃ見ず知らずの女の子なら鼻の下伸ばすよ! でも知り合いじゃ後で絶対後悔するでしょ!」
 ――あ、なるほど。
「なんでーやねーん」
 さらにむにっというか、むにゅっと言った感じで、ことみちゃんが抱きついている。多分これは色仕掛けとかそういうのではなく、単に突っ込みを入れているのだろう。
「う、汐ちゃん。このままだと僕の理性がやばいことになるから何とかして……」
 背中が……背中が……と呪文みたいに唱える春原のおじさま。
「風子、精神の鍛錬には良いと思いますが」
 何故かそう割り込むふぅさんだけど、わたしはそれを制して、
「それに耐えきれないって言うんだから、駄目でしょ」
 そこをきっちりと自覚しているところが、ちょっと格好良いおじさまだった。
「ええと、とりあえず……こっとみちゃーん」
「なーあーにー?」
「これどーぞっ!」
「ありがとうなのっ」
 わたしがことみちゃんに渡したのは紙コップに並々と注がれた無色透明の液体で、上質の香水のように爽やかな香りが立ち上っている。
「良い香りなのー……」
 ことみちゃんはわたしが渡したコップを迷いもせず一気に傾けて――。
「は、はらほろひれはれ……」
 意味不明な言葉と共にばったりと倒れた。
 ――計画通り!
「……何飲ませたのさ?」
 うつ伏せになってしまったことみちゃんを仰向けに寝かし直しながら、春原のおじさま。
「ボンベイサファイアです」
 その綺麗な水色の瓶を見せながら、わたし。
「ボンバへ? カクテル?」
「そのベースに使われる蒸留酒のひとつですね。アルコール度数47%ですけど」
 ビールがだいたい5%だから、コップ9杯とちょっと分になる。よほどお酒に強くない限り、ことみちゃんのようになってしまうわけだ。
「……詳しいね、汐ちゃん」
「演劇部ですから」
「それ以上は突っ込まないからね、僕……」
「そーしてもらえると、助かります」
 色々とまぁ……その、ええと、色々と。
「さーて、今度こそふたりを止めないと」
 静かに立ち上がる、わたし。
「いや、その必要は無い」
 けれど、いつの間にかすぐ側にいたおとーさんが、げっそりとした声でそう言うので、わたしの戦意はどこかへ飛んでいってしまったのだった。
「え、じゃあ、今日はふたりをお持ち帰り……?」
「違う、寝たんだ」
「え?」
「だからふたりとも酔いつぶれて寝た。後お持ち帰りってなんだよ」
「いやまぁその……」
 思わず誤魔化すわたしの袖を、ふぅさんがちょいちょいと引っ張り、
「汐ちゃん……えっちです!」
「――あのね」
 そこまで言われるような想像はしていない――と、思う。
「まぁえろいえろくないはさておいといて、父娘揃って同じ手を使うんだねぇ」
 感心した様子で、春原のおじさま。
「一緒に飲みに行く仲だからな。どれくらいで酔いつぶれるかはだいたい計算できる」
 と、疲れたかのように両肩を動かしながら、おとーさん。とりあえず皆で様子を見に行ってみると、藤林先生と師匠は、ふたり仲良く向かい合わせで、日向で眠る猫のように丸くなって眠っていた。
「ふぅん……でもま、普段は怖いけど、こうしていると可愛いもんだねぇ」
「んじゃ春原、お前が引き取れ」
「なんでだよ! 僕が持って帰ったらそれこそ大問題だろ!」
「構いませんよ、春原さん」
 おとーさんの傍らでそんな声があがる。声の主は、藤林先生の妹である椋さんだった。
「人様の旦那さんに手を出そうっていう人は、それくらいが良いお薬です」
 にっこり笑って椋さんは言う。
「いや藤林、それは流石にまずいからな
「そうだよ委員長、洒落にならないって」
 手をぶんぶんと振るおとーさんとおじさま。それに対し、椋さんは頤に指を当てると、
「では空いている部屋に一晩、一緒に押し込めちゃいましょう」
「うん、まぁ――」
「それくらいなら、いいかなぁ」
「ええ。お化粧を落とさないで一晩過ごすとどういう風になるのか、少なくとも片方は知っているはずですから――ね」
「そ、そうか……」
 おとーさんの口の端が引きつっている。
 それくらい、妙に怖い椋さんの笑顔だった。
「それまでは折角ですから……勝平さん」
「はいはーい」
 なにやら大きな袋をもって、柊のおじさまがにこやかにやってくる。
「言われなくてもわかっているよ、椋さん。酔い潰れた人には、コスプレだよねっ!」
「馬鹿殿の鬘とか?」
 眉値を寄せてそう訊くおとーさんに、椋さんは笑顔のまま、
「いえ、折角ですから、もっと本格的に……」
 そう言って柊のおじさまから黒色と翠色のドレスを受け取り、ぱっと広げる椋さんだった。どちらも、フリルがたっぷりとあしらわれている。
「偶にはこういう格好も、良いのではないかと」
 にっこり笑ってそう言うけど、なんというか空気がどす黒い。
「ねぇ岡崎、なんか委員長、恐くない?」
 ひそひそ声で、春原のおじさまがおとーさんにそう訊く。
「後ろ手に持っているものをよく見てみろ、春原」
 わたしもそっと盗み見てみる。その手には握り潰された日本酒の紙パックがあった。
「それでは着付けを始めますので……男性のみなさんは、後ろを向いていてくださいね?」
「「「は、はい!」」」
 相変わらず笑顔のままだったけど、素直に頷くおとーさんいか男性陣三名。ふりふりな格好にされてしまう藤林先生と師匠には、まぁなんというか……。
「計画通り――! かな?」
「絶対違うでしょそれ」
 今日は春原のおじさまに突っ込まれる回数が多いような気がする。
「それとさ、汐ちゃん。今回は杏達が自爆したけどさ、あんまり邪魔しない方が良いよ? そういうの」
 ふふ、やっぱりカップのサイズは私よりひとつ小さかったんですね……とか何か不穏なことを言っている椋さんを完全に置いておいて、春原のおじさまはそんなことを言う。
「どうしてです? おじさま」
 首を傾げてそう訊くと、春原のおじさまは紙コップを置いて、
「そりゃ岡崎は汐ちゃんの父親だからね。汐ちゃんの教育に責任を持たなきゃならないさ。でもね、好きとか嫌いとかはそういうのを越えたところにあるし、汐ちゃん自身も、そろそろそう言ったことがわかる歳でしょ?」
 ……それはまぁ、確かに。わたしがそう言う意味を込めて頷くと、春原のおじさまも頷いて、
「だから汐ちゃんは、岡崎の恋路を阻害しちゃ駄目ってことさ」
「いわんお世話だがな」
 即座にそう言う、おとーさん。
「そうは言うけどね、岡崎。いつか岡崎を好いてくれる女性が居て、そして岡崎もその女性を好きになったとしても、渚ちゃんに遠慮をしたらその分だけ、相手を傷つけることになるんだよ。わかる?」
「わかるさ。それに俺が渚以外の女性を好きになるなんてことは、一切ない」
「そこまで言うなら、僕はもう何も言わないさ」
 満開の桜を見上げて、春原のおじさまはそう言う。
「でも汐ちゃん、岡崎の奴が前言撤回するような事態に陥っても、非難しちゃ駄目だよ?」
「うーん……でも……」
「でも?」
「でもやっぱりその、風化して欲しくないんです」
 つい、思ったままのことが口から出ていた。
「おとーさんが再婚したい相手が現れたとします。そうしたらきっと、その人はわたしのお母さんにはならなくても、家族にはなると思うんです」
「だろうね」
 あぐらをかきなおして、春原のおじさまは頷く。
「そうしたらきっとお母さんのことは何もかも、遠くなってしまいます。消えることはなくても、遠くなっちゃうと思うんです」
「……そうだね」
 ごめん、とわたしから目をそらして、春原のおじさまはそう言った。そこへ、おとーさんがその手をぽんとわたしの頭の上に載せる。
「安心しろって。お前の母は渚で、俺の妻も渚だ。これからもずっとそうなんだよ」
「おとーさん……」
「そうです。任せてください汐ちゃん」
 さらにそう言ったのは、何故かふぅさんだった。
「風子は汐ちゃんから、汐ちゃんのお母さんのことを聞きました。今や風子は汐ちゃんのお母さんマイスターです」
「長いな、それ」
「定員は、たった四名ですので」
 答えになっていない上に、すごく気になる基準だった。
「風子はそのマイスター故に、汐ちゃんのお母さんをそっくりそのまま再現――演じることが出来ます。だから汐ちゃんのお母さんの思い出は、風化することないんです。風化と風子で一字違いですが」
「字の違いは関係ないと思うが……そう言うなら、やってみろ」
 目を細めて、おとーさんがそう言う。
「では風子、やります。一応言っておきますが、似すぎていて抱きついたりしないでください。風子、失楽園の気はありませんので」
「そんなこと心配しなくて良いぞ」
「そうですか。では……」
 そう言ってふぅさんは演技に入るように目を閉じた。
 個人的に言わせてもらうと、演技に入る前に何かの一動作を引き金にするのは、頭を切り替えるという意味で結構有効だと思う。そう言う意味で、ふぅさんは演劇の才能があるのかもしれない。
 と、そんなことを考えているとふぅさんは静かに目を開けて、
「『ちょりーす』」
「ねぇよ」
 前、言、撤、回。
「『あたい渚だっちゃ!』」
「もっとねぇよ!」
 まじぎれ寸前になるおとーさんだった。
「――そんなに似ていませんでしたか」
 素に戻って、ふぅさん。
「何処をどうしたら真逆になるのか、教えて欲しいくらいだ」
 情け容赦ないおとーさんだった。そこへ、
「にばーん!」
 そう言ってバネ仕掛けのように起きあがったのは、酔い潰れていたはずの、ことみちゃんだった。
「風子ちゃんの演技が真逆なら、その逆で正確に演技をすることができるの。それなら、汐ちゃんのお母さんのことを良く知らない私にも光明はあるの!」
 実にことみちゃんらしい論理だった。
「んじゃま、やってみろ」
 おとーさんが半信半疑――もとい二信八疑ぐらいの貌でそう言うと、ことみちゃんは長い髪を一房、顔の前に回して口元を隠し、
「『わっちが渚でありんす……いじめないでくりゃれ?』」
「いつの時代の人なんだ、俺の嫁は」
 ものすごく頭が痛そうに、眉間を指で揉むおとーさんだった。
「では、三番」
 静かに手を挙げ、わたし。
「やっぱりここは、真のお母さんマイスターであるこのわたしが……」
「お前もマイスターなのかよ……」
 呆れたかのように、おとーさんがそう言う。
 実はそれほど自信があるわけじゃない。
 でも、わたしのお母さんを直接知らないふぅさんやことみちゃんがあれだけ頑張ったんだから、娘のわたしも頑張らなければいけないような気がしたのだ。
 わたしは静かに呼吸を整え、目を閉じる。
『しおちゃんなら、できますよ』
 そんなお母さんの声が、聞こえたような気がした。
 ならきっと――、大丈夫。
 そう、きっと大丈夫。
 目を閉じたまま普段から身につけている、お母さんの形見である髪飾りの位置をずらす。写真の中で笑う、お母さんと同じ位置に。
 おとーさんが静かに息を飲む音が、確かに聞こえた。



■ ■ ■



 汐が目を開けた。
 そして、その目元が、ふと緩む。
 たったそれだけだが、いやたったそれだけだからこそ、
 俺は錯覚に陥った。
 いつかのようにたまたまではない。汐は意識して演じており、そのおかげで、俺は渚の姿を重ねることが出来たのだ。
 汐は、静かに佇まいを改めると、祈るように両手を胸の前で組んで……。
「『こんちにはです、朋也くん』」
 俺と春原は、一斉に酒を吹いた。
「え。何、駄目だった!?」
 即座に元に戻り、心配そうにそう訊く汐に、
「いや、そっくりだった……」
 むせかえりながらも、俺はそう答える。
「血の繋がりって、すごいんだねぇ……たった一言で見事に渚ちゃんだったよ……」
 同じくむせながら、春原がそう言った。
「なるほど……優しい人なんですね」
 と、風子。
「そして、強い人なの」
 ことみがそう続ける。
「古河……?」
「……部長?」
 アンティークドールのような格好になった智代と杏が、そんな寝言をたてた。
「そっくりでしたよ、汐さん」
 そっとハンカチを目尻にあてて、藤林がそう言う。
「あ、えーと、その……」
 その多種多様な感想に、汐は戸惑っていた。だが、すぐに顔を引き締めると、
「ありがとうございますっ」
 そう言って、演劇特有の礼をする。
 俺は静かに拍手をした。すぐさま春原がそれに続き、そしてさらに風子達も加わる。
 そのみんなの拍手に、汐は満面の笑顔で応え――その上から、拍手に加わるように満開の桜から花びらが舞ったのだった。



Fin.




あとがきはこちら











































「どうしたんですか、ふたりとも深刻な貌しちゃって。もしかして、お花見のこと忘れちゃってます?」
「……ううん、違うのよ」
「――逆だ。克明に覚えているんだ……」
「……うっわー」
「しばらく顔合わせられないわ、あたし」
「私もだ……」
「それはわかりましたけど、それよりも、ふたりとも顔がすごいですよ?」
「「……?」」
「はい、手鏡です」
「「み゛に゛ゃーっ!」」
「あーあ……」





































あとがき



○十七歳外伝、お花見編でした。
もう五月の中頃ですが、どうにか仕上がって良かったです;
劇中で椋にコスプレさせられた杏と智代ですが、元ネタは最近連載再開したあの作品だったりします。第二巻が待ち遠しいですね^^。

さて次回は……久々に、学園編で。



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