超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「あ、また出番がなーい」
「だからこの時点じゃ無理だろ」












































  

  


 朝の俺達の日課というと、新聞の読みっこから始まる。まず俺がお茶をふたり分滝れている間に渚が新聞を読み、淹れ終わったころには俺が新聞を、渚がチラシをチェックし始める。それは、ささやかながらも一緒に暮らすようになってから続いている、俺達の日課だった。
「あ、朋也くん。お酒が特売みたいです」
 酒屋のチラシを見ていた渚が、そう言った。
「へぇ、良いね」
 新聞から顔を出しながら、俺。
「少し買っておきますか?」
「そうだな……」
 少し考える。初秋とは言え、まだまだ暑い。
「よし、麦の酒で頼む。よく冷やしたのが良いな」
「わかりました」
 こっくりと頷く渚。
 無論、俺はその時ビールのつもりで言っていた。渚が、酒に疎いということを忘れて。
 結果、俺が仕事からかえってくると、食卓には良く冷えた麦焼酎が乗っていた。



『ふたりの宴』



「……うん、美味いな」
 酒に疎くても愛されてはいるらしい。渚の選んだ麦焼酎はかなり美味かった。
 ただしアルコール度数は焼酎でもかなり珍しい部類の35度。水で割っても20度前後。ぶっちゃけなくても結構高い。おそらく、そこらへんを見ずに美味しそうな酒という観点のみで選んだのだろう。それで本当に美味い酒を引き当てたのだから、たいしたものだ。たいしたものだが……。
「なぁ、渚?」
「そうですね」
 目茶苦茶無愛想だった。
 この手のは水割りよりストレートかオンザロックが美味いと俺が言ってしまったため、渚のコップには氷と焼酎のみが入っている。
 まぁ、一度日本酒で絡まれているから、今回もそれを覚悟していたのだが……今のところ、何も起きていない。
 そう、日本酒の時と違い簡単な返事以外は黙りこくっているのだ。
 その表情は、前髪に隠れていて見えない。
「でもこんな一升瓶、重くなかったか?」
「そうですね」
「……昔な、春原とこれくらい強い酒飲んだことあるんだ。そしたらあいつ、酔っ払って裸で踊りだしてさ。おまけに美佐枝さんに見つかってドロップキックくらってたんだぜ」
「そうですね」
 だめだこりゃ。と、声に出して言いたかった。
 やはり出来るだけ水で割った方が良かったか。そう思った時……。
「朋也くん」
 渚が、声を上げた。
「あ、ああ。どうした?」
 ようやく開いた突破口に縋る俺。けれど、渚の声は何時になく低くて――迫力があった。
「朋也くん、わたしの名前を言ってみてください」
「渚」
「フルネームでっ」
「ふ、フルネーム?」
 急に声のトーンが上がり、俺を見据える渚。やっと見せてくれたその目は――完全に座っている。
「お――岡崎、渚」
「そうです!」
 ちゃぶ台を足蹴にせん勢いで、渚。
「朋也くんはわたしの夫ですっ」
 力説する。
「渚、お前酔ってないか?」
「それはそれーっ!」
「な、何がだーっ!」
 秋の夜長に絶叫し合うアホ夫婦。はい、俺達のことです。
「つまらないことで茶々を入れないでくださいっ」
「ご、ごめんなさい」
 思わず謝ってしまう、俺。
「話を戻しますっ。朋也くんは確かにわたしの夫です。なのに最近、遠慮してませんかっ!」
「な、何に?」
 聞き返すと、渚は再び俯き――前髪で顔が隠れた。そしてちゃぶ台から焼酎の入ったコップをひとあおりすると、再び低い声で、
「――夜とかです」
「よよよ夜!?」
 言葉に詰まった。そう、指摘通り俺は渚の体調を考慮して無茶しないよう、無茶させないようにして来たのだ。でも、真逆ばれてるとは……。
「繰り返しますけど、朋也くんはわたしの夫です」
 座った目付きのまま、コップを傾けて渚。あぁぁ、そんなにごくごく飲む物じゃないぞ……。
「だから、何をしたって良いんです」
「マジか」
「マジですっ」
「――やっぱ酔ってないか? お前」
「それはそれーっ!」
「だから何なんだそれはっ」
 新手の芸人ネタかっ。
「ほ、本当に何をしても良いんだな」
 確認をとる為に、俺。
「もちろんです」
 勢いよくコップを置いて、握り拳を胸の前にもっていきながら、渚が答える。
「んじゃ、……を直接履いてその上に――を着けて、とどめに……を装着。それでもアリか?」
 途端、渚の貌がいつも以上に真っ赤になった。言うまでもなく、酒のブーストが効いているのだろう。
「そ、そそそ、そんな組み合わせが良いんですかっ?」
「ああ、俺は好きだ」
「あ――アリですっ」
 ……うわぁ。我ながら無茶な話が通ってしまったことに思わず嘆息する。しかし、通ったのなら、やらなければならないことがある。
「んじゃ早速試してみるか」
「試すんですかっ」
 両手で顔を隠しながら、渚が訊いた。
「ああ、多しか箪笥の奥にあったろ。それで十分に――」
「それはそれーっ」
「三度目だからなそれ――っておいっ!?」
 渚が抱き着いて来た。俺はそれを受け止め損ね、後ろに引っ繰り返る。自然、渚が俺の上に乗っかっている形になった。
「えへへ、初勝利です」
「何の勝利だよ……」
 しかしまさか、渚にマウントを取られるとは思ってもいなかった。これでも学生時代より鍛えているつもりなのだが――。
「朋也くん」
 上から顔を近付けてくる渚の頬に、髪がさらりとかかる。
「朋也くん、わたしは朋也くんのお嫁さんですよね?」
「お、おう」
「……わたし、自信を持って良いですか?」
「あ、当たり前だろ」
「じゃあ、わたしの自信を証明して良いですか?」
「それも当たり前――なに?」
 証明?
「しょ、証明って……何だ?」
 渚はそれには答えなかった。代わりに俺にぐっと顔を近づけてくる。今度は渚の髪が俺の頬にかかる、そんな距離まで。
「朋也くん、わたし朋也くんより年上です」
「ああ、知ってる……」
「だから、たまにはわたしに任せてください」
「ななな、なぬ!?」
 ま、まさかここに来てお姉さんぶられるとはっ!
「あー、渚。そういうのは非常に嬉しいが、俺にも心の準備というものがあってな……っておい?」
 俺の返事など全く聞かず、渚は俺の上に乗っかったまま、上半身を密着させて来た。胸に渚の顔がうずまり、腹に柔らかい感触がふたつほど伝わってくる。
 ……これは、やばい。
 嗚呼、抱き締めたい。けれど俺と渚は――夫婦なんだから別に良いか。でも、その先はやっぱり同意を取りたいっ!
「な、渚――」
 返事は無かった。
「……渚?」
 それもそのはずで、俺の胸の中で渚は眠っていた。
 全身の力が、どっと抜ける。
 このままだと、状況的に宜しくないので、俺は渚をそっと抱きながら起き上がり、布団に寝かせてやった。
 その時、ちゃぶ台の上にある瓶が目に留まった。
「恨むぞ、麦焼酎」
 美味かったけど。
 無論、そんなことで麦焼酎が反省とかする訳もなく、ただ中身を半分以上残して鎮座ましましている。
 俺は、ため息を吐いて渚に掛け布団をかけてやった。
 完全に寝入ってしまっているのだろう。渚は特に寝返りを打つことも寝言を言うこともなく、安らかな寝息を立てている。
 ……何をしても、いいんだっけか。
「さっきの言葉、信じるからな」
 俺はそう口の中で呟き――渚におやすみのキスをした。



Fin.




あとがきはこちら













































「これがわたしの製造秘話?」
「なんでやねん」




































あとがき



 久しぶりに同棲編でした。
 焼酎は癖があるものはとことんまでありますが、逆にないものは全くと言っていいほど無いため、水割りやお湯割りで口当たり良く何杯でも行けたりします。
 おまけに色々な料理にも合うのでまぁ常備して置いても良いお酒と言って良いんですが、ビールとか酎ハイ(これも焼酎なんですがね)みたいにアルコール度数が低い訳ではないので、お酒に弱い人はとことん大変な目になります。
 まぁよほど変な飲み方をしない限り、伝聞通り後に残らないのですが――ってなんで焼酎談義になっているだかw。(ちなみ私はオンザロックかストレートが好みです。デフォで40度とか75度とかのお酒飲んでるってのもありますがw)
 ところで、劇中で渚が発していた謎の台詞のヒントは劇場版にあります。
 興味を抱いた方は、是非w(さらにヒント:限定版パンフ)
 
 さて次回は……未定で〜。

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