超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「脇役の次は出番無しかぁ。ちょっと暴れたいなー」
「暴れるなって」























































  

  


「ん?」
 それは、とある玩具屋のワゴンに山と積まれていた。
 仕事からの帰り、渚の待つアパートに帰る道すがら偶然見つけたそれらは、見知らぬだんご大家族だった。俺達のアパートには居ない顔で、その雰囲気が、今流行(だったと思う)のちょい悪って奴っぽい。
 なんだろう、ブーム再燃というものだろうか。っていうか、前に探した時はあれだけ苦労したのになぁと思いながらも、俺はひとつ買うことにした。
 渚の喜ぶ貌を思い浮かべつつ……。



『だんごプラスワン』



「うーん……」
 予想に反し、渚はだんごを抱えたまま首を傾げていた。
 いや、最初は普通に喜んだのだ。けれど包み紙を開けてから、急に困惑の色を浮かべ始め……今はちゃぶ台の側でぺたんと座ったまま、こうして首を傾げ続けている。
「どうした?」
 流石に心配になって、声をかける俺。渚のことだからだんごに飽きたとか、そんなことは無いと思うのだが……。
「見たことが、無いんです」
 だんごから視線を外さずに、渚。
「見たことが無いって――」
「はい。だんご大家族の、どれとも当てはまりません」
「……もしかしてお前、シリーズ全部把握してるの?」
「もちろんです」
 ここでやっと俺に視線を向け――そして珍しいことに、自信ありげに胸を張り、渚。それにしても、結構すごい記憶力だった。
「もしかしたら、新シリーズでしょうか」
「どれどれ……」
 今度は俺が手にとってみる。渚は知らないようだが、こういうのはどっかに小さく商標が――。
「う゛」
 その小さな呟きを、渚は聞き逃さなかった。
「どうしました? 朋也くん」
「い、いや」
 ドジを踏んだ。
 俺が買ってきたのは、いわゆる海賊版だったのだ。そう、商標を良く見てみれば、タイトルは『だんご大海賊』。
 上手いこと言ったつもりなんだろうか、これは。
「朋也くん?」
 硬直してしまった俺に、渚が心配そうな様子で声をかける。
「渚……」
「はい」
「このだんごな、だんご大家族じゃないんだ」
「……はい?」
 不思議そうに首を傾げる、渚。
「海賊版なんだ、これ」
 もちろん嘘などつけるはずも無く――いや、渚に対し嘘はつきたくないからなのだが――素直に話す、俺。
「海賊版?」
「つまりは、偽物だ」
「偽物……」
 改めて、だんご大家族改め、だんご大海賊を抱え直す渚。
「そう、ですか」
 前髪に隠れて、渚の表情が読めなくなる。でも、嬉しい訳は無いだろう。それは、模造品もいいところなんだから。
「渚……ごめんな」
 姿勢を正して俺がそう謝った次の瞬間、渚は突如として立ち上がっていた。そしてそのまま箪笥に向かい、取り出したのは……鋏っ!?
 想像してしまったのは、綿のはみ出ただんご(偽)。
「待て渚、早まるなっ!」
 そう叫ぶより一瞬早く、渚はだんごに対し無造作に鋏を振るっていた。
「糸が飛び出ていました」
「……あ、そう」
 立ち上がりかけた姿勢からこけるようにどっと脱力する、俺。
 なんにせよ、渚がぶち切れなくて良かった。そう思う。
「それで、何を待てば良いんでしょうか」
「いや、俺はてっきり――」
「はい?」
「……いや、なんでもない」
 そもそも、渚に刃物は似合わないし、そう言ったシチュエーションはもっと似合わない。
「どっちにしろ、悪かった。偽物選ぶようじゃ、駄目だよな」
 座り直しながら改めて謝る、俺。すると渚も鋏をちゃぶ台に置きながら俺の真向かいに座り、
「朋也くん、謝る必要は無いです」
「え?」
「本物でも偽物でも、朋也くんはだんごを買ってきてくれたんです。そのことが、わたしには嬉しいです」
「渚……」
「大切なのは、朋也くんがわたしに何かをしてくれたこと。それで十分です」
「渚っ!」
 思わず感極まって渚を抱き締めようとした時、
「あ、ここにも糸が飛び出ています」
 もう一度渚が鋏を振るい、その刃先が俺の鼻先をかすめた。
「――朋也くん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
 すごすごと座り直しながら、俺。怒ってはいない。怒ってはいない……はずだ。
「それにしても、このだんご可哀想です。頬に傷が付いていて」
「海賊ってそう言うもんだからな」
 思わず突っ込みをいれてしまう、俺。
「でも、これはこれで……可愛いです」
 だんごを抱き締めて、渚はそう言う。
「そうか? なんか目付きが少し悪いような気もするが」
「そんなことないです。それに、朋也くんが選んだ子ですし」
 そんなお前も可愛いよ。とは、流石に言えなかった。
 何はともあれ、その海賊版だんごは以降渚によって正式に(?)だんご大家族と迎えられた。
 そしてそいつは今も、海賊らしい鋭い目つきで居間の一角を飾っている。



Fin.




あとがきはこちら













































「このだんご、なんかおとーさんに似ているね」
「……買い主に似るって奴か」
「え?」
「親父ギャグだ。聞き流してくれ」





































あとがき



 久々に同棲編でした。
 オーソドックスないちゃいちゃカップルを書いてみたつもりだったんですが、何だかすごくアットホームな感じになってしまいました。
 そこはやっぱり、だんご大家族だからでしょうか。
 さて次回は……、未定です。

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