超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「春原、初登場シーンでサービスカットってのはどうかと思うんだが」
「あれ、僕のせいじゃないでしょ……」












































  

  


「風呂、上がったぞ」
 タオルで頭を拭きながら畳の上にどっかりと座りつつ、俺、岡崎朋也はそう言った。
「んー」
 ちゃぶ台で宿題を片付けていた間もなく十八になる娘の汐がその手を休め、大きく伸びをする。
「たまには一緒に入るか」
 そう俺がおどけて言うと、
「狭いから、駄目」
 汐が軽く受け流す。
「そうか、じゃあ今度のボーナスで風呂を広くしよう」
「今度は洗い場が狭くなるから駄ー目っ」
 と、汐もおどけて両手をばつの字にし、俺達は同時に吹き出したのであった。
「ああ、そうだ。シャンプーが残り少ないから、不安なら補充しておいてくれ」
「りょうかいー」
 俺が使うには十分な量だが、髪の長い汐がどれだけ使うのか、正直良くわからない。
「それじゃあね」
「おう」
「覗かないでよ?」
「子供の頃は一緒に入ってたろ。もう見慣れてるから、いい」
「それもそうね」
 おかしそうに笑って、着替えを持った汐がバスルームに消える。



『俺の後を越えていけ!』



「――ふぅ」
 さて、どうしようか。
 風呂上がりが良い感じだったのでビール――と思ったが、
「……む」
 窓は完全に閉まっているが、それでもTシャツと短パンでは肌寒い季節になっていた。やむを得ず、ちゃぶ台の上にあるポットを引き寄せてお茶を淹れる用意をする。
 そろそろパジャマを用意した方が良さそうだな。そう思った時――。
「おおっ」
 居間の此処まで、汐の声が響いて来た。
 なんだろうか。もしや、この期に及んで胸が大きくなったというのか?――いやまさか。
「おおおおおっ!」
 続いて風呂場のドアが乱暴に開いた派手な音が響き、さらに脱衣所の蛇腹の仕切りが盛大に揺れ、
「で、で、で、出来たっ!」
 しなやかな素肌をバスタオルで巻いただけの格好で、汐が飛び出て来た。
「ど、どうした!?」
 黒くて素早くて湿気を好むアレが出て来ても物怖じしない我が娘が何に驚いたのか、皆目見当が付かない俺。
「これよ、これっ!」
 そう言って、汐が固く絞られた手拭いを掲げてみせる。
 それで、俺は汐の言いたいことがあらかたわかったのであった。



■ ■ ■



 湯船の中で、小さかった頃の汐が顔を真っ赤にしていた。
 のぼせているのではない。両手を湯船から出して一生懸命手拭いを絞っているのだ。
「うーん……」
 あれは、汐と風呂に入っていた最後の年だから、汐が小学校――低学年の頃だったと思う。
 先に言った通り、俺達が風呂に入るときは一緒だった。
「う〜ん――」
「それくらいにしておけ。顔、真っ赤だぞ?」
「もうちょっと……」
 何故汐がうんうん唸っているのかというと、湯船から出る際に身体や頭を拭く手拭いを俺の代わりに絞っているためであった。
 汐は、自分でやれることは自分でやろうとするから、大抵は俺と競合することになる。
 けれども、小学生の女の子では固く絞るというのには無理があって、最後に俺が絞り直すのだが、それが汐自身お気に召さないようなのであった。
「……出来た」
「どおれ」
 ちなみに、手加減という言葉は我らが岡崎家には存在しない。
 俺がわざと負けたりすると、汐は十中八九見抜いてしまうからだ。故に、俺は何時からか汐の挑戦を全力で受けることにしていた。
「よっと」
 さして力を入れずに絞ると、細い滝のように水滴が絞り出される。
「あ――」
 すごく残念そうに、俯く汐。
「焦るなって。いつか出来るようになるさ」
 その頭にぽんと手をおいてそう言ってやるが、
「……うー」
 当の本人は、大変不満そうであった。



■ ■ ■



「まずは、絞ってみて」
 ちゃぶ台の向こう側で正座した汐が、俺にずずいと手拭いを差し出す。
「ふむ」
 俺はそれを受け取る前に、頭を拭いたのに使っていたタオルをちゃぶ台に置き、その上であらためて受け取った手拭いを、全力で絞ってみた。
 水滴が幾つか、静かに落ちる。
「もういい?」
「おう」
「じゃあ、よーく見ててね」
 正座をしたまま、手拭いの両端をしっかりと握って、捻る。
「――おお」
 水滴がさらに幾つか、汐を包むバスタオルの太腿部分に落ちた。
 試しにその手拭いを借りてもう一度全力で絞ってみる。
 水滴ひとつ、落ちてこない。
「すげえな。握力越えられたか」
「うん、やっとね」
「よくやったな、汐」
 手を伸ばして、頭を撫でてやる。
「ありがと、おとーさんっ」
 そう答えて立ち上がり、両手を腰に当てつつ照れ笑いを浮かべる汐。――って今揺れたぞおい。
「で、いつまでそんなエロティックな格好でいるつもりだ? お前は」
「……え?」
 汐が、現状に気付いた。
 慌てて自分を見下ろしているが、そこには白いバスタオルと透き通るような素肌しかない。
 あと、バスタオルの結び目が解けかかっている。
「お、おとーさんのえっちーっ!」
「なんでそうなるっ!」
 箪笥の上に飾ってある渚の写真立てが、何の脈絡もなしに落下した。
 同時に、往時の杏や智代並の素早さで、汐が風呂場に消える。続いて悔しさ半分、恥ずかしさ半分といった声で
「みーらーれーたー!」
「安心しろ、見慣れてる」
「どうして見慣れているのよっ!」
「いやまぁ気にするな。はっはっは」
 返事の代わりに、ものすごい派手な音を立てて風呂場のドアが閉まった。
「……昔は方向見失って、箪笥にぶつかっていたっけか」
 こんなに恥ずかしがっている汐も、考えてみれば久しぶりのことだった。
「――何と言うかまぁ、」
 俺は写真立てを元の場所に戻しながら言う。
 いや、正確にはその小さな写真立てに話しかけていた。
「元気、有り余っているよな」
 ……静かに箪笥の上に置かれた写真の中の渚は、苦笑しているように見えた。



Fin.




あとがきはこちら













































「テレビ版のおとーさんって、なんか明るいよね」
「そ、そうか?」




































あとがき



 ○十七歳外伝、TV放送開始記念編でした。
 って渚出てねーっ!
 学園編ですらねーっ!
 放送開始記念って感じじゃねーっ!
 ……まぁいいか。(良くないよ)

 次回は、趣味に走ります。うっしっし。

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