超警告。リトルバスターズをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「おほほほほほ! 祝・メインヒロイン昇格と言ったところかしら?」
「発売はまだ先だがな」















































  

  


 ルームメイトと入れ違いに、私、神北小毬は自室に戻った。
 御風呂上がりのひとりきりになれる、ちょっとした時間。
 おそらく、この時間帯が一番本来の私でいられる、そう錯覚してしまいそうになる時間だ。
 ほっと、一息つく。
 今日も、放課後の練習は充実していた。恭介さんが次の対戦相手を見つけたそうで、理樹君を始め、みんな張り切っていたのだ。……私はと言うと、途中でストレルカに追いかけれてばっかりだったけど。
 どんな、相手なんだろう。
 そんなことを思う。恭介さん曰く、俺達と良く似ているそうだけど――。
 そのとき、何かが激しくぶつかり合う音がすぐそばで響いた。
 その音には経験がある。恭介さん主宰の、バトル以外に無い。
 けれども、携帯にはそれを示すメールは回ってこない。
 だとすれば、それは。
 そこに、一際大きな激突音が響き、それきり何も物音がしなくなった。
 私は顔を出してみる。
 見れば、部屋からさして遠くない廊下に元ルームメイトの笹瀬川佐々美――さーちゃん――が、倒れていた。




『ソースイート・コネクション』



「おかしいですわ……」
 私が入れたホットミルクを飲みながら、さーちゃんは呟いた。
 私はルームメイト不在を良いことに、倒れたさーちゃんを運び込み、介抱したのだ。もっとも、額に濡れたハンカチを乗せただけなのだけれど。
「少し前まで、あの棗鈴を圧倒していたはずですのに――今ではわたくしの方が圧倒されているなんて……」
「そうだったっけ?」
 多少、とぼけてみせる。
「そうでしたわ!」
 握り拳を作って、さーちゃん。けれど、私は最近鈴ちゃんが連戦連勝なのを知っている。その度に理樹君に戦利品と言って色々なものをあげているからだ。もっとも、それを知ったのは理樹君がそれらの保管に困って私に相談したのがきっかけなのだけど。
「でもしょうがないよ。負けは負けだものね」
「悔しいけれど、その通りですわ……」
 コップをルームメイトと共用のちゃぶ台に置き、膝の上で両手を握りしめて、さーちゃんが答える。
 私はそんなさーちゃんを見てふと息を吐くと、腰を上げてベッドに座り直した。
「さーちゃん、こっち来て。髪、梳いてあげるから」
「いいですわよ。もうルームメイトではありませんし」
「えー……梳きたいのにー。それに、少し乱れてるよ?」
 意図的に上目使いで、私。
「そ、そこまでおっしゃるのなら」
 そう呟いてから、さーちゃんも腰を上げ、背中を預けてくれた。その髪は鈴ちゃんと戦った結果――私の言った通り――ところどころが乱れている。
「……一年前を、思い出しますわ」
「――うん、そうだね」
 さーちゃんとルームメイトだった頃は、こうやってよく髪の梳きっこをしていたものだ。そして、お互い他愛もない話や、小さな悩み事を打ち明けあって、最後に笑い合ったものだった。
「懐かしいよね」
「そうですわね……」
 乱れてはいたものの、さーちゃんの髪は柔らかくて手入れがちゃんと行き届いている。ずっと梳き続けたい綺麗な髪だった。
「――ねぇ神北さん。わたくしでは……わたくしでは、もう棗鈴に勝てないのかしら」
 リボンを解いて、長くて柔らかい髪にそっとブラシを入れていると、さーちゃんはそう言った。
「……別に、勝てなくても良いんじゃないかな?」
「神北さん! それは聞き捨てなりませんわ!」
「ん、どうして?」
「どうして? それは決まってますわ。わたしくは棗鈴のライバルですのよ。ライバルというのは常に相手に勝ち続けなければなりませんわ! 違いまして!?」
「なら、鈴ちゃんはさーちゃんのライバルだね。だってさーちゃんに勝ち続けてるから」
「あっ……」
 しまったと言う様に、さーちゃん。
 それに、今のはさーちゃんの本心じゃない。ライバルっていうのは、切磋琢磨しあうものなのだから。それくらい、さーちゃんだってわかっているはずなのだ。
「さーちゃんって、友達を作るのが苦手なんだね」
「と、友達!? ――痛っ」
 うん、かなり痛いと思う。急にさーちゃんが動いたので、ブラシが髪に絡まったのだ。
「大丈夫? いきなり振り向いちゃ駄目だよー」
「うう……」
 ぐっと堪えて、さーちゃんがごめんなさいとばかりに頷く。
 私は慎重にブラシを動かして絡まりを解くと、再びゆっくりとさーちゃんの髪を梳き始めた。
「か、神北さんは随分変わった目をお持ちですのね。わたくしと棗鈴との間にあるのは、戦いしかありませんわ」
 多少声が裏返っているさーちゃん。
 なので、わたしはさーちゃんが落ち着くように少し間を置いてから、
「私は、そういうふうには見えないな。さーちゃんは、鈴ちゃんとお友達になりたいんじゃない?」
 そう訊いて、みる。
「そ、そんなこと、そんなこと……」
 ありませんわ。と、さーちゃんは言わなかった。
 ――私はこの、肝心な処で嘘をつけないさーちゃんの性格がすごく好きだったりする。
 その胸の内は、どこまでも真っ直ぐなのだ。気高くて、綺麗で。
「はい。終わったよー。リボンはどうする?」
「それなら、自分で付けますわ」
 私からちょっと距離を置いて、髪を結い直すさーちゃん。そんなさーちゃんに、私はブラシを片付けながら、
「私はさーちゃんを応援することは出来ないけど……鈴ちゃんとは、仲良くして欲しいな」
 そう、お願いしてみた。すると、さーちゃんは髪を結う手を止めて、
「無理ですわ、そんなこと……」
「無理? 無理かな?」
「無理ですわよ。わたくしはソフトボール部、神北さんは、そして棗鈴はリトルバスターズに所属しているのですから」
 再び髪を結い出すさーちゃん。それに対してわたしは、そっと息を吐くと、
「そっか……。じゃあ、頑張ってね」
 はっきりと、そう言った。
「え?」
 驚いたように、私を見るさーちゃん。そんなさーちゃんを、私はゆっくり見つめ返す。
「私は、さーちゃんのやっていることは反対。でも、さーちゃんがしたいことには賛成だから」
「む、胸に留めておきますわ」
 髪を結い終えて、さーちゃんが立ち上がる。
「うん、頑張ってね」
 そんなさーちゃんを見上げながら、私。
「わたくし、また棗鈴と戦いますのよ?」
「うん、それでも頑張って」

 鈴ちゃんと、友達になってほしい。



■ ■ ■



「またわたくしの前に立ちはだかりますのね、棗鈴!」
「立ちはだかるも何も、すれ違っただけだろう」
 小毬さんと一緒に、僕、直枝理樹が午後の授業に使う書類を運んでいると、廊下の角からそんな声が聞こえて来た。
「ふふん! 今日は可愛い後輩抜きですわっ。勝負、受けてもらいますわよ!」
「……いいだろう」
 僕は慌てて、小毬さんを見る。ふたりがかち合ったらバトルは必至だ。
 けど、それを知っているはずなのに小毬さんは随分と穏やかな貌をしていた。
「と、止めなくちゃ」
 ひとり空回りしている気がしたけど、僕は書類を廊下の床に置いて駆け出そうとする。
「理樹君、駄目だよー」
 なのに、そんな僕の上着の裾を、小毬さんは書類を抱えたまま器用に摘まんでいた。
「小毬さん?」
「書類、汚れちゃうよ?」
「いやいや、それも大事かもしれないけど、今はあのふたりを止めないと」
「いいんだよー」
 と、小毬さんは僕の袖を引っ張った。
「で、でも」
「だいじょ〜ぶ。あのふたりならね」
「そ、そうかなぁ……」
 そうこうしているうちに、ハイキックの足刀同士がぶつかる小気味の良い音が響く。
「さぁ、行こ。理樹君」
「え、あ……うん」
 小毬さんに促されて、僕達はその場を後にした。
 何で止めないんだろう、そう思いながら小毬さんの横顔を眺めてみる。
 何故か、小毬さんはとても満足そうだった。



Fin.




あとがきはこちら













































「なかなか良い戦いだったな」
「ふん、引き分けではどうしようもありませんわ。次こそは覚えてらっしゃい、棗鈴!」







「おっと、今日は忘れている訳じゃないぞ。毎回恒例、おねーさんのティータイムだ」
「……その件ですが来ヶ谷さん。番組の草稿には『来ヶ谷アワー』と書かれてありますが」
「西園女史、そんなセンスのかけらもない名前は放っておきたまえ。さて今回のお題はこちら。笹瀬川女史のシナリオを考えよう、だ。一応、理樹君との絡みを考えてくれたまえ。では始め」
「はいっ」
「お、今日の一番は小毬君か。どうぞ」
「理樹君とさーちゃんがラブラブになりますっ!」
「……うん。あー、そうだな。で?」
「うん? それだけ、だよー」
「……そうか。では次」
「はい!」
「うんクドリャフカ君、どうぞ」
「リキが笹瀬川さんのところの女子ソフト部を手伝うことになって、お互いの仲が親密になっていくのですっ」
「ほほぅ、王道だな。具体的には?」
「そうですねー。部員のどなたかが怪我か病気で試合に出られなくなってしまって、リキが代わって参加するのですっ」
「極めて典型的だ。だがそれがいいとも言えるが。ただ、理樹君は男子だぞ? 女子ソフトには参加出来ないのではないかね?」
「わふ〜、そうでした……」
「待ってください」
「ん? 何だね西園女史」
「そこからは、能美さんと似た提案になってしまったわたしに続けさせてもらえませんか」
「興味深いな。続けてみてくれ」
「はい。ずばり、直枝さんには――女装をしてもらいます」
「……やはりそう来たか」
「――来ヶ谷さんは見たくありませんか? 試合に出る直枝さんの……スパッツ姿を」
「……それは、非常に見たい。見たいが、その先の展開が非常に倒錯的だな……」
「女子体操着姿で汗を流すふたり……美しいです」
「うん。まぁ、その通りだが。次は誰かいないかね?」
「あたしが行こう」
「おお、鈴君か。君ならこの何故か男女間なのに百合百合な空気を打破出来るだろう。どうぞ」
「まずいつも通りあたしとささみが戦ってあたしが勝つ」
「ふむふむ」
「最初はこれもいつもどおり今までと同じ戦利品を理樹に渡す」
「ふむふむ」
「ただ、ささみの話だとバトルはさらに続いて、制服の上着、スカート等が戦利品になる」
「ふむふむ……ん?」
「そして最後に、ささみ自身をあたしがやる。適度に服が脱げててえくすたしーだ」
「いや、確かにエクスタシーだが――それはどうかと思うぞ」
「……むぅ、やっぱりえろはいらないな」
「それについてはなかなか難しい処だがね。さて、次は?」
「はいはいはーい!」
「今回のトリは葉留佳君か。行ってみたまえ」
「おっけーまかせてください姉御! え、部長会儀で部活に遅れた笹瀬川さんがですね、こう、校舎の中庭を急いで駆けていると、ベンチにジャージを着た理樹君が座っているのですよ。そして、笹瀬川さんがそれに気付くと、ゆっくりとファスナーを下げて行ってですね、『やらないか』――っきゃー、これぞこの世のエクスタシー!」
「……またこのネタですか。嫌がらせですか? 嫌がらせですね? 美しいシーンがあるかもと全集をすべて読んだわたしへの嫌がらせですね?」
「全部、読んだのか……」
「そこは、さらりと流してください。それより来ヶ谷さんはどうなのですか?」
「うん? 私か。私のは……こうだな。鈴君と佐々美君とのバトルで、理樹君は佐々美君に協力することになる」
「ふむふむ。基本ですネ」
「それで、ある時佐々美君が無理をして、怪我を負ってしまう。理樹君は彼女を保健室で介抱しているうちに……ムラムラとだな、指と指が絡み合い、かすかに湿った空気の中、カーテンの陰でっ! ふたりの背筋がぁ!」
「ゆいちゃん、ストップストップ!」
「わふー! この先が放送禁止となってしまいますーっ!」
「……まぁ、エクスタシーだからな。仕方あるまい。さて、笹瀬川女史、この中で、気に入ったシナリオはあったかね?」
「なにぃ!? いたのかさせこ!」
「………………」
「……鈴ちゃん、さーちゃんに気付かなかったんだね……さーちゃん、大丈夫?」
「ふ、ふふふ、おほほほほ! これくらいどうってことありませんわ!」
「見上げた心掛けだ。で、君のお気に入りはあったのかね?」
「――お答えしますわ」
「ふむ」
「全 部 没 に決まっているでしょうがっ!」
「……当然の、帰結ですね。なお、実際の笹瀬川さんルートが上記のシナリオのどれかに酷似していた場合、応募者の中から抽選で……」
「いやいやみおちん、それはないから」
「わふー、いつになく大混乱です……」






































あとがき



 小毬と佐々美様でした。
 どうもリトルバスターズ本編から読み取るに限り、佐々美と小毬は元ルームメイトだったようです。その生活も大いに気になったんですが、今回は『今』に主眼を置いてこんな話にしてみました。個人的な話ですが、私も佐々美様の髪を梳いてみたいです(えー。
 あとどうでもいいんですが、ソフト部員の『佐々美様が、私の中に〜』ってのは、至極明言だと思いますw。ある意味慕われてますね、佐々美様。
 さて次回は……ちょっと未定で; もしかしたら男性陣大暴れ、かも?



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