『霊霊刀、妖魔刀 ~続・春霞の人形』(2006.12.05)

「こんにちは」
 ある晴れた日の午後、マーガトロイド邸に響く魂魄妖夢の声に、家の主であるアリス・マーガトロイドは軽く首を傾げた。
 妖夢のほかに、微弱ながらもうひとつの気配があったためである。
「開いてるわよ。今キッチンに居るわ」
 正体不明の気配とは言え、妖夢と一緒に居るのだ。害を与える者ではないと判断し、アリスは少し大きめの声でそう返答した。丁度焼き菓子の仕上げに入っていたので、火元から離れたくなかったというのもある。
「わかりました。そっちに行きます」
 案の定、足音はふたつであった。但し、ただの足音ではなく片方が随分と体重が軽い。しかも、この軽さには……覚えがある。
 と、足音は戸口まで近づいて、
「お邪魔します」
 妖夢が顔を出した。続いて――、
「……あら」 続きを読む →

『ディアフレンド』(2005.10.05)

 冥界たる白玉楼にも、日は上り、月も上る。
「ふぁぁ……」
 生憎冥界生まれの冥界育ちたる魂魄妖夢にとって、それは疑問にも何にもならなかったのだが、毎度毎度狂いもなく上ってくる天文二象にはつくづく感心していた。
 私だって、時折寝坊したりするのにな。
 そんなこと考えながら、その日の早朝、彼女が着替えようと箪笥の引き出しを開けると、
 引き出しの底に、妖夢を見つめる形で八雲紫が頭がはまっていた。そして、そのままずるりと上半身を引きずり出すと、
「やっほー、お邪魔するわよ」
 白玉楼の庭二百由旬いっぱいに、妖夢の悲鳴が木霊する。 続きを読む →