超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「え、あれ? 来週最終回? 早くない?」
「確かに早いな……おまけで俺と春原のウホッ編でもやるのか?」
「いや、それ前にやったからね」

































































  

  


「こんばんは……」
 三月十三日の夜、そう言ってひょっこりと入ってきたのは学生時代からのつきあいになる春原だった。
「悪い。すぐ着替えてくるから、そこで座って待っててくれ」
 仕事は終わっていたがまだ作業着だった俺がそう言うと、春原は慌てて手を振って、
「あいや、気にしないで良いよ。忙しいのはわかっているからさ。その……待たせて、貰います」
 いつもより遠慮しているように見えるのには、訳がある。春原が家ではなくて、直接職場に来るのは、これがはじめての事だったからだ。
 そしてわざわざ待ち合わせ場を職場にしたのも理由がある。家では俺の娘に気付かれてしまうのだ。俺達が、何をしようとしているのかを。
 何はともあれ、遅れているのは俺。急いで着替え、とって返す。
「待たせたな、行くか」
「まて、岡崎」
 春原が言葉を返す前にそう声をかけてきたのは、まだ事務所に残っていた芳野さんだった。
「春原から話は聞かせて貰った。俺も参加させてくれ」
 反対する理由は、俺達には無い。
 なので、そういうことになった。



『岡崎家のホワイトデー 〜愛、おぼえていますか〜』



 きっかけは、春原からの電話だった。
『岡崎さ、ホワイトデーどうするか決めた?』
「もうそんな時期か。あれから二週間と経ってない感じだが」
『年をとるとそう思うもんさ』
「まぁ、な」
 お互い、ため息をつく。
『僕はちょっと自分で作ってみようかと思って』
「何でまた」
『杏と智代とことみちゃんから貰ったのは良いんだけど、あれ全部手作りだったじゃん』
「そういや、そうだったな……」
 杏のは洒落を効かせてアンズのジャムが入っていたし、智代のはシンプルな造形だったが味は極めて繊細だった。そしてことみのは手の込んだトリュフときている。
『だからさ、やっぱり僕らも手作りの方が良いと思うんだよね』
「でも俺もお前もその手のものはからっきしだろ」
『うんまぁそうなんだけど、岡崎の方には居ない? そこらへんに自信のある人』
 ひとりだけ、居る。
 居るので俺は早速連絡を取り、教えを請うことに了解を得た。
 そしてそこに、芳野さんが加わったことになる。
「感謝する。公子にはいつも既製品で……何処か申し訳ないと、思っていたんだ」
 三月中頃にしてはまだ寒い夜道を歩きながら、芳野さん。
「いや、それを言ったら……」
「僕らがそう思ったの、つい最近ですから」
 そんな話をしながら、一路『教室』を目指す。
 教室の名前は古河パン。
 そして講師は、オッサンだった。
「よく来たな」
 携帯でひとり増えることは連絡済みだったためオッサンは芳野さんが参加していることについて、何も言わなかった。
「んじゃ早速始めるが……まずお前等、菓子作りは?」
「ホットケーキまで」
「ホットケーキまで」
「ホットケーキまで」
「……小麦粉からか?」
「もちろんホットケーキミックス」
「間違いなくホットケーキミックス」
「あからさまにホットケーキミックス」
「……あのな」
 オッサンは頭を抱えているが、正直言って水を適量入れるだけで作れるホットケーキミックスは偉大だと思う。
「まぁいいか……わあったよ。最初から最後まで俺様が面倒見てやる。でも作るのはお前等だ。それはわかるな?」
 言われるまでもない。俺達三人は黙って頷いた。
「飴単体だと飴細工とかあるんだが、あれは熟練した技術が必要な上飴そのものが柔らかいから長持ちしない。固いのだとまず型が要る。だからな――」
 そう言ってオッサンはそれを作業台にそっと置いてくれた。
 それは鼈甲細工にも、七宝焼きにも見えた。
「こういう感じで、クッキーの土台に溶かした飴で簡単な絵を描く。これなら出来るだろ?」
「……助かる。本当に」
「礼は後にしろ。まずは完成させなきゃならないんだからよ。んじゃ早速個数の確認だが……俺は早苗と汐から、本命と義理だな」
 個数は少ないが貰っている年数は半端無いぜぇと、オッサン。
「俺は公子と風子ちゃんと汐ちゃんから。本命、義理、義理だ」
 特にコメント無しの芳野さん。
「僕は杏と智代とことみちゃんと汐ちゃんだね。……全部義理ですハイ」
 少し煤けている春原だった。そして――。
「ええと俺が……杏と智代とことみと宮沢と風子と汐だな。本命、本命、本命、義理、義理、義理、か」
「アンタやっぱり独身男と女性の敵だよっ!」
「……否定できないな」
「自覚ねぇから余計質悪ぃよな、小僧」
 随分と酷い言われようだった。
「まあとりあえず大体の量はわかった。まずは土台になるクッキー作りから行くぞ。最初に作業台にある小麦粉を篩え。出来たら砂糖、バター、卵黄の順に混ぜろ。混ぜると言っても掻き回すな。さっくりと切るようにやれ。後くれぐれも生地をこねるなよ? でないと碁石みたいな固いクッキーになっちまうからな」
「何で?」
 何故か碁石という部分に反応して春原がそう訊いた。
「グルテンだよ。うどんやラーメンにゃ麺のコシが要るだろ。あれのもとだ」
「なるほどね」
 いきなり生地作りなんて難しそうなものをやるので緊張していた俺達だったが、材料の計量を慎重にやった後はオッサンの言う通りに作業を進めることが出来た。計量と手順さえ正しければ、普段の料理とあまり変わりはないのだと、思わず納得してしまう。
「生地が出来たら粉を振りつつ麺棒で伸ばせ。その後は型抜きだが、あんまり変な形にするな。崩れやすくなる」
 もとよりクッキーは土台なんだからな。凝るのは飴の方にしろ。というオッサンの助言により、春原は円形、芳野さんは長方形、そして俺は楕円形と型を抜いていく。
「……出来たようだな。よし、焼くのだけは俺がやる。っていうか窯の操作は難しすぎるからな」
 既に軍手をはめて、バンダナを頭に巻いていたオッサンが、そう言いつつ窯の蓋を開ける。途端、どっと熱気が押し寄せてきて俺達はほぼ反射的に手で顔をかばったのだった。
「よし、焼き上がりはすぐだが……いよいよ本番の飴の方行くぞ」
 そう言ってオッサンはホットプレートを用意すると、そこに小降りの片手鍋を幾つか置いた。そしてそれぞれの鍋に大量の砂糖と湿らせる程度の水をに入れて、ホットプレートのスイッチを入れる。
「飴ってのは、簡単に言えば冷えて固まった砂糖水だ。水に砂糖を入れても溶けにくいがコーヒーみたいに熱いと溶けやすい。つまりは熱いものを冷やすとそれそのものが固まるってえわけだ」
 ホットプレートの温度指定ダイヤルを慎重に操作しながら、オッサン。
「だからまぁ作業中はある程度の高温を維持しなきゃいけないわけだが、湯煎じゃ温度が足りねぇし、コンロじゃ微調整が難しい。そういうときにゃこいつが最適なんだ」
 そんな感じでいつになく細かく解説してくれるオッサンの横で、水で湿った状態砂糖は徐々に溶け、透明になっていった。
「こんなもんだな。さて色付けだが、これを使え」
 そう言って広口の薬瓶みっつと、大量の爪楊枝を用意するオッサン。
「いわゆる食紅ってやつだな。これを爪楊枝の先につけて鍋に溶け。ちょっとだけでいいからな。あるのは赤、青、黄の三色だ。それらを混ぜて他の色を作れ」
「白はどうします?」
 と、芳野さん。
「白はこれだな」
 そう言ってオッサンが取り出したのは、生クリームだった。
「真っ白だとするとちょいと力不足だがまぁこれで良いだろう。あまり多く入れると固まらなくなるから注意してくれ。あとこれは全体に言えることだが煮詰めすぎるとカラメル――茶色になる。茶色を使うのならともかく、それ以外だと色が変わっちまうから注意しろ」
 試しに赤で言われた通りにしてみるとなるほど、そこからぱっと色が散り、まるでかき氷のシロップのようになる。
「へぇ、これがねぇ……」
「言い忘れたが素手で触るんじゃねーぞ、見た目より――」
「あ〜ちち! あち! あちちゃあああ!?」
 早速春原が実践してくれた。
「赤熱する前のガラスみたいなものか」
「ですね。あとはハンダとか」
 水道の蛇口を捻って流水に指を晒す春原を見ながら、芳野さんと俺。
「無駄口叩いていないで飴に集中していやがれ。すぐに煮詰まるぞ」
 オッサンの注意が飛んで、(慌てて戻ってきた春原を含め)俺達は飴の色づけに集中することになる。
「こんな感じかな、オッサン」
「ああ、OKだ。ちょっと待ってろ。土台もそろそろ焼き上がりだからな」
 そう言って再び軍手をはめたオッサンが、窯から天版を引き抜いて作業台の上に載せる。そこには俺達が生地をこね型抜きしたクッキーが良い焼き色をになって並んでいた。
「ものが小さいだけにすぐに粗熱は取れる。そうしたらいよいよデコレーションだ。失敗しても良いように土台は大量にあるから、失敗したら無理に修正しようとせずに次のに移れ。その方が結果的に見栄えが良くなるからな」
「「「うっす!」」」
 お互い気合いを入れつつ、俺達は溶けた飴を片手鍋の注入口からそっと土台に乗せる作業を始めた。最初は加減がわからなくて何枚かが犠牲になったが、慣れると比較的楽に出来るようになる。その段階で周りを見回してみると、芳野さんも春原もリラックスした表情でデコレーションを続けており、オッサンはというといつの間にか用意していた正方形の土台の上に、鼻歌交じりで飴を乗せていた。
「ここまで来ると、意外と楽だねぇ」
 と、春原。
「ああ、そうだな。ところで春原」
「ん、なに?」
「杏と智代とことみにお返しするわけだけどさ、お前の順位的には、どうなんだ?」
 下世話な話だが、訊いてみる。
「いや、特にないって」
「そうか? まんざらでもないんだろ?」
「いや、そんなことないよ。ことみちゃんはともかく、杏と智代の方はお互い結婚し損ねたって感じの関係だし」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ。ここらへんは既婚者の岡崎じゃわからないだろうね」
「ふーん……」
 そう言われると、明確な反論は出来ない。
「じゃあそこらへん抜きにしてランクつけてみるとどうなるんだ?」
「うーん、そうだねぇ。強いていうなら、ことみちゃん、智代、杏の順番かなぁ」
 お。予想に反して付き合いの短い順に並んでいる。
「そのこころは?」
「おっぱいの大きい順」
 ――極めてわかりやすい順だった。
「……杏達に言うなよ、僕が死ぬから」
「言わん言わん」
 下手すれば、口に出した俺も死ぬ。
「……待てよ? 汐は順位的にどうなんだ」
「バスト的には智代と杏の間あたり……はともかく、汐ちゃんはランク外だよ。なんぼなんでも年離れすぎでしょ。それに――」
「それに?」
「僕、岡崎をお義父さんなんて呼びたくないですから!」
「納得だ。そもそも嫁に出したくもないがな」
「だからって、汐ちゃんが彼氏連れてきたら認めてやりなよ?」
「謹んでお断りだな、全力で。何処の誰とも知らない小僧に、娘はやれん」
 うんうんと、脇でオッサンが頷いている。
「あのね……。綺麗な花だからって手許に置いておいて、枯らしちゃったら元も子もないでしょ」
「同感だ」
「く……」
「ぐ……」
 珍しく春原に同意する芳野さんに対し、それぞれ胸に手を当ててしまう、俺とオッサンだった。
「で、そういう岡崎は……」
「渚一筋」
「……だよねぇ。あれ、じゃあ何でホワイトデーでお返ししようと思ったのさ?」
 そうだな、それは……。
「やっぱり、世話になったからかな」
「世話? 岡崎が?」
「俺もそうだし、汐もそうだ。……特に杏にはすごく世話になった時期もあったし」
「……ああ、なるほどね」
 その件についてはお互いよく知っているからか、春原は何も言わなかった。
「それにその後もいろいろと世話になっている気がする。表に出ていないだけでな。そして貰いっぱなしだとなんか悪いだろ?」
「そういうもんかね」
「そういうもんなんだよ」
「……何て言うかさ」
「ん?」
「僕達、大人になっちゃったんだねぇ」
「そうだな。そう思う」
 少ししんみりとしてしまう俺と春原だったが、芳野さんもオッサンも何も言わなかった。
「さてこんな……もんかな」
「いいんじゃないの?」
「そう言うお前のも、巧く出来ているようだな」
「先生が良かったからだよ。芳野さんも――なんか凝ってていいっスね」
「……ありがとう!」
 春原はトランプの柄――ダイヤ、スペード、クローバー
にハート。芳野さんは器用にもアルファベットでLOVE&PEACE、オッサンは更に凝ってて漢字で『愛』、そして俺は、様々な色で描いただんご大家族だった。
「どうだオッサン? これなら……」
「いや、駄目だ」
 一刀両断するオッサンに、俺達三人は顔を見合わせる。
「確かに見た目には合格点だ。だが、あるものがひとつだけ足りねぇ」
「それは、一体?」
「ずばり、愛だ!」
「あ、愛!?」
「そうだ! 思い出してみろ、手前らとマイラバーの出会いをよぅ!」
「あの、僕彼女いないんですけど……」
 春原が寂しげに挙手をして、そう言う。
「いなくてもチョコもらってお礼したいんだろーが。相手の気持ちに応えられるようになりやがれっ」
「義理……なんですけど……」
 更に食い下がる春原に、
「初恋ぐらいはあるだろうがっ! クラスの女子とか隣の席の女子とか遠足の時に一緒の班になった女子とか!」
 妙に具体的なオッサンの例えだった。
「公子……」
 既に芳野さんの脳裏には当時のことがありありと浮かび上がっているらしい。
 かくいう俺の場合は……。
 俺の場合は……。
 場合は……。
「――渚ぁ!」
「うわっ、岡崎いきなり泣くなって! しかもさめざめと泣くならともかくいきなりぶわっと男泣きかよ! リアクションに困るだろっ!」
「悪ぃ、出会った頃を思い出すとつい、な」
 後何か最近涙もろくなった気がする。年のせいだろうか。
「想像はできたようだな……」
 覇気のある笑みで口の両端を吊り上げて、オッサンが笑う。
「思い浮かべろ、忘れかけていた言葉を! 『愛している』ってなぁ! 」
「いや、それはちょっと」
「確かにそうかもしれない……」
「よ、芳野さん?」
 静かな口調のまま、ヒートアップしていくひとりの男が、此処に居た。
「いや、確かに公子と一緒になって、『愛している』という言葉を言う機会が少なくなった……それではいけない、いけないだろうっ」
 芳野さんに心に、何かが点火した。
「俺達は……夫婦として一緒になってからこそ、愛していると伝え続けねばならないっ」
「「えええええ……」」
 思わずそんな声でハモってしまう俺と春原。けれども、その熱意だけはわかるような気がする……そう、俺の渚に対する気持ちが、オッサンや芳野さんに負けるわけがない。負けるわけがないのだ!
「そうだ、それが愛だ! 手前らも燃やせ! 愛の炎をよ! 行くぞお前等! アイラービュー!」
「あ、アイラービュー!」
「アイラービュー!」
「アイラービューソー!」
 それぞれ金色だか赤色だかのオーラに身を包んだような気持ちで、オッサン、春原、芳野さん、そして俺が一筆入魂、一気に描きあげる。
 それは、先ほど出来上がったものとあまり変わりがないように見えたが、存在感が違うように……俺達には、見えた。
「決まったな、岡崎!」
「はい!」
「僕達、最高に輝いているよね!」
「おう、お前ら最高だぜっ!」
 それぞれ空になった片手鍋を持ちながら、思い思いの格好良いポーズを取る俺達。

「……えーっと、何やってるの?」
 そこを、汐に思いっきり見られていた。

 俺達はポーズを取ったまま、為す術もなく硬直する。
「な、何でここに……」
「煮物作りすぎちゃったからお裾分けに。後おとーさんの帰りが遅かったから、こっちに来ているのかなって思って。あ、もしかして――ホワイトデー?」
「……もしかしなくても、ホワイトデーだ」
 無駄に咳払いしつつ、佇まいを改めて、俺。
「へぇ――」
 そう言って極めてラフな格好の俺の娘、汐は作業場の入り口から後ろ手で歩み寄ると、そっと天版の上を覗き込んだ。
「ね、おとーさん。今貰って良い?」
「ホワイトデーは明日だぞ?」
「だってもう見ちゃったもん」
「……わかったよ、ほら。一個だけな」
 俺はそう言って、カラメル色のだんごが描かれたクッキーを一枚、汐に手渡した。すると汐はそれを一口で食べた後、にっこりと笑って、
「うん美味しい。ありがと、おとーさん」
 とんとんとステップを踏んで、母屋の方に戻る。
「……どこら辺から見られていたんだろうね」
 襟元をただしながら、春原がそう言う。
「言うな。恥ずかしくなるから」
 愛が云々からだとしたら、相当恥ずかしい。事実少し赤くなりながら、俺はそう応えた。
「だが、汐ちゃんには伝わっただろう」
 と、芳野さん。
「ああ。きっちりと、な」
 頭のバンダナを外しながら、オッサンがそう言う。
「……ま、それは良いから包装しよう」
 そう。最後のひと仕上げ、ラッピングがある。
 俺達は粛々といくつかの飴細工を小箱に入れ、包装紙、リボンと飾り付けていった。
「あれ、岡崎」
 そこで春原が疑問の声を上げる。
「どうした」
「いや、お前の一個多い――あ、いや、何でもない! 僕の勘違いだった!」
 ……気付いたか。
 俺は内心苦笑する。
 オッサンも、芳野さんも何も言わなかったが、この分だと気付いているだろう。
 俺の作ったクッキーが、もらった分よりひとつだけ多いことに。


Fin.




あとがきはこちら












































「あ、悪い呼び出しちゃって。明日の朝には帰らないといけないからさ、やっぱりこう言うのは手渡しでないといけないと思ってね。あ、別に色恋沙汰の返事ってわけじゃないから気にしないで。僕も気にしていないからさ。それじゃ三人とも、またね」
「…………」
「……言うなよ藤林、ちょっとだけ格好良いと思ってしまったとか言うなよ」
「い、言うわけ無いでしょ」
「……すごく格好良いの」
「「(い、言い切った!?)」」



「綺麗……ブローチみたい」
「そう言ってもらえると、嬉しい」
「祐君……」
「公子……」
「……風子、今夜は空気を読んで汐ちゃんの家に泊まりましょうか」
「そ、そういう気は効かせなくて良いからね」



「……汐が寝付くまで待たせてごめんな、渚。何か照れくさくてさ――。これ、ホワイトデーのクッキーだ。驚くなよ、手作りなんだぞ。――あ、バレンタインにあげていないから、貰えないってのは無しだからな?」
「(寝てるふり寝てるふり……はいいとして、良かったね、お母さん)」




































あとがき



 前半が普通のお料理教室みたいになってしまった○十七歳外伝、ホワイトデー編でした。
 手作りというわけでちょっと凝ってみたんですが、実際には省略した部分もありますので、レシピとして使う際にはご注意ください。って使う人は居ないかw。
 さて次回は○の日常編――を後回しにして、杏と○で。

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