ドラテクその7


<スマイルライディング>

 初めて大きなダブルジャンプを飛ぶ時。これほど勇気のいる瞬間はないでしょう。みなさんは、既にそういう経験をお持ちでしょうか? 私の記憶の中でそれに当たるジャンプは、生駒の旧4連の最初の2連でした。

 当時、生駒の主のごとく通いまくっていた私は、他のダブルを中途半端に飛びながら、「いつかこのジャンプを飛んでやる」と思っていたのですが、いつも飛べるようになる前にジャンプは消滅していました。そして、この問題のダブルに関しても、そろそろ飛ばなければと思い続けていました。他人の走りを見ていると、私より下手そうな人でも、このジャンプを飛んでいるではありませんか。そこで私は一念発起。「このジャンプも早く飛ばないとなくなってしまう。いつまでもこんなジャンプを飛べないくらいなら死んだ方がましだ!」という気合いでチャレンジしたのを覚えています。

 結果としてはセーフでしたが、新しいダブルを飛ぶ度に死ぬ気になれるものではないし、そんなことみなさんにも勧められません。が、勇気がいるのはどうしようもない事実です。
 で私の場合、ある解決策を見い出しました。

 それがスマイルライディングです。

 ダブルにチャレンジしようと助走を開始する時、ヘルメットの中で笑顔を作るのです。といっても本気で笑えるはずもありません。しかし、無理矢理でよいのでとにかく笑顔を作るのです。するとほんの少し気持ちに余裕ができます。この余裕が、ダブルにチャレンジする勇気を後押ししてくれます。
 どのみち踏切り斜面に入るころにはいつものようにガチガチに緊張してると思いますが、それでよいです。事前練習で「絶対に飛べる」という自信さえついていれば、後は勇気だけの問題だからです。

 このスマイルライディングは、ダブルにだけ有効なのではありません。苦手セクションはもちろんのこと、それ以外でも、緊張しやすいセクションへの進入時や、レース中後ろにマークされた時等に笑顔を作れば、肩の力が抜け楽に速く安定して走れます。
 これはもう、モトクロス(いやきっと世の中全てのことに言えるのではないでしょうか)の奥義と呼ぶに相応しいと思っています。

 十分な基礎練習を積み、さらにこのテクニックを身に付けたあなたには、必ずや飛躍の時が訪れるでしょう。

 調子が悪くなったら、笑ってみましょう。

 健闘を祈ります。