『いまさらながらの、岡崎家』(2018.02.17)

「なぁ岡崎、僕らって友達だよね」
「えっ」
「『えっ』ってなんですかねぇ!?」
「えっ」
「汐ちゃんまでその反応なの!? 地味に刺さるんだけどそれっ!」
「いやだってお前、渚よりつきあい長いのに……なぁ、汐?」
「うん。ずっと、ともだちだとおもってた……」
「あれ? これ僕がダメな質問しちゃったやつ? 嬉しいけどなんだか複雑!」
「なんだか、かわいい……」
「——汐、あした藤林のところにいくぞ。春原が可愛く見えているんならちゃんと診てもらわないと」
「あんたなにひどいこといってるんですかねぇ!?」
「えっ、お前自分がかわいいと思っているのか?」
「思っているわけないじゃん!?」
「かわいいのに……」
「褒めてくれるのは嬉しいけどね、汐ちゃん。でも僕に惚れちゃダメだぜ?」
「うん。それはない」
「だよな。汐」
「うん」
「あんたら本当に父娘ですねぇ!?」
#key版深夜のお絵描き60分一本勝負

『学年末の、馬鹿騒ぎ』(2005.05.23)

『エントリーの締め切りまで、後五分を切りました! 参加希望者は昇降口横のエントリー受付までお急ぎください! 繰り返しまーす! エントリーの――』
 校内放送を外にまで回して、放送部の声が響く。30分前から五分置きに流れるその放送を脳裏に流して、わたし、岡崎汐は最終チェックを済ませていた。電源、表示、激鉄、引金すべて良し。
「なんというか、俺達が現役のころはただの進学校だったのになぁ」
 傍らで、感慨深気におとーさんがそう言う。
 そして、そのまま何も言わなくなってしまったので、わたしはわざと声に出してみた。
「『渚は生まれてくるのが早すぎたのかもしれない』?」 続きを読む →

『師走の白い坂』(2004.12.26)

 大晦日が迫ったある日のこと、わが家である岡崎家にて大掃除が敢行された。
 今年は、普段掃除をする部分(居間、台所、風呂場etc.)に加え、最深部はどうなっているかわからない押し入れを整理してみようというおとーさんの提案により、わたし、岡崎汐は覚悟を決めて探索に乗り出していた。 続きを読む →

『海へ。』(2004.09.12)

 列車の中には、わたし達しかいなかった。
 わたし、岡崎汐はそれをいいことに、あっきー、早苗さん、そしてふぅさんと一緒に座っていたボックス席を立って、別の席に移り、車窓から外を眺めていた。……ふぅさん――幼馴染で美術講師の伊吹風子先生――が、窓にベッタリ張り付いてしまったため、座るスペースが狭くなってしまったためである。
 列車のリズムに揺られながら、目を閉じてみる。
 こうやって、鈍行の列車に乗るのが、わたしは好きだ。理由はおそらく、おとーさんとの最初の旅行が、こんな感じだったからだろう。
 リニアやらなにやらで特急料金が安くなって、利用人数がめっきり減ってしまったけれど、それでもわたしは好きだった。 続きを読む →

『おじさまとわたし』(2004.06.13)

学校から帰ってくると、部屋に見知らぬ人がいた。年の頃は、おとーさんと同じか。童顔で、あまり似合わない顎髭を生やしている。
「お帰り、汐ちゃん」
「……家を間違えました。ごめんなさい」
そう謝って、わたしは外に出た。
「いや、間違ってないから、間違ってないからねぇ!」
慌てたかのように、中から声が響く。 続きを読む →