超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「だんご見てて思い出したんだけど、わたし春原のおじさまと一緒にガンダムに出たことあるんだよね……」
「それを言ったら、俺なんてガンダムとマクロス両方に出ているんだが」
「朋也くんもしおちゃんも羨ましいです……でも、声の人の話題はほどほどにしましょう」
「「ご、ごめんなさい……」」

















































  

  


 その日の夕方、俺岡崎朋也が仕事から帰ると、ちゃぶ台のそばに怪人が座っていた。
 怪人の頭は間違いなくだんご大家族で、白いTシャツの上に薄いピンクのカーディガン、そしてジーンズと、間違いなく渚の服を着ていた。
「もあ、もがもにもがにもむ、もごがもん」
 そんな奇声を発して、怪人は立ち上がり、俺の方へ向かってくる!
「もごがもん?」
「うわ、うわあああっ!」
 割と真面目に、俺は悲鳴を上げた。



『だんごマスク、一号と二号。それと三号』



「本気で怖がられました……」
 頭部を取り外した、怪人――中の人は、言うまでもなく渚――は落ち込んでいた。
「いやすまん、渚。でもな、あれは怖いぞ」
 と、部屋着に着替えた俺がそうフォローする。
「そんなことないです。だんごはかわいいに決まってます。わたしなんかよりずっとかわいいですっ」
 ……さらに、思いっきり拗ねていた。
「ちなみに最初何て言ったんだ?」
「『おかえりなさいです、朋也くん』って言ったんです」
「全然怖くないな」
「だから怖がらせるつもりなんてありませんっ」
 さらに拗ねてしまう渚。正直、そんな表情は珍しいのでもうちょっと眺めていたかったのだが、そうも言ってられない。俺は軽く咳払いすると、
「で、何処でこんなもの見つけて来たんだ」
 さりげなく、話題を変えてみた。
「はいっ、それはですね」
 想像通りというか何というか、たちまちいつも通りになる渚。
「アルバイトを上がった後、夕飯の材料を買いに商店街で買い物をしていたら見つけたんです。この、『なりきりだんご』を」
「……いきなりだんご?」
「なりきりだんご、ですっ」
 そう言って、さっきまで被っていただんごを愛おしそうに撫でる渚。
 むぅ、ちょっと羨ましい……。って何でだんごに嫉妬する、俺。
「で、それは一体何なんだ?」
「ですから、頭に被るだんごです。ちょっと息が苦しくなりますけど」
「そりゃ、そうだろう」
 渚がはいと渡してくれたので、俺はそれを色々といじくってみる。頭が突っ込める場所は、御丁寧にもファスナーで穴を塞ぐことが出来ていて、そうしてしまえば普通のだんご大家族の縫いぐるみにしか見えないように出来ていた。
「これでわたしも朋也くんも、そしてこの町に住む人達が皆、だんごになれます」
 そう言って、何処かで見た恍惚とした貌を浮かべる渚に、俺は半信半疑ながらも想像してみる。
「……うわっ、こわ!」
 オッサンも早苗さんも、春原も杏も、皆頭がだんごだんごだんご……何というか、おっかない光景というか地獄絵図というか。
「だから、怖くないです」
 再び拗ねる、渚。
「いや、怖いって」
「怖くないですっ」
「だから――いいか、良く見てろよ」
 こうなったら、実力行使しかない。俺はそれを頭にがっぽりと被った。
 ……む、渚のシャンプーの香りが微かに――いや、今はそれどころじゃない。
 俺はそのまま渚を見据えると、学生時代の春原みたいに奇矯なポーズを取り叫ぶ。
「もごもごもぐぐむにもががもにもが、もむが!」
「それはポーズが変なだけです」
 通じてない!?
「もむが、もむぐめむめ!」
「ごめんなさいです、何て言っているのかわかりません」
 ええいっ。
「ぶはっ。じゃあ、よく聞けよ」
「はい」
「『渚、愛してるぜ!』」
「――あ、ありがとうです……」
 なにかもう、当初と目的が全く違うような気がして来たが、これはこれで結果オーライだろうか。
「ちなみに、最初は何て言ってたんですか?」
「『そろそろ子作りに励まないか、渚』」
「どさくさに紛れて恥ずかしいこと言っちゃ駄目ですっ!」
「うん、俺も今そう思った」
 改めて言うとかなり恥ずかしい。
 渚もそうだが、俺も顔が真っ赤になっていた。
「ふ、普通はそういうことを二回目に言います……順序が逆です……っ」
 え、逆なだけでいいのか?



■ ■ ■



 ……それが、今から十ん年ほど前の話だったりする。
 何でそんな時になって思い出したのかというと、仕事から帰って玄関を開けたら、ちゃぶ台のそばに怪人が座っていたからだ。
 怪人の頭は間違いなくだんご大家族で、淡いグリーンのタートルネックにミニのプリーツスカートと、間違いなく汐の服を着ていた。
「…………」
「もぉ〜がぁ〜」
 おお、威嚇してる威嚇してる。
 仕方ないので、俺は相手することにした。
「うわぁ、怪人だー」
 いかん、かなり棒読みになっている。
「もがががが、むがめごむめめがもむもっま!」
「なに、今日は出血大サービスで部屋着の代わりに水着を着てあげるだと!? さ、寒くないのか怪人だんご仮面っ!」
「もがむっ!」
 首を大きく横に振りながら、怪人。
「ほほう、仕事に疲れた俺の背中を流してくれるのか。しかも水着で?」
「もーがー!」
 やけになったのだろう。怪人は怪しい踊りを踊りだした。
「あー、もーいーからそれくらいにしとけって」
 ダンスの腕が良い分、その頭部と普段着っぷりが逆に何とも言えない雰囲気を漂わせるので、俺は怪人との間合いを一気に詰めると頭のだんごを両手で持って引っ張り上げた。ん? なんか抵抗がない? そう思って見てみると……。
「う、うわあああああっ!」
 首が、首が無いっ!
「きゅ、藤林のとこの救急車か!? それともことみに改造か!?」
「ことみちゃんに改造って、何よ」
 着ていたタートルネックから頭を出す汐。
「ナメック星人か、お前は」
「っていうか、気付こうよ」
 いやまぁ。一瞬とはいえ、肝を冷やしたのは事実だし。
「最初から被ってなかったんだな。それなら、もがもが言う必要なかったじゃないか」
「そうしたらちゃんと被ってないってわかるでしょ」
 ……それは、確かに。
「で、何て言ってたんだ?」
「『わはははは、お前の娘は預かった』」
「マッチポンプだな」
 そう感想を述べつつ、隣室で普段着に着替える俺。
「うー……。ばればれなのは承知の上だけど、多少は吃驚して欲しかったな。レア中のレアグッズだし」
「レア中のレアって、それがか? いきなりだんご」
「なりきりだんごっ。いきなりだんごじゃ九州のお土産でしょ」
 ああ、そういえばそうだった。
「しかしレアって、なんでまた」
「被ってみたら、すごい微妙だったからみたいよ?」
「……あー」
 言われることもない話だった。
「あーあ、折角演劇部から色々もって来たのになぁ……おとーさん、速めに帰って来ちゃったから普段着になっちゃったし」
「何を用意していたんだ」
「ボンテージ――」
「な、な、何ぃ!?」
 着替えを中止して、頭だけ居間に突っ込ませてしまう、俺。
「――話は最後まで聞こうよ。あくまでボンテージ風の衣装。遠めにみれば本物みたいだけど、肌が露出しそうな部分は全部肌色の布地だし、しかもパッドやら何やらで本来の身体の線が出ない優れ物なの。これでバストサイズを大幅に上げておとーさんを驚かそうと思ったのに……」
「普段から結構大きいだろ、お前」
 安心して頭を引っ込ませつつ、そう言ってやる。
「ことみちゃんや、坂上師匠に比べればまだまだよ」
 目指しているのだろうか。そんな、遥かな高みにまで……。
「……まぁいいが。お前、三号な」
 着替えを終え、ちゃぶ台のそばに腰を落ち着けつつ、俺。
「え、一号と二号が居るの!?」
 心底驚いた様子で、汐が訊く。
「ああ、居たぞ」
 誰と誰とは言わず、俺はちゃぶ台の上にあった新聞に目を落としたのだった。
 察しの良い汐のことだから、すぐに気付くだろう。――そう、思いながら。



Fin.




あとがきはこちら













































「うぃーす、岡崎居る?」
「「も〜が〜っ!!」」
「……何やってるのさふたりとも」
「……あれ? お前『ひぃいいいいッ!』は?」
「僕悲鳴上げなきゃキャラ立たないんですかねぇ!」




































あとがき



 ○十七歳外伝、TVアニメ第一期終了記念編でした。
 前回の杏の話でネタとして出したしっとだんごマスクが妙に気になった上に、掲示板で結構盛り上がったので、いっそのこと被ってもらおう、どうせなら一家全員に――という流れを経て今回の話が生まれました。さすがにしっとの炎はめらめらと燃えませんでしたがw。
 さて次回は……前回の予告通り、○の回想で。


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