『里村茜の探索』(2009.08.01) 

「里村さんっ」
 その、ほとほと困りきった友人の声で里村茜は振り返った。
 教室、その放課後。クラスメイト達はあちらこちらで部活動の用意、あるいは帰り支度を済ませようとしている。
 かく言う茜も、帰宅組のひとりであった。
「どうしました? 長森さん」
 呼びかけて来た声の主――長森瑞佳に応え、片付けの手を止めて茜。
「えっと、浩平見なかった?」 続きを読む →

『里村茜の計略』(2007.07.17)

「なぁ、茜」
 憂鬱な一学期の期末試験が明けた七月の放課後、里村茜が帰り支度をしていたところに折原浩平はそう声をかけていた。梅雨が明けて、蒼天が飽きもせずに直射日光を浴びせ続けているため、昼が過ぎてもその蒸し暑さは衰退する気配を見せていない、そんな午後のことである。
「どうしました? 浩平」
 支度の手を休めて茜が訊く。すると浩平は咳払いをひとつして、
「今年の夏休み、海かプールに行く予定はあるか?」
「無いです」 続きを読む →

『Farewell Night』(2001.12.23)

「あ、里村さんだ」
「本当だ。里村さん!こっちこっち」
 クリスマス、商店街を歩いていた瑞佳と留美は見慣れた傘と、大きなお下げを見つけいた。
「長森さん、七瀬さん」
「これからでしょ? 浩平の家に行くの」
「はい……」
 留美が息を弾ませながら、先に駆け寄る。後から瑞佳も追い付いた。
 つい昨日のことである。 続きを読む →