超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「どうでもいいけど、アニメでおとーさん良く脱いでいたよね」
「確かに否定しないが次点はお前と杏と藤林と親父だからな」
「……何このカオスな組み合わせ」
「……俺に言うな」




































































  

  


「変な言い方だけどさ」
 その日の夜、俺達のアパートのいつもの居間で、学生時代からのつきあいになる春原はそう言った。
「今日のお墓参り、楽しかったよね」
「……そうだな」
 春原が実家から持ってきたという日本酒をちびちびと飲みながら、俺、岡崎朋也はそう答える。
 そう、今日は渚の墓参りだった。
 ここ数年では、一番大がかりだったと思う。



『君が遺したあの日溜まりは』



 既に時計は深夜を回ろうとしている。
 元々この辺りは人通りが少ない方だが、今は物音ひとつしなかった。
「いやでも驚いたよ。後半で汐ちゃんの知り合いが来たろ?」
 酒の入ったコップを傾けながら、春原。
「ああ、クラスメイトの委員長と後輩の子な」
 その時のことを思い出しながら、俺。
 急な話だったので吃驚したが、ふたりとも一度ちゃんとした形で挨拶をしたかったとのことで、参加してもらったのだ。もちろん俺達の側から見ればそれを拒否する理由なんてこれっぽっちもないし、むしろ歓迎したいほどだった。
「少し心配していたんだ。汐ちゃん、僕らと遊んでいるけど、同世代の子ともちゃんとつきあっているのかなって」
「安心しろ。そこら辺は俺と渚よりよっぽど交友関係が広いからな」
「そっか……それにしても、僕らも委員長と縁があったけど、汐ちゃんにもあったとはね」
「まったくだ」
 なんでも、汐の突拍子もない行動に毎度毎度振り回されているらしい。もっとも汐曰く、本人も結構のってやっているときもあると反論していたが。
「あと後輩の子も可愛かったねぇ」
「このロリコンめ!」
「ちょっと待て、可愛くない訳じゃないでしょ!?」
「……まぁな」
 ただちょっと鼻の下が伸びすぎていたので警告のつもりでそう言ってやったのだ。
「演劇部の後輩なんだっけ?」
「ああ、それがまた汐と面白い出会い方をしたらしい」
「っていうと?」
 身を乗り出してそう訊く春原に対し、俺は一拍の間を置いて、
「俺が渚と出会ったときと同じ日、同じ場所――あの坂の下――で出会ったんだよ」
 初めて汐から聞いたときに、思わず自分の耳を疑ってしまった事実を話したのだった。
「……へぇ」
 ここで、今まで黙っていたことを言ってやる。
「そして渚と同じ名前だったりする」
「ふぅん……ってええ!?」
 案の定、春原は酒を噴かんばかりに驚いていた。
「ま、マジで?」
「ああ、マジだ。吃驚だろ」
「ああ、吃驚だよ……っていうか偶然がいくつも重なりすぎじゃないそれ?」
「まったくだな」
 ふたりして同時に、ため息をつく。
「そういやあの子、ずいぶんとお前に話しかけてたけど、何で?」
「ああ、前にちょっとした縁で助けてやったことがあってさ。以来そこそこ顔を会わせているんだ」
「なるほどね……杏がライバルじゃないかって気を揉んでたよ」
「なんでだよ」
「ま、そこは自分で解釈するんだね」
 変なことを言う春原だった。
「でももしかしたらその子、渚ちゃんの生まれ変わり――あ、いや、それはないか」
「何ひとりで納得してるんだ」
 急に真面目な貌になる春原に、コップを置いて訊いてみる。
「いや、岡崎はさ……変なこと訊くけど、時々渚ちゃんが側にいるような気がしない? なんていうかさ、見守って貰っているような」
「お前は何を言ってるんだ」
「あ、ごめんごめん。忘れて――」
「汐と一緒に暮らし始めたときから、ずっとだよ」
「だよね。汐ちゃんと一緒になって――え? そうなの?」
「ああ」
 再びコップを手にとって、俺。その際春原の分が少なくなっていったので、一升瓶から酒を補充しておく。
「そうか……僕が言うまでもなかったね」
 並々と注がれた酒に口を付けて、春原。
「いや、そう言ってもらえると嬉しい。俺も、汐も、多分渚も、な……」
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」
 そう言って春原は酒を一気にあおり、ちらりと横を見た。俺にそれに合わせてそちらを見る。
 そこには――俺と春原とのちょうど真ん中には、毛布にくるまった汐が健やかな寝息をたてていた。
 実は先ほどまで俺達と談話していたのだが、次第に船を漕ぎだしてしまい、最終的には俺が渡した毛布を被って眠ってしまったのだ。
「疲れちゃったんだね」
「そりゃそうだ。今日までの準備で駆け回ったのは、俺じゃなくて、汐だからな」
 それは今までどちらかというと俺の役目だったのだが、今回は企画と指示に専念して、実働は全て汐に任せたのだ。その結果、汐は俺以上の成果を上げていたと思う。
「ふぅん、なるほどね……なんて言うかさ、渚ちゃんには悪いんだけど、皆の縁って渚ちゃんの輪だと思っていたんだよ。だけど、いつの間にか汐ちゃんの輪になっているなって。杏や智代はともかく、ことみちゃんや風子ちゃんとかは汐ちゃんが広げたように思えるし」
「思えるじゃなくて、事実その通りなんだよ。それに別に悪い話じゃないさ。故人の輪も大事だが、それ以上に今生きている輪だって大事なんだから」
「そうだねぇ……」
 ふたりして、もう一度汐を見る。
「じゃあ改めて、汐ちゃんと渚ちゃんに、乾杯」
「おう」
 ふたつのコップが、ちんと小さな音を立てる。
「……ん」
 そこで、汐がころんと寝返りを打った。
「――どうでもいいけどさ、女の子の寝言ってなんかえろく聞こえるよね」
 いひひひひ――と笑いながら、春原。
「お前だけだからな、それ」
 と口では言っておくが、内心はそうでもない俺。
「おとーさん……だめ……」
 ……へ?
「今、なんて……?」
 なんかものすごくいかがわしい寝言が聞こえてような気がしたんだが。
「は、はは。気のせいじゃないかなぁ?」
「だめぇ……」
 気のせいではなかった。
 な、なんだろう。何がだめなんだろうか。
「……そんな、おじさまも……」
「ぼっ、僕も!?」
 酒以外の理由で、春原の顔が赤くなる。
「無理……前と後から同時なんて無理……」
 え、ええっ!?
 何だ? 俺と春原が前後から何なんだ!?
「もう、だめ……とんじゃうっ」
 春原が鼻の下を押さえた。
 俺も頭の血管が、なんというかもう切れそうで。
 とんじゃうなんて、随分とまぁ旧い表現だが――そんなことはどうでもいい!
「とんじゃう……とんじゃうっ――」
 これ以上はお互い脳がやばい。
 俺達は汐を起こすべく立ち上がり――、
「くろひげ、とんじゃうっ……」
 そのまま、派手にこけた。
 騒音はそれほどでもなかったことは、誉めてもらっても良いと思う。
「……そういえば、よく一緒に遊んだよね。くろひげで」
 ひっくり返ったままの姿勢で、春原。
「……確かにあったな」
 ひっくり返ったままの姿勢で、俺。
 正確に言えば、押入の奥にまだあるはずだ。
 念のために言っておくと、くろひげとは玩具の樽の中にくろひげという人形をセットして、樽に設置された穴にプラスチックの剣を差し込むと、ランダムでくろひげが飛んでしまうというものだ。
 通常はこれを複数人でやって、飛ばしてしまった人が負けというゲームなのだが、ことみ曰く、元々は飛ばした人が勝ちというゲームだったらしい。
「最初はくろひげが可哀想だって言ってたっけ」
「言ってたな」
 そしてたまたま側にいた杏が、相手は人形只の人形狙って撃って一発で終わりとか、妙に怖いことを言っていた覚えがある。
「そんな小さな女の子が、今じゃこの僕を手篭めに取るんだから、すごいよね」
「手玉に取る、な。その例えは間違いすぎているからやめてくれ」
 あと杏や智代に言ったらリアルくろひげにされると思う、春原が。
「うーん……」
 そこで目を擦り擦り、汐が目を覚ました。
「うう、変な夢見た……ってどうしたのおとーさん、おじさま。ひっくり返った格好で」
「ちょっと学生時代を思い出してな。それより汐、よだれ」
「ふえ!?」
 慌てて顔をこすろうとする汐に、
「嘘だ」
「……もう!」
 久しぶりに見るふくれっ面の娘に、俺は思わず目を細めたのだった。
 春原と一緒に、ひっくり返ったままで。



Fin.




あとがきはこちら











































「そう言えば智代や杏も僕を手篭めに取ってたよね」
「なん……だと?」
「ソノ発言ダケハ――トリケセェ!!」
「ひ、ひいいいいいッ!?」
「あーあ、だから言うなとあれほど……」




































あとがき



 ○十七歳外伝、アニメ終了記念編でした。
 本当はアニメ最終回後すぐに公開したかったんですが……風邪にやられてしまいまして遅れに遅れました。申し訳ない;
 さて次回は……リクエスト分にお応えしようと思います。

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