ドラテクその12


<コーナーリング(ステップ2):パワースライド>

コーナーをパワースライドさせながら立ち上がるのはかっこよいですね。

でも、後輪をスライドさせるのはパワーをロスするだけで前に進まない、なんてことをよく見聞きしますね。
ホントにそうなんでしょうか? パワースライドはダメな走り方なんでしょうか?

私も真実は知りません。

以前の私はグリップ走法、あるいはブレーキターンを利用した走りのみを追求し、パワースライドは全くといっていいほどできませんでした。その当時、世界チャンピオン エバーツはリアタイヤを全くスライドさせないがごとき走りをしているというような話を見聞きしました。私は疑問を解決するため、エバーツの走りをビデオで見たかったのですが、見る機会になかなか恵まれませんでした。
が、ある時念願のエバーツのビデオを見ることができました。そこには明らかにスライドさせて走っている姿が写っていました。そしてまた、オンロードの世界GPチャンピオン ケニー ロバーツの著書にも「ラインだけをなぞろうとしてもこのラインは走れない。必ずリアタイヤをスライドさせなければならないのだ。」と書かれていました。
そしてまたこの頃、okamoto師匠に、「森永君、進入は速いんやけど、立ち上がってみたら結局いっしょなんよなあ。」というような指摘を受けました。

ジャンプやウオッシュボードなど、ある意味特殊なテクニックを要するセクションは別として、それ以外のセクションでは、いったいこれ以上どうやってスピードを上げたらいいのか分らず正直行き詰まっていました。既にスムーズなコーナーリングにはかなり自信があり、コーナーを速く走るには、早くからアクセルを開けるしか道はないと思うのですが、どうにもアクセルを開けられそうにないのです。無理に開けようとすると転倒しそうになるばかり。

なぜ開けられないのか? 悩みました。

そしてまた、バイクに乗り始めて以来長年疑問に思っていた「立ち上がりで、どうやってマシンを起こすのか?」という素朴な疑問についてもまた考えるようになりました。
オンロードバイクに乗っていた時代からライディングテクニック本は読みあさっていましたが、そこには「アクセルを開けていけば自然にバイクは起きてくる」といった内容しか書かれていませんでした。しかし、オフロードでこれをやってみても、リアタイヤのスライドがバンク角をさらに深くするばかりで、起き上がるようには思えませんでした。

が、なにかのきっかけ(それが何だったのかは忘れてしまった)で、私の持っていたコーナーリングイメージ、特にパワースライドのイメージが根本的に間違っていることに気付きました。
以前の私は、パワースライドというものは基本的に一定のバンク角をキープした状態の中で、パワーのかけ具合でスライドコントロールするものだと思っていました。
そしてまた、バンク角のコントロールは、進入時こそイン側への体重移動でバンクのきっかけを作るものだと思っていましたが、所望のバンク角に落ち着いた後はそのままのバンク角でコーナーを回り、立ち上がりではパワーをかけていくことのみによりマシンを起こしていくのだと思っていました。

だが、違ったのです。

パワースライドはパワーコントロールももちろん重要ですが、それと同じかそれ以上にマシンのバンク角でコントロールするものだったのです。

つまり、アクセルを開けていくのと同時に体重移動によりマシンを起こすきっかけを作り、パワーの増大に合わせながらマシンを起こしていくのです。これならば、起き上がっていくマシンは横方向のグリップ力にだんだんと余裕ができていくわけですから、少しくらいパワーをかけていっても、スライドは収束していくので転倒しません。むしろ、スライドがすぐに収束してしまわないようにパワーを強めていく操作に注力する必要があります。

さらに進んで考えると、曲がり込みの浅いコーナー(メリハリをつけて曲がるべきコーナー)では、ある一定のバンク角で曲がる時間などなく、寝かし込みが完了すると同時にマシンを起こしていかなければならない(少なくとも気持ちの上ではそう)ことに気付きました。
2輪車は基本的にライダーの動きに追従する(ちょっとだけ遅れるけど)ようにできています。当然、進入ではライダーの重心はイン側に移動してマシンをイン側に引き込むべきであり、立ち上がりではライダーは外側に移動する(バンクしている状態を基準にして考えると、マシンを起こすことは反対側にバンクさせていくのと等価)ことによりマシンを起こすべきです。
メリハリをつけるコーナーに至っては、イン側に移動して寝かすきっかけをつくって寝かしつつ、実際に寝はじめたらもう体を外側に移動して起こすきっかけをつくらなけらばならないのです。
メリハリをつけるコーナーリングにおいては、座った瞬間がアクセルを開け始めるポイント(正確に言うとパワーをかけるポイントなので、アクセルは寝かしていく段階で開け始めていなければならない)なので、座った時の姿勢はいわゆるリーンアウトの姿勢になっている必要があるのです。

これはメリハリをつけるコーナーだけの動きではなく、180度曲がり込むようなコーナーでも同様です。このようなコーナーでのマシンを起こし始めるポイントは、座った瞬間ではなく、減速から加速に移る瞬間です。この際には、やはりリーンアウトになる動きが必要なはずです。

このようなことを書くと、ドラの穴3「コーナーリング練習方法」と矛盾してるように感じ、最初からこういう練習をすればいいじゃないかと思われるかもしれません。

しかし、ドラの穴3はやはりコーナーリングの基本です。

パワースライドをする走りは、自分にとって最高のスピードで進入したのでは実行できません。それよりも少しスピードを落とし、開けるべきポイントで確実に開けられる余裕を持たなければなりません。いわば、次の瞬間をより速く走るために、あえて手前を攻め過ぎないようにするのです。そしてこのことから分るように、計画的に完璧なコーナーリングをしなければパワースライドはできないのです。
しかし、レースにおいて全てのコーナーを毎回完璧に走れるかというと、それは無理です。そんなにスピードを落としていたのではかえって遅くなります。しかし、ドラの穴3の走りを身につけていれば、速い進入スピードに耐えられるので、オーバースピードになってしまっても転倒しないような処理をすることが可能なので、最悪の事態は免れられます。
コーナーの手前にダブルジャンプがある場合なども、コーナーで無理がきくのでジャンプを飛ぶことが可能になります。もちろんパッシングにも有効なわけです。

あくまでも基本をマスターした上で実行しましょう。



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