ドラテクその9


<リカバリー>

今回はいわゆるライテクではありません。しかし、レースにおいてはとても重要なことです。即実践可能ですから、思い当たる方は実行しましょう。


転倒。これは誰もが避けて通れないものです。レースにおける転倒は、多くの場合、予選落ちあるいはノーポイントを意味します。が、他人のレースを見ていると、「なぜ?」と思わずにはいられない行動に出くわすことが多々あります。


あなたは今、やや登りぎみのコーナーを攻め過ぎて転倒しました。すぐさまバイクを起こしましたが、バイクは横を向き、エンジンは止まっています。しかし、幸い体もマシンも全く大丈夫。直ちにレースに復帰できそうです。さあ、あなたはまず何をしますか。

ここでいきなりバイクに跨がり、エンジンをかけているようでは、自ら予選落ちあるいはポイント圏外へ行っているようなものです。こういう行動をすると多くの場合、バイクの向きを直すのに手間取り、もう一度転倒したり、あるいはエンストしたり、坂道発進で再び横を向いてしまったりと、どつぼにハマります。復帰したころにはラップされてしまったりする訳です。

では、どうすればよいのか。

答えは簡単。バイクをかかえるようにしてバイクの向きを直し、それからバイクに跨がりエンジンをかけます。坂道発進がすんなりできそうか考え、苦しそうなら、迷わずバイクから降り、バイクはエンジンの力で、人間は自分の力で坂を登り、楽に発進できるポイントまで持って行きます(エンジンをかけてトランポに積む要領)。
場合によっては、助走を取れるところまで一旦バックし、それからバイクに跨がって復帰することも必要かもしれません。

いずれにしても、重要なのは、どつぼにハマることだけは避け、タイムロスと体力の消耗を最小限に抑えることです。

プロのレースを見ていると、「そんなことしている人、いないじゃないか!」と思われるかもしれません。しかし、彼等はアクセルターンでバイクを手足のように操ることができ、坂道発進もホイホイこなすテクニックを持っているから、いきなり跨がっているのです。

しかし、普通のライダーにそのような技術はないはずです。

急がば回れ。

自分のテクニックを正確に把握し、自分にとっての最短時間でリカバリーしましょう。


付記:転倒後、エンジンがなかなか始動できないことがあります。これはかぶっているのではなく、ガソリンのオーバーフローにより、シリンダー内の混合気が濃くなっているだけです。
普通通り(アクセル全閉またはちょい開け)の操作で始動できない場合は、アクセルを全開にしてキックしましょう。一発で始動します。これは、エンジンがかかっていない状態での全開操作では、負圧不足でガソリンがキャブから吸い出されず、空気だけがシリンダーに送り込まれ、結果的に調度よい混合気ができあがるためです。
これをしないで、いつまでも普通の操作でキックを続けていると、ホントにかぶってしまい、リタイヤとなります。