『サンタコス、上から見るか下から見るか』(2017.12.23)

「ちわーす! 岡崎、汐ちゃん、メリークリスマ——」
「だーかーらー、こういうときはズボンいらないのよ! そのために裾長くしたんだから!」
「だめだ! 汐のサンタ服には色気とかアピールポイントとかそういうのは要らん! 絶対にズボンをはかせるぞ!」
「おふたりともわかっていません。サンタさんの衣裳には黒タイツです」 続きを読む →

『学年末の、馬鹿騒ぎ』(2005.05.23)

『エントリーの締め切りまで、後五分を切りました! 参加希望者は昇降口横のエントリー受付までお急ぎください! 繰り返しまーす! エントリーの――』
 校内放送を外にまで回して、放送部の声が響く。30分前から五分置きに流れるその放送を脳裏に流して、わたし、岡崎汐は最終チェックを済ませていた。電源、表示、激鉄、引金すべて良し。
「なんというか、俺達が現役のころはただの進学校だったのになぁ」
 傍らで、感慨深気におとーさんがそう言う。
 そして、そのまま何も言わなくなってしまったので、わたしはわざと声に出してみた。
「『渚は生まれてくるのが早すぎたのかもしれない』?」 続きを読む →

『ライク・ア・ファミリー』(2004.11.20)

 前に研修で家を一週間空けたおとーさんが、再び研修のため出掛けることとなった。
「というわけでしばらく家を空けるが――」
 急な話だったらしい。大きなカバンに荷物を詰めつつ、おとーさんは言う。
「……古河家?」
 と、わたし。
 前のときは、一週間も一人で暮らすには……ということで(そしておとーさん曰く、変な虫がつかないように)古河家に御厄介になっていた。まあ、あの時はお母さんの部屋で寝たり、あっきーから話を聞いたりと、いろいろあったが……。
「いや、今度は三日だからな」 続きを読む →

『海へ。』(2004.09.12)

 列車の中には、わたし達しかいなかった。
 わたし、岡崎汐はそれをいいことに、あっきー、早苗さん、そしてふぅさんと一緒に座っていたボックス席を立って、別の席に移り、車窓から外を眺めていた。……ふぅさん――幼馴染で美術講師の伊吹風子先生――が、窓にベッタリ張り付いてしまったため、座るスペースが狭くなってしまったためである。
 列車のリズムに揺られながら、目を閉じてみる。
 こうやって、鈍行の列車に乗るのが、わたしは好きだ。理由はおそらく、おとーさんとの最初の旅行が、こんな感じだったからだろう。
 リニアやらなにやらで特急料金が安くなって、利用人数がめっきり減ってしまったけれど、それでもわたしは好きだった。 続きを読む →

『ふぅさん』(2004.06.06)

夕方、学校から家に帰ってそのまま飛び出たわたし、岡崎汐は、夕飯の買い出しのため商店街を歩いていた。
夕飯の買い出しは当番制で、一日毎にわたし、おとーさんと順繰りになっているのが岡崎家のルールで、今日はわたしの番だった。
この当番制、短所と長所が両方あって、どんなに忙しい時でも(病気とかはともかく)買い出しを実施しなくてはならない代わりに、予算以内であれば当番が好きなように献立を決めることができる。
というわけで、本日の献立はオムライス。
これを普通の楕円形ではなく、円――というか丸に近づけて、ケチャップで顔を書くだんご大家族型オムライスが、おとーさん直伝のチャーハンに並んでわたしの得意料理なのである。
さて、オムライスの中身はいつも通りのチキンライスか、それとも他のものにしようかと思案していると、
「目標を補足しましたっ」
聞き慣れた声が後ろの方から聞こえた。わたしはゆっくり振り返――、 続きを読む →