『七色の人形遣いの失敗』(2006.12.17)

 大晦日も迫ったある日の夕方、魔法の森のマーガトロイド邸に、炬燵を囲む三人の少女の姿があった。ひとりは博麗神社の巫女、博麗霊夢。もうひとりは魔法の森の魔法使い、霧雨魔理沙。そして最後はこの家の主、アリス・マーガトロイドである。
 所謂ひとつの、お茶会であった。
「それにしても……」
 と、リビングに無理やり設えた――魔理沙が持ち込んだとも言う――炬燵の天板を撫でながら、アリス。
「炬燵って、佳いものねぇ……」
 その独特の魅力に呑まれたのか、目が何処かとろんとしている。
「だろう。幻想郷が生み出した、文化の極みだぜ」 続きを読む →

『博麗神社で昼食を』(2006.08.20)

 その日は、記録的な猛暑であった。
「あぢい……」
 後に『文々。新聞の主筆、暑さにやられ湖に墜落』という見出しの新聞がばら蒔かれる程の直射日光を博麗神社の庇で避けて、心底参ったといった風体の霧雨魔理沙がそう呟いた。
「だらしがないわね、これくらいの暑さで」
 と、魔理沙と同行していたアリス・マーガトロイドがそう窘める。
「というかね、服を着なさいよ、服」 続きを読む →

『伊吹萃香の暇つぶし』(2005.06.26)

 夏がだいぶ近づいて来たある日、伊吹萃香が博麗神社に遊びに来たところ、遊び相手となる当の巫女、博麗霊夢が押し入れに上半身を突っ込んでいた。
「何やってるの、霊夢」
 縁側から靴を縫いで居間に上がりながらそう訊く萃香に、
「いやその……洗濯物の捜索よ」
 と、答える霊夢。身体を動かしながら話しているので、萃香からはお尻が喋っているように見えなくもない。
「……捜索? 洗濯物の!?」 続きを読む →

『博麗霊夢の事始め』(2005.06.12)

 博麗神社の朝は、おおむね早い。

 その日、雨戸と雨戸の隙間から伸びてきた光を顔に受けて、神社の巫女、博麗霊夢は目を覚ました。そのまま布団の中で大きくのびをして、しばらく布団の上で大の字のまま目を瞬かせた後、のそのそと起き出す。彼女はどちらかというと低血圧である。
 欠伸をしながら雨戸を開け、眠い目をこすりつつ風呂場に向かう。もちろん、着替えを抱えることは忘れない。
 脱衣場に着くと、霊夢は籠に着替えを放り込み、無造作に風呂場の扉を開けた。 続きを読む →