『学年末の、馬鹿騒ぎ』(2005.05.23)

『エントリーの締め切りまで、後五分を切りました! 参加希望者は昇降口横のエントリー受付までお急ぎください! 繰り返しまーす! エントリーの――』
 校内放送を外にまで回して、放送部の声が響く。30分前から五分置きに流れるその放送を脳裏に流して、わたし、岡崎汐は最終チェックを済ませていた。電源、表示、激鉄、引金すべて良し。
「なんというか、俺達が現役のころはただの進学校だったのになぁ」
 傍らで、感慨深気におとーさんがそう言う。
 そして、そのまま何も言わなくなってしまったので、わたしはわざと声に出してみた。
「『渚は生まれてくるのが早すぎたのかもしれない』?」 続きを読む →

『岡崎家のバレンタイン』(2005.02.16)

「中に軽くローストしたコーヒー豆が入っているんです」
 綺麗に広げられたラッピングの中身に対し、カフェ「ゆきね」の店長、宮沢有紀寧がそう説明する。
 大豆を一回り大きくしたようなそれは、チョコレートの粒だ。中にはきっと、いま宮沢が説明した通りコーヒー豆が入っているのだろう。
「なるほど……」 続きを読む →

『秘密の花園と少女』(2004.10.03)

「こんにちはー」
 ようやく残暑が抜けて、ほっとしたところに中間試験。そしてそれを乗り越えた試験休みの日、わたしはわたしが通っていた幼稚園に顔を出していた。
「はーい」
 応対に出てくれたのは、わたしの恩師、藤林杏先生。
「あら、汐ちゃんじゃない。どうしたのよ?」
 答えの代わりに、わたしは持っていたタッパーを差し出した。中身は、クッキングペーパーで包んであるシナモンクッキーである。 続きを読む →