『霊霊刀、妖魔刀 ~続・春霞の人形』(2006.12.05)

「こんにちは」
 ある晴れた日の午後、マーガトロイド邸に響く魂魄妖夢の声に、家の主であるアリス・マーガトロイドは軽く首を傾げた。
 妖夢のほかに、微弱ながらもうひとつの気配があったためである。
「開いてるわよ。今キッチンに居るわ」
 正体不明の気配とは言え、妖夢と一緒に居るのだ。害を与える者ではないと判断し、アリスは少し大きめの声でそう返答した。丁度焼き菓子の仕上げに入っていたので、火元から離れたくなかったというのもある。
「わかりました。そっちに行きます」
 案の定、足音はふたつであった。但し、ただの足音ではなく片方が随分と体重が軽い。しかも、この軽さには……覚えがある。
 と、足音は戸口まで近づいて、
「お邪魔します」
 妖夢が顔を出した。続いて――、
「……あら」 続きを読む →

『魂魄妖夢の困惑と決断』(2006.05.09)

 冷たい刃が自らの喉に潜り込む瞬間、これで全てから解放されると思ったのに。

□ □ □

 バネ仕掛けのように跳ね起きる。
 反射的に辺りを見回し――彼女は、自分が何者であるかを思い出した。

□ □ □

『魂魄妖夢の困惑と決断』

「ねぇ、妖夢」
「なんでしょう、紫様」 続きを読む →

『ディアフレンド』(2005.10.05)

 冥界たる白玉楼にも、日は上り、月も上る。
「ふぁぁ……」
 生憎冥界生まれの冥界育ちたる魂魄妖夢にとって、それは疑問にも何にもならなかったのだが、毎度毎度狂いもなく上ってくる天文二象にはつくづく感心していた。
 私だって、時折寝坊したりするのにな。
 そんなこと考えながら、その日の早朝、彼女が着替えようと箪笥の引き出しを開けると、
 引き出しの底に、妖夢を見つめる形で八雲紫が頭がはまっていた。そして、そのままずるりと上半身を引きずり出すと、
「やっほー、お邪魔するわよ」
 白玉楼の庭二百由旬いっぱいに、妖夢の悲鳴が木霊する。 続きを読む →

『西行寺幽々子の挑戦』(2005.07.05)

 最近、白玉楼の庭師、魂魄妖夢は微妙に疲れていた。
 理由は、よくわからない。だが数日ほど前の朝から、台所に立つと決まって首筋に冷たいものが這って行くような感覚をおぼえるのである。
 殺気のような刺々しい感覚でもないし、後ろを見ても誰もいない。
 故に、妖夢は錯覚としてやり過ごしていた。
 それが、亡霊特有の視線によるものだと気付かずに。 続きを読む →